ECB理事会は資産買い取りを9ヵ月延長し2017年3月から12月までとする一方で、延長期間の4月以降は月次800億ユーロから600億ユーロに減額と。ドラギ総裁は、デフレ懸念はほぼ払しょくしたとしながらも、域内の不安定な先行きが懸念される政治や南欧の銀行の不良債権問題などを念頭に置いて、この先も臨戦態勢を続ける方針を表明。しかし、世界的にドル金利に引き寄せられるように長期金利が上昇する中で(日銀が踏ん張る日本は別)、一定の安定を維持している中では、受け取る方としては“出口”を意識させられる決定といえる。
ユーロ圏は置いておいて、米長期金利とドルの急騰の組合せは、どう転んでも過去数年、投資マネーを呼び込んできた新興国にプレッシャーをかける。「投資マネーを呼び込む」の表現を換えるなら、「ドル建ての負債を増やした」ということになるが、現地通貨がさらに売られる前に回収あるいは返済をせねばということで、資本流出が多かれ少なかれ起きるのはいつもの話。・・・・で、現在起きている。
そもそも、足元の状況がどこまで進むのかで危機のレベルも異なるが、過去は音を上げる国が現れ、通貨危機ということが起きてきた。常にどこかで意識し気を付けるべし。
報じられたように中国の外貨準備が11月は混乱した年始1月以来の減少となっていた。691億ドル減ったと。1月は約1000億ドルだった。人民元の下げ率を緩やかにするためにのドル売り元買いの原資に外貨準備を散り崩しているとみられる。11月末はついに3兆516億ドルと大台割れが見える水準まできた。中国は米国債の保有量では、日本と(結果的に)首位争いする1兆2000億ドル程度の大量保有国。
皮肉なことに、介入原資として取り崩すために米国債を売却すること自体が、債券相場の下げ足を早めさせ金利を押し上げ、ドル高のピッチを上げる。そもそも3兆ドルある外貨準備のうち直ぐに使える(流動性が高い)ものが、3分の1ほどしかないという部分にスポットが当たり始めると、実質的な外貨準備の総額も割り引く必要ありとの声も高まりそうだ。
上海市場の金価格にプレミアムが付いていたが、個人レベルでは一人年間5万ドル(約570万円)相当に制限されている外貨交換枠を使い切った人々やその他の買いが入っていたという連想が働く。そもそも、外貨準備を月次で発表し始めたのは、IMFのSDRに人民元が採用されたことによるが、毎月金準備も発表され1年半近く経過した。ちなみに11月の人民銀行の金準備は前月比変わらずの1842.6トンとなっている。金を買い増す余力なしということか。
昨夜の中野サンプラザでのセミナーに参加いただいた皆さん、ありがとうございました。