先週のNY金は、週初に1913.00ドルと7月6日以来約1カ月半ぶりの安値を付けたものの、安値拾いの買いが見られ週後半には反発となった。25日のNY金の終値は1939.90ドルで週足は23.40ドル、1.22%高となり4週ぶりの上昇となった。
24日から3日間の日程で予定されていた、ワイオミング州ジャクソンホールで開かれる金融シンポジウム(通称ジャクソンホール会議)では週末25日にパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演が予定されており、その内容を巡る思惑が先行する流れとなった。
パウエル議長の講演を巡っては、引き続きインフレ抑制のために高金利を維持するとのタカ派発言が市場では織り込まれており、週を通してNY金の上値を抑えた。果たして25日の講演で議長は、インフレ率について「依然として高すぎる」と指摘したうえで「適切ならさらに利上げする用意がある」と発言した。
ただし一方で、政策決定は「今後のデータ次第」であり、追加利上げと停止双方の可能性に言及するなど、これまでの見解の繰り返しが多く、今後の金融政策の方向性を示唆するものではなかった。タカ派的スタンスに身構えていた市場では、一定の安心感が広がった。特にパウエル議長が、追加利上げ、あるいは停止のいずれの方向を取るにしても「慎重に決めたい」としたことは、タカ派一辺倒ではないとの印象を与えた。
いったんはタカ派的スタンスとの受け止め方で1931.00ドルまで売られた25日のNY金だが、終盤には買い戻され、前述のように通常取引は1939.90ドルで終了。その後の時間外取引でも買い戻しの動きは続き、1943.30ドルで週末の取引を終了した。
ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演は、市場に過剰な反応を引き起こさせないよう配慮する結果、内容的にクリアカットとは行かない可能性が想定されていた。また受け取る側のスタンスで、発信情報の解釈も変わる内容となることも考えられた。インフレ鈍化が続く中で、さらにどれだけの取り組みが必要かを巡り当局者間の意見も分かれていることがある。
そもそも今回の情報発信の目的は市場に予断を持たせないことであり、それによりFRB自体の今後の政策自由度を確保するものとの指摘がある。確かに米債券市場の見通しは発言を受け割れている。予断を持たせなかった反面、不透明感は長く続くことになる。講演の骨子は従来通り「今後のデータ次第」であり、今後の金融政策の方向性を示唆するものではなかった。講演を受けた市場の評価は、あるメディアは、「サプライズなしのジャクソンホール」とした。また、パウエル議長講演を「無風通過」と伝えるところもあった。
総じて今回のイベント(パウエル講演)は、「大山鳴動してねずみ一匹」という印象で通過することになった。
一方、国内円建て金価格は、週末25日に過去最高値を更新した。
NY金の週足が4週ぶりの上昇に転じたことに加え、対ドルでの円安が進展したことによる。「適切ならさらに利上げする用意がある」とのパウエル議長の発言を受け、ドルが買われ25日のドル円相場は一時1ドル=146.64円と昨年11月上旬以来、およそ9カ月ぶりの安値を付け146.40~50円で終了。
25日大阪取引所の金先物日中取引は(JPX金)8980円で終了。終値ベースで過去最高値を更新した。
そして週明けの本日28日、時間外のNY金が前週末の水準(1940ドル台)を維持する中でJPX金は買われ、小動きなれど一時9016円とザラバ(取引時間中)の最高値を更新。日中取引の引けも9010円とこちらも過去最高値を更新した。
一般的に税込みで表記されるゴールド現物の店頭小売価格は、9900円台に乗せ1万円に接近している。こちらも過去最高値更新となる。
今週中に初の税込み1万円台乗せという感じだが、だからといって達成感はない。単なる通過点と思っている。
もっとも、1万円を目標価格に設定している国内投資家もいるでしょうし、それは個人の判断を尊重いたします。