韓衣(からころむ) 裾(すそ)に取り付き 泣く子らを
置(お)きてぞ来(き)のや 母(おも)なしにして
=巻20-4401 他田舎人大島=
衣の裾に取り付いて泣く子を置いて来てしまった。その子の母もいないのに。という意味。
作者は、国造(くにのみやつこ)小県(ちひさがた)の郡(こほり)の他田舎人大島(をさだのとねりおほしま)。
いわゆる防人である。防人は大陸からの攻撃を憂慮して、おもに東国の農村から徴兵された、九州沿岸の防衛のため設置された辺境防備の兵。
「小県(ちひさがた)の郡(こほり)」は長野県上田市の周辺をさす。
唐衣(または韓衣)は、唐風の着物のこと。
男やもめの防人が、子供らを、おそらく祖父母に預けて辺境の地に赴く、けがや病気で帰れない、ましてや帰るお金も持っていかない死出の旅であったのだ。とても悲しい歌なのである。
この万葉歌碑は千曲市上山田温泉の千曲川堤にある千曲川万葉公園(万葉橋南側)に建っている。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます