亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

NY金2200ドル超維持、年内利下げ回数維持とハト派的議長発言

2024年03月21日 20時23分26秒 | 金市場

メンバーによる経済見通しの発表があること、さらに前週に発表された米インフレ指標が予想比上振れとなったことで注目度が上がっていた連邦公開市場委員会(FOMC)。タカ派的な内容にならなかったこと受け、通常取引終了後のNY時間外取引にてNY金は大きく上昇した。一時2192.20ドルまで買われ、終値は2189.60ドルとなった。20日の通常取引終値比では29.90ドル高に。水準としては、ここまでの過去最高値3月11日の通常取引終値2188.60ドルを上回った。

 

メンバーの経済予測の内容以上に、パウエルFRB議長の記者会見がハト派的な内容となったことが押し上げ要因となった。 報じられたようにメンバーの経済見通し(ドット・プロット)にて、24年末の政策金利の予測(中央値)が4.6%となり昨年12月の前回予測から変わらなかった。年内に3回利下げするシナリオを維持したことで、市場に安心感が広がりドルが売られ、金市場は買いを集めた。

市場では、前週発表の2月の米消費者物価指数(CPI)、同生産者物価指数(PPI)が予想比上振れとなったことを受け、年内の利下げ回数が減ることが警戒されていた。パウエル議長が記者会見にて直近のインフレ指標の上振れに対して、「インフレ率が2%に向かって徐々に低下していくという全体的なストーリーは変わっていない」と発言したことも、サポート要因となった。

FOMC声明文発表前に終了していた20日の通常取引は、前日比1.30ドル高の2161.00ドルで終了していた。

 

FOMCは予想通り全会一致で政策金利を据え置いた。これで5会合連続の据え置きに。24年の利下げ回数は3回で据え置く一方で、25年については4回から3回に引き下げた。実態は予想値中央値がかろうじて3回を示したもので、議長以下19人のメンバーの内、3回実施されると10人が予想した一方、2回以下の予想も9人いた。数としては僅差の判断と言える。

ちなみに前回昨年12月予想では、24年中に4回以上の利下げを見込むメンバーは5人いたが、今回は1人になった。

金利水準の長期見通しもこれまでの2.5%から2.6%に引き上がっており、むしろ引き締め環境は継続という印象となる。それを感じさせない議長発言。市場は「利下げ3回維持」を切り取って楽観ということになった。

 

金利見通し以外は、24年10~12月期の実質成長率の予測を2.1%と前回の1.4%から引き上げた。24年の失業率予測は4.0%と同0.1ポイント下げた。今年の基調的インフレ率については2.6%と従来予想(2.4%)から引き上げに。インフレは前回想定より高止まりするとみる一方、その後に目標の2%に向けて鈍化する見通しは維持した。チグハグ感は否めず、全体見通しは、やや整合性に欠けるといえる。声明では「雇用とインフレの目標達成に対するリスクは、より良いバランスへと移行しつつあると判断している」と記した。

 

毎月最大950億ドル(約14兆4000億円)のバランスシート(FRB保有資産)縮小については、継続する方針を改めて表明。ただしパウエル議長は、バランスシートについては縮小ペースを「かなり早期」に減速させるのが適切だろうとした。

2019年に縮小過程で銀行間の短期金融市場が混乱に陥り(資金ショートで短期金利急騰)、FRBは緊急避難的な資金供給を余儀なくされたことがあった。現在、株価が史上最高値を更新する環境の下で、想定以上の高金利の長期化に対し同時進行する資金回収(バランスシート縮小)を警戒しているものとみられる。

記者会見の発言からは、毎月の資金吸収を減らすことで混乱を避けつつ、時間をかけてバランスシートの縮小(市場からの資金回収)を図ろうとしている。

なお21日のNY金は時間外のアジア早朝に一時2225.30ドルまで付け、取引時間中の最高値を更新した。その後2200ドル割れまで売り戻されたものの再び2200ドル超に復帰、そままNY早朝まで水準を維持している。本日の通常取引開始以降に動きが見られると思うが、果たしてどうか。

 

ドル円相場が151円前後で推移していることもあり、国内円建て小売価格も21日は税込み1万1700円台に乗せ史上最高値を更新。大阪取引所の金先物JPX金も、このブログ更新時点で10734円まで付け、最高値を更新している。

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