14日に発表された8月の米消費者物価指数(CPI)は市場予想を下回り、米連邦準備理事会(FRB)は早急な緩和政策の修正は行わないとの見方から、主要通貨に対しドルが売られ、金市場は買い優勢の流れに転じることになった。NYコメックスの通常取引は前日比12.70ドル高の1807.10ドルで終了。発表直前まで売りが先行していた金市場だったが(安値1780.60ドル)、CPI (Consumer Price Index)の結果を受けて流れが変わった。1800ドル近辺では売り買い交錯状態になるも、短時間でこれをこなし1810ドルに達し、その後は1810ドル手前の水準を横ばいで推移ということに。しかし、現時点でこの上が開けない。
一方、世界的な自動車生産の滞りを手掛かりとする、PGM(白金族メタル)の売りはこの日も続きパラジウムは6営業日続落となった。前日比104.20ドル安の1975.60ドルで終了。手元のデータでは昨年7月9日以来、14カ月ぶりの安値水準となる。プラチナは反落で18.80ドル安の938.70ドルで終了。昨年11月23日以来約9カ月ぶりの安値となる。
8月の米CPIは、前月比0.3%上昇と、7月の0.5%上昇から鈍化した。前年同月比では5.3%上昇。7月は5.4%上昇だった。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数の伸びは前年同月比4.0%と、7月の4.3%から鈍化し、市場予想の4.2%を下回った。傾向を把握する上で重視される前月比でも0.1%上昇と、7月の0.3%から縮小。2月以来、6カ月ぶりの低い伸びにとどまった。内訳では、中古車・トラックが前月比1.5%下落し、半年ぶりにマイナスに転じた。新型コロナ・デルタ株の感染が拡大する中、航空運賃は9.1%落ち込んだほか、ホテル・モーテルも3.3%下げた。
いずれにしても、対前年比では記録的な伸びだが、前月比でみると減速傾向というのは、先週末のPPI(生産者物価指数)にも表れていたもの。
インフレ圧力の高まりは一時的としてきたFRBの見方を裏付けた形だが、一方で人手不足やサプライチェーン(供給網)の混乱など物価の押し上げ要因は解消しておらず、インフレの高止まりを指摘する見方も多い。労働市場は徐々に引き締まっており、賃金上昇圧力が増している。また、住宅市場での供給不足は、記録的な価格上昇や家賃の上昇を引き起こしており、これらは物価上昇が続く要因になり得るもの。
すでに市場の目は明日16日の8月の小売売上高に移っている。
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