米国関連で主要な経済指標の発表はなく、市場の関心は本日発表の5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録要旨に向けられる中で、市場の関心を集めたものに中国による車の輸入関税の引き下げがあった。週初にムニューシン米財務長官が米朝貿易戦争を一時保留すると述べ、市場に楽観的見通しが広がりリスクオンの株高につながったが、この流れを後押しするニュースといえた。
内容は、7月1日から輸入乗用車に対する関税を25%から15%に引き下げるというもの(トラックなどは20%⇒15%)。また自動車部品も8~25%の関税を一律6%まで引き下げるとする。貿易赤字削減に向けたトランプ政権の要望に、中国側が歩み寄ることになった。しかし、この内容は4月の時点で習近平国家主席が表明していたもので、目新しさはないのも事実ではある。
実際に、このニュースを好感しプラス圏となる節目突破の2万5000ドル台で取引が始まったNYダウだったが、終盤にかけて売り圧力が高まり200ドル以上下げ、そのまま178ドル安で終了となった。トランプ大統領が「中国との貿易交渉の結果は喜ばしくはない」、「中国との話し合いは始まったばかりだが、満足していない」としたことも、影響したと思われる。米国はロス商務長官が来週、貿易交渉の細目を詰めるために中国を訪問するとしている。それを前にした牽制発言ということだろう。
さらに、米朝首脳会談に関しても動きがあった。6月12日にシンガポールで開催される予定の会談について、トランプ大統領は条件が折り合わなければ「今回の会談が実現しない可能性は極めて高い」と発言。開催するか否かは、「近いうち」に決定するとした。ただし、「6月12日は無理でも、いずれ開催される十分な可能性はある」ともしている。発言については、トランプ流の駆け引きとも受け止められ、市場は真意を量りかねている状況。
さて、日本時間明朝の議事録の公開だが、ここにきて(景気を過熱も冷やしもしない)中立金利について、失業率の低下などがあっても2.5%程度で上昇しておらず、利上げを急ぐ必要がないのではとの議論がある。むしろ大型減税などで企業が設備投資に前向きになっているタイミングで、その阻害要因となりかねない利上げの加速は必要ないのではとの意見もある。つまり緩やかな利上げは必要と認めるものの、加速の必要はないと。しかし、足元で市場は利上げの加速を読み、金は1300ドル割れの状況にある。この辺りが、議事録でどうなっているか。
日米貿易摩擦の時代と全く違う世界情勢の中で中国に貿易戦争をしかけても難しいと思いました。
11月の中間選挙をにらんで、今度は車。暴走は続きそうです。トランプだからやれるんだ、と評価する声もあるので悩ましい。火の粉はアメリカにも降り注ぎます。