中国経済に力を与える「老板」意識、という記事を見ました。
・著者の友人の中国人が、石炭貿易の国有企業辞めて貿易会社を設立、日本との貿易で瞬く間に大金持ちになって豪邸とベンツを買った。
・彼の成功を間近で見て影響を受けた著者も独立して「駐在員事務所代行サービス」の会社を立ち上げた。しかし、起業当初は全く仕事が取れず、苦しい状況になり。毎月給料をもらえるサラリーマンを簡単に辞めてしまった自分の浅はかさを呪い、夜は眠れず、食事も喉を通らず、体重は開業3ヶ月で7kgも減り、うつ病寸前の状態まで追い込まれた。
・いくら中国の景気が良く、ビジネスチャンスがたくさんあっても、彼のように成功できる人はほんの一握りだというのはすぐにわかる。
・中国には「いつかはオレも起業して成功したい!」と思わせるような、独特の「空気」が流れている。上海社会科学院が、 1990年以降に生まれた「90后(じょうりんほう)」と呼ばれる19歳以下の子どもたちを対象に調査を行ったところ、将来の目標として、事業を起こして成功したい、と答えた子供が29%に上り、堂々の2位にランクされた。
・この意識は大人になっても変わらない。中国では多くの人にとって起業して老板(ラオバン、オーナー社長)になることは、キャリアパスの最終目標となっている。
・私が起業したときも、中国人の友人の多くが「恭喜!恭喜!(ごんし、ごんし、おめでとう、おめでとう)」と祝福してくれたのに対し、日本人の友人は「そのまま会社にいれば年間1000万円以上の給料をもらって、安定した暮らしを続けられたのに、何でまた・・・・・・」という反応を示す人が多かった。そう考えると、私は北京に駐在するチャンスを与えられず、ずっと日本で働き続けていたら、起業しようなどという考えには至らなかったかもしれない。
・サラリーマンをしている中国人の友人と話していても、彼らは「○○株式会社の社員」という意識よりも「自分株式会社の社長」という意識が強いように感じる。会社はあくまで、業界の知識や人脈を蓄積するステージに過ぎず、チャンスがあれば独立して本当の社長になってやろう、と虎視眈々(こしたんたん)と狙っている人も多い。彼らには愛社精神はないが、会社に頼る意識もない。彼らにとって頼れるのは自分だけなのだ。
・中国の人たちは元々独立心が強い、というよりは、国家も企業も頼れない存在なので、「自分株式会社の社長」という意識を持たざるを得なかった、というのが本当のところだと思う。しかし、起業率の高さは経済を活性化させる。今後、中国が経済発展をしていく中で、大量の「自分株式会社の社長」の存在は、民間経済の活性化に重要な役割を担っていくのではないかと思う。
http://netplus.nikkei.co.jp/forum/global/t_488/e_2308.php
記事をほぼそのまま掲載しています。
・独立起業をする事自体は、日本も中国も同じで容易ではない。個人的には、日本と異なりメジャーな分野でも行ける、運営費用が安く済む、という意味で日本よりは恵まれているかな。駐在意識さえ無くせば、家族4人で月15万円でまぁまともな生活はできます。駐在並みの生活を求めると家賃が跳ね上がりますし、風呂逃す供給が安定しないとか、住居そのものの質は落ちますし、日本の幼稚園だと月10万円近く費用がかかるとか、ふざけた状況なんで、月40万円近く必要になり東京よりコスト高くなると思いますけど。
・一方中国人は皆起業を目指す。これは、逆に言うと日系企業を問わず社員は会社にロイヤリティを持つ人は少なく、機会があれば自分で独立し酔うとする人が多い。この事で日本の書籍では、社員が営業機密を持って独立した、転職したと非難するが、ある意味文化だと理解する必要がある。ノウハウを全て社員には伝授できないんです、特に参入障壁の低い分野では。一方企業の拡大という意味で大きな制約条件があり、結局の所日本の大企業並みの中華系企業は、国営企業を除き中華圏(台湾、香港、シンガポール)にはないですよね。これが中国人の限界でしょう。
・一番最後の中国人の意識が、中国人が独立志向が高い原因でしょう。中国の民間企業は、香港企業もそうですがファミリー企業が多く、オーナー一族が利益を全部吸い上げる仕組みに近い。日本でもオーナー企業には同じような傾向がありますが、従業員に対する利益配分は決して高くない。そして、日本の場合は江戸時代以来の藩に帰属する文化が今でも続いているが、中国にはそんなものはない(これってアメリカもそうだと思いますが)。日本は世界でまれに見る社会主義国で、経営者の給与がこれだけ低い国は珍しいでしょう。
・中国人の独立志向の高さが経済を活性化するのは確かにそのとおりでしょうね。でも、成果報酬型の給与体系によって、大企業の幹部を目指すビジネスマン方も増えてきていると思います。国営企業の経営者は、固定給は月13万円ですが、成果によってボーナスが数千万円という事例は既にたくさんみられます。
・最悪なのが、日本型固定給与、年功序列型給与体系でしょう。でも日本本社や、駐在員がそういうシステムの中で生きていますので、大きな改革は困難なのが、現地法人の運営で難しい所でしょう。そして、一朝一夕に改革できないので、どんどん欧米系企業や中国企業に置いてけぼり食らうでしょう。
日本企業の中国での苦戦は、一つには企業のシステムが弱肉強食の世界に適応できなくなってしまっている事も大きな要因でしょう。そして、そういう企業は滅びるしかないんじゃないかな。それが経済の掟ですから。