亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

株安警報発令中、金利耐性を感じさせるNY金

2021年05月12日 20時48分38秒 | 金市場
前週末の雇用統計以降、市場でインフレ懸念がにわかに高まり株の売り材料になっているが、本日は4月の米消費者物価指数(CPI)の発表が控える。新型コロナパンデミックの混乱の中にあった1年前との比較で、3%台後半の高い数字が出るのは想定内といえる。それでも、改めて反応というのもありか。11日は3月の米雇用動態調査(JOLTS)が発表され、求人件数が812.3万件と2月の752.6万件から大きく増加し、2000年12月の統計開始以降で最高を記録した。そもそも、予想は前月比減少となっていた。結局、労働力の供給が需要増大に追い付いていないということになり、ならば賃金は上昇するのではないかということで、インフレ見通しをさらに高めることになった。

そもそも新型コロナ感染拡大抑制策にともなった物資供給の滞りの中での記録的な景気刺激策。そこに加わった労働市場のひっぱく状態の表面化がインフレ見通しをさらに刺激し、長期金利の上昇懸念という連想から、ハイテク株の利食い売りの手掛かりにされている。

米長期金利というと11日から米国債の入札が始まり、まず3年債580憶ドルがあったが無難に通過した。しかし、長期金利はインフレ警戒モードから一時1.631%まで上昇し、終盤は1.619%に。上昇の際にNY金は1830ドル台半ばから20ドルほど急落したが、売りが一巡すると直ぐに買い戻され、元の水準に復帰となった。

金市場の内部要因としては、価格水準がここにきて急速に節目の1850ドルに接近し、1866ドル近辺に位置している200日移動平均線も近づいていることから、売りが出やすいことも上値を重くしている。ただし一方で、インフレ懸念の高まりの中で、仮に米国でインフレ傾向が高まった場合、ドルの減価も進むとの捉え方からドル指数(DXY)はこの日も弱含みに推移、金価格のサポート要因となっている。ドル指数は一時89.98と2月25日以来の安値まで売られた。今夜公開予定のYouTubeでも語ったと思うが(収録前に某紙の取材もあったので、そっちで話したか?)、足元の金相場への影響はドル指数よりも10年債利回り、すなわち長期金利の方が大きい。

11日は日経平均株価が前日比900円ほど下げるなど欧州を含め株安が進んだのは御存じのとおり。本日もそれは続いた。高PERのハイテク株が売られたことで10日はナスダック総合株指数が2.6%と大幅安となった米国株だが、11日はダウ30種が前日比473ドル(1.36%)安と大きく下落。インフレ懸念の高まりから、投資家のリスク回避姿勢が強まっているとされる。2021年1-3月期決算の発表が終わり、米国企業は予想を超える好決算の発表が続いたが、結果を受けた株価の上昇は一時的で、売られるものが目立っていた。ここでも安川電機に触れたが、日本の国内企業の好決算に対する株価の反応も同様のものが目立った。循環物色で目先を変えながら上値追いしてきた株式市場だが、好決算先食いの織り込み済みが表面化し、目先はやはり上値限界が露呈というところか。米国株式市場もこの先は、テクニカル要因が悪化すると、下げに乗じて利益を上げようとするファンド(CTA)のモメンタムトレードのショートが活発化する可能性がありそうだ。株安警報発令中といったとことだが、どうなるか。

NY金については、やはり一定の金利耐性が感じられる動きになっている。さて、米CPIの結果に対する市場の反応はどうなるか。反応自体が分析の手掛かり材料となる。

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