2月10日のここで、その日に予定されていたパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演を注目とした。昨年に続きNY経済クラブのイベントで行われたもので、事前に内容は米労働市場の状況となっていた。イメージしたのは、イエレン財務長官の発言内容と整合性のあるものになるのだろうということだった。そして、おおむねそのようになった。
パウエル議長は、雇用の状況について悲観的な見通しを示した。統計上の失業率は14.8%(2020年4月)から6.3%(2021年1月)まで下がったものの、職探しを諦めた生活者の増加(労働参加率の低下)を挙げ、潜在的な失業率はさらに高いとした。その上で「1月の失業率は(実質的には)10%近い」とした。「雇用の最大化まで現在の政策金利を維持し続け、最大雇用に向け十分な進展がみられるまで現在の量的緩和政策は続ける」と金融緩和の長期化を改めて宣言した。
この発言自体は1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見の繰り返しで、織り込み済みのもの。それでも見立てが変わって引き締めに転じるのではというのが、市場で根強い警戒感だ。2013年に起きたバーナンキショックで知られる、「テイパリング(tapering)・段階的な資産縮小」表面化による市場混乱(テイパータントラム)に対する市場のトラウマと言えるもので、何かの機会で書いたことがあるが、金市場でその傾向が非常に強い。
パウエル議長は、バイデン政権の大型追加経済対策成立期待に沿うかたちで市場で高まるインフレ懸念についても言及した。曰(いわ)く、新型コロナ感染拡大で物価が上がりにくい(ディスインフレ)環境となったことから、その反動で今後数カ月インフレ率が上昇する可能性はあるものの、「一時的であろう」というもの。「大幅で持続的なインフレは予想していない」ともした。インフレリスクよりも雇用回復を優先する姿勢を強調したもの。
質疑応答では財政悪化への懸念を問われ「まず経済を強くするのが先で、財政問題はその後の議論」と答えた。言うまでもなく経済の一定の過熱を容認しつつ、雇用の拡大を目指すイエレン新財務長官の方針と合致するもので、早期引き締め論を一蹴する内容といえる。パウエル議長の講演は、金・銀よりもプラチナ、それ以上に株式市場を押し上げることになった。
プラチナは、主力生産地南アフリカでの不安定な電力供給から鉱山生産が予定通り進まず供給減が見込まれ、投資需要拡大の中、需給バランスが締まるとの見方から買いを集めた。南ア電力公社エスコムは、使途滑不明金などずさんな経営内容にメスが入れられ、増加する電力需要に応えられない状況が続いている。もっとも、この問題はにわかに起きたものではなく、ここ数年来の南アの課題といえるもの。ここで材料にしたか、という感じ。新型コロナ感染拡大が、ワクチンの普及で世界的に一巡し、年後半には産業用メタルの需要回復が見られるとの期待も、投資資金の流入を促している。ここでもETFへの資金流入が注目される。
パウエル講演に際して質問に出た米国財政については、10日に米国財務省が、2020年10月~21年1月の4カ月間の累積財政収支が7357億ドル(約77兆円)の赤字だったと発表した。つまり2021会計年度はスタートからわずか4カ月でこの状態にある。昨年末に難航の末に成立した9000憶ドルの追加救済策などもあり、赤字額は前年同期比で89%も増えている。
この発表に続き11日には、米議会予算局(CBO)が、中期の財政見通しを改定版を発表し、2021会計年度全体では、財政赤字が2兆2580億ドル(約240兆円)になると予測した。20年9月の前回予測から25%増えたのは、新型コロナ対応によるもの。その結果、連邦政府の累積債務残高も28.5兆ドル(約3000兆円)となり、過去最大を更新する見込みとするが、この中にはもちろん、足元の1.9兆ドルの追加経済対策は含まれていない。この法案が成立してから、予算教書が発表されると思われるが、環境分野などインフラ投資が盛り込まれる。
すでに来年に迫っている中間選挙での巻き返しを図る共和党は、新型コロナ禍通過にメドがたつと財政上の対立姿勢をさらに強め、バイデン政権は好きにはさせてもらえないだろう。政治リスクの高まりの中で、財政を巡る市場の動きに2021年後半は警戒すべき時間帯に入る。いまはつまらない金市場だが、様相は変わると思うが果たしてどうか。。。
パウエル議長は、雇用の状況について悲観的な見通しを示した。統計上の失業率は14.8%(2020年4月)から6.3%(2021年1月)まで下がったものの、職探しを諦めた生活者の増加(労働参加率の低下)を挙げ、潜在的な失業率はさらに高いとした。その上で「1月の失業率は(実質的には)10%近い」とした。「雇用の最大化まで現在の政策金利を維持し続け、最大雇用に向け十分な進展がみられるまで現在の量的緩和政策は続ける」と金融緩和の長期化を改めて宣言した。
この発言自体は1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見の繰り返しで、織り込み済みのもの。それでも見立てが変わって引き締めに転じるのではというのが、市場で根強い警戒感だ。2013年に起きたバーナンキショックで知られる、「テイパリング(tapering)・段階的な資産縮小」表面化による市場混乱(テイパータントラム)に対する市場のトラウマと言えるもので、何かの機会で書いたことがあるが、金市場でその傾向が非常に強い。
パウエル議長は、バイデン政権の大型追加経済対策成立期待に沿うかたちで市場で高まるインフレ懸念についても言及した。曰(いわ)く、新型コロナ感染拡大で物価が上がりにくい(ディスインフレ)環境となったことから、その反動で今後数カ月インフレ率が上昇する可能性はあるものの、「一時的であろう」というもの。「大幅で持続的なインフレは予想していない」ともした。インフレリスクよりも雇用回復を優先する姿勢を強調したもの。
質疑応答では財政悪化への懸念を問われ「まず経済を強くするのが先で、財政問題はその後の議論」と答えた。言うまでもなく経済の一定の過熱を容認しつつ、雇用の拡大を目指すイエレン新財務長官の方針と合致するもので、早期引き締め論を一蹴する内容といえる。パウエル議長の講演は、金・銀よりもプラチナ、それ以上に株式市場を押し上げることになった。
プラチナは、主力生産地南アフリカでの不安定な電力供給から鉱山生産が予定通り進まず供給減が見込まれ、投資需要拡大の中、需給バランスが締まるとの見方から買いを集めた。南ア電力公社エスコムは、使途滑不明金などずさんな経営内容にメスが入れられ、増加する電力需要に応えられない状況が続いている。もっとも、この問題はにわかに起きたものではなく、ここ数年来の南アの課題といえるもの。ここで材料にしたか、という感じ。新型コロナ感染拡大が、ワクチンの普及で世界的に一巡し、年後半には産業用メタルの需要回復が見られるとの期待も、投資資金の流入を促している。ここでもETFへの資金流入が注目される。
パウエル講演に際して質問に出た米国財政については、10日に米国財務省が、2020年10月~21年1月の4カ月間の累積財政収支が7357億ドル(約77兆円)の赤字だったと発表した。つまり2021会計年度はスタートからわずか4カ月でこの状態にある。昨年末に難航の末に成立した9000憶ドルの追加救済策などもあり、赤字額は前年同期比で89%も増えている。
この発表に続き11日には、米議会予算局(CBO)が、中期の財政見通しを改定版を発表し、2021会計年度全体では、財政赤字が2兆2580億ドル(約240兆円)になると予測した。20年9月の前回予測から25%増えたのは、新型コロナ対応によるもの。その結果、連邦政府の累積債務残高も28.5兆ドル(約3000兆円)となり、過去最大を更新する見込みとするが、この中にはもちろん、足元の1.9兆ドルの追加経済対策は含まれていない。この法案が成立してから、予算教書が発表されると思われるが、環境分野などインフラ投資が盛り込まれる。
すでに来年に迫っている中間選挙での巻き返しを図る共和党は、新型コロナ禍通過にメドがたつと財政上の対立姿勢をさらに強め、バイデン政権は好きにはさせてもらえないだろう。政治リスクの高まりの中で、財政を巡る市場の動きに2021年後半は警戒すべき時間帯に入る。いまはつまらない金市場だが、様相は変わると思うが果たしてどうか。。。