一顆明珠~住職の記録~

尽十方世界一顆明珠。日々これ修行です。いち住職の気ままなブログ。ときどき真面目です。

良寛さまの詩歌 2

2006年12月11日 | 禅・仏教
老病覚来不能寝   老病覚め来たって寝る能わず
           (ろうびょうさめきたってねるあたわず)
四壁沈々夜正深   四壁沈々として夜正に深し。
           (しへきちんちんとしてよるまさにふかし)
燈無焔爐無炭     燈に焔無く爐に炭無し
           (ともしびにほのおなくろにすみなし) 
只有凄凉枕積衾   只凄凉枕衾に積る有り。
           (ただせいりょうちんきんにあつまるあり)
不知何以慰我心   知らず何を以て我が心を慰めん
           (しらずなにをもってかわがこころをなぐさめん) 
暗曳烏藤歩庭陰   暗に烏藤を曳いて庭陰を歩す。
           (あんにうとうをひいてていいんをほす) 
衆星羅列禿樹花   衆星羅列す禿樹の花
           (しゅせいられつすとくじゅのはな) 
遠渓流落無弦琴   遠渓流れ落つ無弦の琴。
           (えんけいながれおつむげんのこと) 
此夜此情聊自得   此の夜此の情 聊か自ら得たり
           (このよこのじょういささかみずからえたり) 
他時異日向誰吟   他時異日誰れに向かつて吟ぜん。
           (たじいじつだれにむかってぎんぜん)


<物語風私訳>

老いが進んだせいか、目が冴えてなかなか眠れぬ良寛さまが、独り。

庵を囲む四方の壁は、静まり返って物音一つしない、夜の深まり。

ともしびの焔は消えて、爐にも炭が無い。

ただぞっとするほどの寂しさが枕元に降り積もるばかり。

心につぶやく・・・どうしたら、この寂しさ侘しさを慰めることができるだろうかと。

そこで良寛さま、暗闇の中、杖を突きつき庭に出る。

あっ!なんという・・・

溢れんばかりの星星が、きらめき並び、冬枯れの木に花が咲く。

遠くの谷川の雪混じりの流れは、冴え渡る琴の音を響かせる。

この夜の、この思いを私は確かに捉えている。

いったい、いつ、誰に、この情景、この心境をうたい伝えようか・・・


以上、勝手な解釈で物語風に訳してみました。



この詩からは、良寛さまを包み込む冴え冴えとした冬の孤独が透明感と寂寥感を伴って伝わってきます。

やはりこの詩の一番の佳境は「衆星羅列禿樹花」の句でしょう。
寒々とした暗闇から、無数の星が煌く世界へ一変する。
このコントラストの妙。
美しい・・・じつに見事です。
余談ですが、私はこの句を読んで、好きな絵本『もちもちの木(※クリック)』に出てくる情景を思い出しました。
冬枯れした「もちもちの木」に、枝から透けて見える無数の星が、あたかも満開の花のように咲く場面です。
見事な切り絵で表現されていて、幼心にとても鮮烈な印象を受けたものでした。

そして最後の「他時異日向誰吟」に、この情景、この思いを伝えてたくて溜まらないという良寛さまのはやる気持ちが現れていて微笑ましく思いました。

久しぶりの良寛さまの記事でした。

(参照:サングラハ心理学研究所ブックレット№4「良寛の四季」岡野守也著)


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