米東部時間7日午前10時に始まった上院銀行委員会でのパウエルFRB議長の証言は、冒頭部分で「データが引き締めペースの加速を正当化すれば、利上げのペースを加速する用意がある」と発言。
1月の雇用統計や消費関連の指数の強さには、一部は暖冬や他の季節的要因の影響による可能性があるとしつつも、「最終的な金利水準が従来の予想よりも高くなる可能性が高いことを示唆している」とした。市場では今月21~22日に予定されているFOMCを含め、利上げ幅拡大観測(0.25%⇒0.50%)が一気に台頭することになった。
いわゆるターミナルレートと呼ばれる利上げサイクルの最終到着点金利の水準は、利上げ回数の増加で当然上がるが、いったん縮小した利上げ幅の再拡大までの言及を読む向きは少なかった。
思うのは、利上げ幅の再拡大は、FRBがインフレ見通しを変えたことを意味し、一般の期待インフレ率を高める可能性があるのではということ。センチメント主導型の経済にあっては、それ自体がインフレを高めてしまう可能性がありはしないかと気になる点でもある。
さらに、「インフレは一時的」とした初動段階での見誤りに加え、今回の変更は再び見通しを違えたことを認める行為でもある。
目に留まったのは、失業率が3.4%(1969年以来の低水準)にとどまり、賃金上昇圧力は強く、昨年来の歴史的ペースでの金融引き締め策の効果が依然経済に波及していない可能性に言及したこと。
この辺りは、昨日当欄にてボウマンFRB理事とウォラーFRB理事の直近の発言内容を取り上げたが、やはりFRB内部では「ここまでの利上げは未だ効いていない」というのが共通認識になっていることが確認された形だ。この辺りが、利上げ幅再拡大に踏みこんだ背景と取ることもできそうだ。
いずれにしてもパウエル議長が物価認識を変え、FRBのタカ派的スタンスの継続が確認されたことで、市場の値動きは大きくなった。
NY市場の金価格は、前日比34.60ドル安の1820.00ドルで終了した。主要通貨に対しドル高に弾みがつく中で、金は下げ幅を拡大した。ドル指数(DXY)は105.615とほぼ高値引けで、3カ月ぶり高値に。債券市場では、金融政策の影響を受けやすい2年債利回りが5%を超え2007年以来の高水準にまで上昇する一方、10年債は景気悪化を読み込む形で買いが入り、利回り上昇が抑えられ前日の水準に並ぶ形で終了(3.970%)した。その結果、10年債と2年債の利回り格差(逆転イールド状態)は1.045%と1981年9月下旬以来の規模(リフィニティブ)に拡大している。
NY金は通常取引終了後の時間外に一時1817.10ドルまで売られた。一方、ドル円相場が一気に137円台半ばと昨年12月下旬以来の水準まで円安が進んだことで、円建て金価格は8000円前後の水準を維持している。
本日8日は、下院金融サービス委員会での議会証言となる。質疑応答でどんな発言が飛び出すか。前日の上院と異なり下院は委員会も共和党が主導権を握ってるので、質問事項も変わると思われる。
FRBのタカ派姿勢は変わらないので、その中で今回のイベントでNY金が1800ドル台を維持できるかが注目される。