今週は連日にわたりユーロ圏諸国の国債の発行(入札)が続いている。本日もスペインが最大40億ユーロ、フランスが同じく82億ユーロの調達を実施する予定となっている。その発行条件の結果によっても、市場は揺れることになる。先月末のユーロ圏の「包括戦略」でギリシャ国債の保有金融機関に対して50%の減免を求めたことが、金融機関サイドの自発的な行動とすることで「デフォルト(債務不履行)に当たらず」という、ユーロ圏金融当局の(無理を承知の)ゴリ押し的要求の影響が市場に及び始めている。10月28日のここに、「楽観に遠いユーロ圏」と題して書いた際に触れたが、この要求を国際スワップ・デリバティブズ協会(ISDA)が受け入れ、当座は一見略着となった。あのとき「今後CDSを巡る発効条件に物議を醸すことになりそうだ」としたが、デフォルト発生時に代わりに償還元本を保証してもらえる「保険」にあたるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の有効性について疑問がユーロ圏債券市場にプレッシャーを掛けている。結果的にCDSの機能に疑問を抱いた投資家は、手持ちの国債を手放しに掛り、これが不安のある国の債券は売りが加速し、さらにこれまで見られなかったフランスやオランダなども含む高格付けの国債の下げ圧力となっている(利回り上昇)。“危うきは手放す” というわけだ。認識していたルールが、「緊急避難」とはいえ曲げられた(と受け止められた)意味は大きい。
ユーロ圏の混乱の他地域への悪影響を懸念する動きもさらに高まっている。16日は米格付け会社フィッチ・レーティングスがユーロ圏危機の悪化が米銀の信用力に「(耐えられるであろうが)深刻なリスク」をもたらすと指摘したと伝えられると、NY株は引けにかけて急落状態となり結局NYダウは前日比190ドル安となった。米10月の鉱工業生産が前月比+0.7%と、予想の+0.4%を上回った、また10月の消費者物価指数が前年比で-0.1%に落ち着くなど株価にとってのプラス材料と見られるデータも無視される状況となっている。投資家の警戒感が高まりリスク回避姿勢に傾いていることによる。
その中で金は、「Safety Asset(安全資産)」とする見方と、「リスク資産」とする見方が合い半ばする形で、結局方向感がつかめずレンジ取引に始終という展開にある。
この価格水準での滞留期間が長引くほどに、水準自体が妥当化されるというのが、金市場の面白いところであるし、また特徴でもある。