亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

米債利回り異例の3カ月と10年の逆転

2022年10月27日 20時25分17秒 | 金市場

先進諸国の中で最も早い段階で、利上げを開始したことで知られるカナダ中銀が、26日、政策金利を0.5%引き上げた。

市場予想の0.75%よりも小さかったうえ、マックレム総裁は記者会見で「金融引き締めの段階は終わりが近づいている」と発言した。経済が年末から23年の上半期にかけ0.0~0.5%成長と、停滞を予想。成長が数四半期ゼロを割り込むテクニカルリセッション(データ上の景気後退)の可能性にも触れた。

このカナダの利上げ幅縮小が、FRBの利上げペースの減速を連想させることになった。

さらに朝方発表された9月の新築一戸建て住宅販売戸数は年率換算で前月比10.9%減の60万3000戸と、落ち込んだこともこの見方を後押しした。ここまで住宅市場の落ち込みを示すデータは毎月発表されてきたが、改めて急ピッチの利上げの影響ですでに米景気は冷えているとの見方が広がった。実際に米抵当銀行協会(MBA)が26日発表した調査では、30年固定の住宅ローン金利(週平均)は7.16%と前年の倍の水準で21年ぶりの高水準を記録し、住宅ローン申請件数を示す総合指数は前年比で69%低下している。

 

こうした中で、米長期金利は前日からの下げを拡大し、ドルは主要通貨に対し全面安の状況となった。

米債市場では、10年債利回りが前日に続き低下し(ロイターや日経が報じるところでは一時3.99%と4%割れをみて)4.006%で終了した。昨日はここで10年債と3カ月物短期国債(Tビル)が一時的に逆転したことを取り上げたが、26日は3カ月物が4.027%で終了したことで、終値ベースで10年債利回りを上回る「逆イールド」となった。

終値での逆転は2020年3月以来、2年半ぶりで米景気後退入りを強く示唆するとされ、FRBも景気判断材料として重視している。もっとも当時は1%をやや上回る水準での逆転劇だった。端的に言って異常事態の中での出来事。現在は当時と比較して平時といえ、警戒するに越したことはなかろう。 昨日書いた1カ月物の3%台や3カ月ものが4%台で10年債を上回るというのは、それだけ利上げの激しさを表すということで、今回の方が景気への影響は大きいし、リッセッション・シグナルとしては強いと思われる。昨日と同じことを書くが、この状態がどの程度続くのかが注目される。

米債利回りの急低下はドル売りにつながった。ユーロは9月13日以来の高値を付け1.0082ドルと1ユーロ=1ドルのパリティ(等価)を回復する水準に上昇。英ポンドも1.1625ドルと、9月13日以来の高値を更新。英国でスナク新首相に就任したことが引き続き好感されている。 ドル円相場も146円台まで下落するなどドル安が全般的に進んだ結果、ドル指数(DXY)は、109.700と終値ベースで9月13日以来の安値で終了した。

こうなるとNY金押し上げ要因がそろったことになるが、ロンドンの時間帯に付けていた1679.40ドルがいっぱいで、この水準をNYの時間帯には抜くことができず、上値の重さを感じさせた。通常取引は前日比11.20ドル高の1669.20ドルで終了したが、結局、本日以降の欧州中銀(ECB)の政策判断や明日の米インフレ指標(PCEコアデフレーター)の結果を受けたドル指数の反応を見るということに。

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