8月22日のNY金は3営業日続伸した。米長期金利の上昇が一服し、8月に入り前週末までに4.5%の下落と、大きく売り込まれていたことから値ごろ感からの買いが続いた。
一方で、ドルが主要通貨に対し底堅く推移したことでドル指数(DXY)が上昇。一時103.716と6月12日来2カ月ぶりの高値水準に上昇したことに金は上値を抑えられ、小幅な上昇にとどまった。NYコメックスの通常取引は、前日比3.0ドル高の1926.00ドルで終了。
米長期金利の指標となっている10年債利回りは、22日もNY時間外のロンドンの時間帯に上昇。一時4.366%と前日に続き2007年11月来約16年ぶりの高水準を付けた。米連邦準備理事会(FRB)が高金利を長期間維持し、連邦政府の財政赤字が拡大することを手掛かりに売りが先行したとされる。投資家はかつて考えていたほど急速に金利が下がらないことを認識しつつあり、戦略を練り直しているとも伝えられた。ただし、この上昇もNY時間に入ると、債券市場に安値拾いの買いが入ったことで上昇は抑えられ、むしろ低下ということに。
結局10年債は4.329%と前日の4.336%から低下して終了となった。
昨日はここで、8月に入って以降の急激な米長期金利の上昇が金融機関、なかでも中小の金融機関の資金コストを押し上げ経営上の圧迫要因となる懸念が高まっていることを取り上げた。
実際に今週21日には、大手格付け会社S&Pグローバル・レーティングスが、米地銀5行の格下げを発表した。「BBB+」から「BBB」に引き下げた中堅銀行持ち株会社キーコープについては、「より高い金利がより長期化する状況で、金利リスク管理が他の大手地銀に比べて収益をより抑制する」とした。
ところで、約16年ぶりの高水準の利回りとは、表現を替えれば約16年ぶりの低水準に国債価格が落ち込んでいることを表す。償還(満期)まで保有すれば問題はないものの、金融機関が保有する資産の評価損が膨らんでいることを意味する。
急激な預金流出に見舞われ、その資金手当てから保有債券を現金化した際に多額の実現損が表面化し、結局破綻に至った3月のシリコンバレーバンクの例は記憶に新しいところだ。同様の事態が発生する可能性は続いており、それゆえ格付け会社は警告を発している。
22日の米株式市場では、金融機関の経営環境の厳しさが改めて意識され、JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスといった大手金融株も売られることになった。
市場全般は25日(金)に予定されているパウエルFRB議長の講演まで、総じて模様眺めという展開になっています。本日はS&Pグローバルが景況指数を発表する。