4月4日のNY金は8営業日ぶりに反落した。通常取引は6.50ドル安の2308.50ドルで終した。
前日はパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言を好感して買いが入り最高値を更したが、さすがに警戒感も強まり上げ一服となった。それでもこの数日見られたように、通常取引終了後の時間外取引では買い優勢の流れに転じ、一時2325.20ドルと取引時間中の高値を更新した。時間外取引は2310.40ドルで終了したものの、前日までの3営業日に比べ、引け際の勢いは落ちた印象は否めなかった。
4日も複数のFRB高官の発言機会が予定されていた。
当方が事前に注目していたのはミネアポリス連銀のカシュカリ総裁だった。やはりということだが、前日のパウエル議長の発言と異なり、タカ派的発言で市場の手掛かり材料となった。
何ゆえカシュカリ総裁の発言に注目していたのか。
一国の経済に対し過熱もせず冷やしもしない金利水準を「中立金利」という。FRBはこの数年米国経済のそれは、2.5%としてきた。つまり昨年7月以来据え置きしている5.25~5.50%の政策金利の水準は、倍以上でかなり景気を冷やす高金利と言えるもの。
しかし、ここまでの米経済は想定外の堅調に推移している。
昨年秋以降浮上しているのが、歴史的高金利も効いていないのではないかということで、そもそも経済の構造が新型コロナ禍を経て変わり、中立金利の水準も切り上がっているのではという議論だ。その先鋒に立っているのが、地区連銀総裁の中ではカシュカリ総裁だった。
したがって昨年来、その言動に注目してきた。
4日、オンラインの対談に登場したカシュカリ総裁は、インフレ鈍化の進展が滞る場合、年内の利下げは必要なくなる可能性があると指摘した。
「私は3月時点では、インフレが2%目標に向かって下がり続ける場合、年内に2回の利下げがあると予想していた」と発言。「インフレの横ばい推移が続くようであれば、そうした利下げを実施する必要があるのかどうか疑問が生じるだろう」とした。 「米経済のモメンタム(勢い)は強い」と指摘し、経済が堅調を維持する場合はなおさらだとの考えを示した。
まだ3月のFOMCから2週間余りしか経過していないが、この間の指標からの判断といえる。
それでも前日のパウエル議長の発言内容からは、6月利下げ着手が現時点では基本路線と言えるだろう。
カシュカリ発言は、すでに調整色を強めていた株式市場の売り手掛かりとなった。4日の午後2時過ぎからダウ30種平均が下げに転じ、4日続落となる前日比530ドル安の3万8596ドルで終えた。1日の下げ幅としては今年最大で4日間で計1210ドル(3%)の下落となった。
本日は3月の米雇用統計が後40分後に発表される。
雇用者数は4カ月連続で少なくとも20万人増となる見通しとなっている。ここ数カ月、労働市場は底堅く推移しているものの、レイオフは増加傾向にあることが今週発表された雇用動態調査で明らかになっている。
インフレとの関連では平均時給の伸びが注目される。市場予想は前年同月比4.1%増となっており、実際にそうなれば2021年半ば以来の小幅な伸びとなる。
昨日、最後に押し目待ちに押し目なしと書いたが、ここまでのところNY金の下値は2286.20ドルとなっている。
金(ゴールド)には雇用統計は波乱なく通過するというより、仮に賃金の伸びが予想を下回れば、さらに上値を伸ばすのではないかと思うが、果たしてどうなるか。