飛鳥への旅

飛鳥万葉を軸に、
古代から近代へと時空を越えた旅をします。
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万葉アルバム 穀物、いね

2011年12月23日 | 万葉アルバム(自然編)

稲搗(つ)けば 皹(かが)る我(あ)が手を 今夜(こよひ)もか
殿の若子(わくご)が取りて嘆かむ
    =巻14-3459 作者未詳=


稲を搗いてひび割れた手、この私の手を今夜もまたお屋敷の若様が手にとって撫でながら、可愛そうに 可愛そうにとおっしゃって下さることでしょうか、という意味。

「稲搗けば」当時は臼に籾を入れて杵で搗いて精米をしていた。「皹(かが)る」とは手足が「ひび割れ」すること。「殿」とは、大きなお屋敷のことで、「殿の若子」は大きなお屋敷の若様のこと。

自分のひび割れた手を恥らいながら、お屋敷の若様との逢瀬を想いみる乙女心という、ロマンティックな場面を想像することができるが、稲搗きの辛さをまぎらわせる集団の作業歌ともいわれている。それが民謡として歌い継がれ、東歌として万葉集に取り入れられたのであろう。

万葉時代のイネは赤米であるといわれている。
日本の国に稲作農耕文化が上陸したのは縄文時代の晩期で、赤米は米のルーツであり、赤飯の起源といわれている。神様へのお供え物、お祝い事として使用されていた。
赤米のほとんどが粳米(うるちまい)で、野生の稲の多くが赤米であったといわれている。

万葉集にはイネの歌は26首もある。