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亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

反転のきっかけ待ちのNY金

2022年09月26日 20時08分14秒 | 金市場

先週末23日NY市場の金価格は3営業日ぶりに反落となった。

FOMCが3会合連続の0.75%の利上げを決定し、メンバー全員による経済、政策金利見通しでは、22年末に4.4%に上昇し、23年末には4.6%が予想されていることが判明。この結果を受けても、前日は小幅上昇となっていたNY金だが、この日はドルが全面高となり、米長期金利が一時12年ぶりの高水準に上昇する中で売られた。

NYコメックスの通常取引は前日比25.50ドル、1.51%安の1655.60ドルで終了した(清算値)。直近の安値をさらに下回り、一時は1648.30ドルと2020年4月以来の安値を付けた。週間ベースでは27.90ドル、1.66%安と2週連続の下落で終了した。

NY金の23日1日の下げが1.51%、週足で1.66%の下落でわかるように、FOMCの決定を受け株式や債券など主要市場が下げに見舞われる中で、比較的安定した値動きとなっていたNY金だが、週末23日に一気に下値を切り下げた。

市場の想定以上に連邦準備理事会(FRB)の引き締め工程が加速し、最終目標金利(ターミナル・レート)が引き上がったことに対し市場の動揺が走っている。 リスク・オフ(リスク資産回避)センチメントの広がりの中で、ドルに買いが殺到し、連日20年ぶりの高値水準の更新を続けてきたドル指数(DXY)が、23日には一時113.228と、2002年5月以来の高値に上昇。終値でも113.192とこの日の高値を維持した。週間ベースの上昇率は3.12%と20年3月以来の大きさとなった。112ポイントは単なる通過点という加速で、前日の終値111.353から急騰。DXYの上昇に沿ってプログラムにより売りが執行される)ファンドの機械的な売りにNY金が1650ドル割れまで押し下げられたのは、止むなしという展開といえる。

ただし、これほどの歴史的なドル急騰の中で前日比1.5%安にとどまっているのは、今後を考える上で注目に値すると思われる。

注目のFOMCメンバー予測(ドットチャート)では、高インフレの抑制に向けて政策金利を22年末までに4.4%に引き上げるということは、年内残り11、12月の会合にて1.25%の引き上げが見込まれ、次回11月も0.75%の利上げが有力となった。ほんの1カ月前の時点では4会合連続の0.75%の引き上げはまったく想定外のこと。12月会合で0.5%引き上げられることで22年末の政策金利目標水準は4.5%となる。

ただし、これで終了ということではなく23年にも継続利上げが示されたことで、FRBは引き締め環境の持続を市場に強く意識させた。この点で、今回のドットチャートはうまく作られているというとうがち過ぎか。 いずれにしても、この夏に株式市場を中心に広がった、23年1~3月期には景気減速を受けFRBは利下げに向かうとの憶測を払しょくする意図を感じさせた。

 

容赦のない利上げで1980年代初頭に深刻な不況を招いたポール・ボルカー元FRB議長時代を彷彿とさせるもので、「われわれはやり遂げるまで継続しなければならない」(FOMC後記者会見でのパウエル議長)との決意は、今度こそ市場に浸透した。 先日ここに書いたが、インフレ対応に出遅れた中央銀行が、あわてて強めの引き締め策に転じ景気後退に陥る。経済用語でビハインド・ザ・カーブ(behind the curve)と呼ばれるが、過去に繰り返され、それゆえ市場が警戒するパターンでもある。気が付けばFRBは、まさにこの流れの中にあり、パウエル議長が教訓として掲げた1970年代に似つつある。

FRBにとって難題は、インフレの内容が賃金や家賃の上昇など基調的なものに広がっていることだ。ガソリンなどエネルギーコストが下がれば落ち着く、というものではなくなっている。過剰対応せざるを得ないわけで、議長も認めるように景気後退は避けられないだろう。

こうした中でドル指数(DXY)の上昇に沿う形でショート(空売り)を急激に膨らませているファンドだが、価格水準はすでに売られ過ぎと捉えている。何がきっかけに買戻しに入るのか。それとも下落が続き、売りの回転が利くのか。DXYが跳ねるたびに1650ドル以下、あるいは1600ドル接近から割れという下振れは見られるのだろうが、1600ドル割れには実需の買いが控えるとみられる。

反転の引き金は、インフレ指標の結果が引くのか、はたまた足元の英ポンド、英国債の波乱という国際金融マターとなるのか、さらにプーチンロシアか。反転のきっかけ待ちといえる。

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