先週末6月15日のNY市場の金価格の大幅下落。下げは金市場の独自要因ではなく、広くコモディティ市場全般に大口のcash out(現金化)の動きが出たことによると見られる。話し合いによりいったんは落ち着くかに見えた米中の貿易交渉だったが、トランプ政権が強硬姿勢に転じたことに中国側が反発。報復合戦に発展する懸念が高まったことが、米中貿易戦争激化に対する警戒感を高めることになった。このところ一服しているもののIMF(国際通貨基金)が昨秋から指摘したように、世界経済の同時拡大という好循環が見られてきたが、世界の2大経済大国間の争いは、この環境を阻害する要因となるもの。市場参加者の中に一次産品の需要に警戒感を高めるところがあり、銅、アルミ、ニッケルなど産業用金属から原油から大豆やコットンまで幅広くコモディティ(商品)全般の取引を手仕舞う動きが広まった。貴金属市場も全般に大きく下落となった。
大きな価格変動に見舞われたのはコモディティ市場に限られ、しかも横断的に売り物が出たのが特徴で、米国株も下げたものの下げ幅は限定的。ユーロは、対ドルで反発となった。
運用資産の分散として大口の投資家は、コモディティを対象とする際に、各種商品で構成されるパッケージ取引や(株式にたとえると日経225ETFなど)インデックス連動型の投資商品を組み込むことが多い。それらにまとまった解約が出たことが、広く売り物が出て、コモディティ全般に及んだものと思われる。そのパッケージに金も含まれており、取引量が少ない中で1300ドル割れに至ったところで、テクニカル要因や下げトレンドに便乗するかたちで利益を上げようとする売り(モメンタム・トレード)が加わり下げを加速したものと思われる。
週末のコモディティ安のきっかけを時系列で書くと以下のようになる。
15日にホワイトハウスが500億ドル規模のうち818品目340億ドルの中国製品に7月6日から制裁関税を課することを発表したのが現地時間15日午前8時のこと。同時にトランプ大統領は、中国が報復すれば、さらなる関税を検討するとした。その後、米通商代表部(USTR)が、合計500億ドル1102品目のリストを公表。その直後8時半に、中国が米国に対し同規模の報復措置を講じると発表。実際に午後に入り中国は、計659品目、500億ドルの追加関税案を発表した(アジア時間の深夜)。コモディティ全般が、取引開始時から売りが優勢の展開となり、軒並み安という展開に。
日本時間、今夜のドルインデックス(DXY)は、95ポイント越えの節目越えの攻防中で、NY金は1280ドル近辺で小動き、滞留中。DXYが95を超えて上げられるか否かが、金価格を左右。