先週末28日は、米7-9月期国内総生産(GDP)速報値が注目された。もともと上振れを予想するところが多かったが、そのとおり市場予想を上回る良好な内容となった。結果を受け長期金利が上昇、金市場は売り優勢の流れとなり、取引序盤で前日比8ドルほどの下落に。ただし、下げ局面での買い意欲も強く、まもなく売りをこなし前日の水準である1270ドル前後まで値を戻しその後は横ばいで推移した。ところが、午後に入り報じられたようにヒラリー・クリントン候補のメール問題に関しFBI(米連邦捜査局)が再調査の方針とのニュース。金は、にわかに動意づくことに。取引終盤に向け上昇しNYコメックスの通常取引は前日比7.30ドル高の1276.80ドルで終了。流れはその後の時間外の電子取引でも続き1285.40ドルの高値をみた。
米大統領選の投票日が間近に迫ったタイミングで登場したクリントン候補のメール問題再調査の話。3度にわたるテレビ討論も終わり、ほぼ勝負あったかという局面で飛び出したニュースは、市場に波紋を投げかけた。このタイミングでの再調査表明自体に不透明な点も多いが、いわゆるテール・リスク(Tail-risk、発生する可能性は小さいが、起きた際の影響・損失が大きいリスク)とまではいかないものの、改めて不安定な環境であることを印象付けることになった。米大統領選はすでに期日前投票が2100万票に達しているとされ、これは2012年の大統領選挙時の総投票数(約1億2700万票)の16.5%にあたるとされる。この部分は影響を受けないとはいえ、ヒラリー優勢の流れに水を差したのは事実であり実際の投票行動への影響は否めない。
さて見出しに上げた7-9月期GDP(速報値)は、前期比年率+2.9%と市場予想の+2.5%を上振れる結果となった。輸出が好調で低迷していた企業の設備投資も復活の気配があり前期の+1.4%から加速した。伸び率としては8四半期ぶりの大きさとなる。
まず思ったのは、好調な輸出(10.0%増)が押し上げ要因ということへの違和感だった。というのもIMF(国際通貨基金)のデータでは、世界的に貿易の縮小傾向が示されていたこと。さらにこのところのドル高の中で輸出が好調という点に意外感があったことによる。そこで内容をみると、南米の天候不順で米国からの農産物輸出が大幅に増えたことが押し上げたようだ。つまり一時的要因による押し上げが背景にある。一方で米国景気を引っ張ってきた個人消費は2.1%増とプラスを維持しているものの、やや減速となっている。10月以降に更にドルが上昇していることもあり、高成長が続くか不透明といえそうだ。
本日の米個人消費を皮切りに明日のISM製造業、2日にFOMC声明文、3日にISM非製造業、4日に雇用統計と怒涛の指標ラッシュが続く。