5月10~11日の日程でスイスのジュネーブで開かれた米中初の高官レベルでの関税交渉は、週明けの本日早朝に双方手ごたえありというニュアンスで伝えられたことで、一定のリスクオン気運が広がっていた。
「大きな進展」があったとしたのはベッセント財務長官だった。このところ米国サイドからの情報はトランプ大統領は別格として、ベッセント財務長官ですら希望的観測的な発言が増えていたので、この発言は引き気味に受け取っていた。
ただし、同じ時間帯に中国側も「新たな経済対話の枠組みを設けることで合意した」(何副首相)と表明したことで、おや!?という感じだった。別に米国側の発言が信用できず、中国側の発言は信用できるという類の話でなく、中国はあくまで関税の納得いく引き下げがないと動かないと捉えていたので、これは!と思ったのだった。
さらにベッセント財務長官がスイス時間の12日に詳細を公表するとしたのに対し、中国国営新華社が、共同声明を発表する見通しを伝えたことで、おお、そうか・・・と。共同声明とはかなりのレベルまで詰めないと発表などしないだろうと。おそらく声明発表ギリギリまで双方は現場レベルでの話し合いを続けたのではと思われる。
この時点で日本時間の本日16時過ぎに伝えられた双方115%引き下げなど思いもよらず、当初思っていた“初会合ゆえに継続協議の道筋をつける内容”程度よりは具体的税率の発表など踏み込んだ内容になったのか・・ということだった。
このところ小売業界が大統領と面会していたし、自動車業界も面会、ボーイングなどもホワイトハウスにコンタクトし、かなり突き上げが目立っていたので、米国サイドの譲歩の可能性は感じていた。しかし、一定の成果と言えるものに達するには相応の時間を要すると思っていた。結果的に米中双方にその余裕がなかったということだろう。
以下、本日昼過ぎに書き上げた原稿の一部抜粋を掲載することに。ちなみにマネックス証券のサイトにて全文読むことは可能。
《報道を受け本日アジア時間のNY金は売りが先行し前週末比63.00ドル安の3281.00ドルで取引を開始し、日本時間12時時点までで一時3247.30ドルまで売られ、その後押し目買いに3295.50ドルまで見て3280ドル台となっている。予想外とも言える米中協議の進展観測を受けリスクオンセンチメントの広がりの中でNY金には売りが広がっている。足元ではまず米中共同宣言の内容がどのようなものになるのかがポイントに。関税率の引き下げに関し具体的な数字の公表や関税を課する品目の見直しなど、踏み込んだものとなると、NY金は3200ドル割れを試すところまで売られる可能性がありそうだ。ただし一定水準の円安が維持されると見られ、国内価格は下げは緩和されるとみられる。》
今週の本文コーナータイトルは「米中協議、安定的に継続なら材料性は一巡も」とした。そもそも米中間の報復関税が145%、125%などと実質的に意味のない(これだけ引き上げなくても双方ともにすでに禁輸措置)程度に達したことで、NY金は米国売り(トリプル安)の反対側で3500ドルまで駆け上がったが、その材料性も継続協議が決まるだけでも一巡すると見たことによる。
壁に転じた3500ドル超えの材料出現には、年後半まで時間を要するのではないかと思う。もっとも、気が付けばあと2カ月で年後半なだが。