亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

薄っぺらなクリプト(仮想通貨)とGOLDの厚み

2021年05月20日 21時07分53秒 | 金市場
ビットコインを中心とするクリプト・カレンシー(暗号通貨)の日本時間昨夜の暴落のいきさつや程度、経過は報道に詳しいので、そちらに任せよう。思ったのは、もともと時価総額が最近は2兆ドル(約220兆円)まで膨れ上がっていたとはいえ、流動性という点で難点があるのではないかということだった。つまり急な動きがあり売りたいときに(一定の範囲だが)思った価格で売れないのではということだった。買い手不在で株など他の資産なら気配値だが、価格の振れが極端なことになるのは、これまでの値動きで一定の予見はあったといえる。

暗号資産と金を比較し共通項を上げることが行われていたが、そもそも資産としての基盤が異なるので、そういった議論には敢えて口を挟まなかった。この2月、3月に金価格の値下がりが目立っていた際に、金市場からビットコインに流れているなどと騒いでいる向きがいたが、それほど敢えて指摘する動きでもあるまいと思ってみていた。そうした動きはないとは言えないが、価値の違いを理解していない目先狙いの投資家の動きに過ぎないのだろうと思っていた。したがって、昨日のようなクリプトの総崩れで「金に資金が移っている(JPモルガン)」などと言われても、ほんとかよ?という感じで、無視するのがよろしいかと思っている。同じワゴン(band-wagon)に乗せようと、楽器をかき鳴らす連中は多いので要注意ではある。事実、昨日は金ETFの最大銘柄「SPDRゴールドシェア」は4トン強も残高が減っていた。

金は世界中に欲しい人が存在し、下がるのを待っている。実際に年始から春先に目立って下げた際に、現物を持ちたい人々はこぞって現物の買いを入れたことがデータで明らかになっている。その中には60トンほど買った東欧の中央銀行も入っていた。クリプトにそういった確たる存在はない。

さらにもうひとつ。昨夜は突発的なイベントが起きたわけでなく、18日付で中国の金融業界団体がクリプト通貨の関連業務を禁じる通知を出したのがきっかけとされる。それで下げが徐々に膨らんでいて、価格上の節目なのか何なのか不明だが値動きが加速すると、theater syndrome(シアター・シンドローム)のような状況で皆出口に殺到してしまい、NY時間の午前9時過ぎには主要銘柄は「1分間で5~10%も動く極端な相場」になったという。しかし、その際に主要な交換業者で接続障害が起こり取引がスタックしたとされる。「1~2時間のうちに障害は復旧」したらしいが、1分間で5~10%も動いていた市場の、1~2時間は長かろう。

この程度のニュースで取引がストップした事実は、これまで参入が伝えられていた「機関投資家」はどうとらえるのだろうか。


昨夜はここに1900ドル乗せは意外に早いかもと書いたが、結局、1891.30ドル止まりだった。クリプト騒動が一時株にも波及し、リスクオフ・センチメントが一気に高まった際に(久々の)質への逃避的な動きで買われたことによる。しかし、騒動で忘れられていたが、この日は4月のFOMC議事要旨の発表日だった。14時に発表された内容が、結局、金の上値を抑えることになった。

長くなるので、この話は明日にでも取り上げましょう。

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