三代目虎真之助blog 『森から出たまこと』

「森はいのちの源」 奥三河の森から学んだこと、感じたこと、得たものを書き記しています。

ドイツ林業研修 その9の1

2013-11-04 09:18:05 | 森づくり

9月22日(日) 晴れ。

いよいよ、研修も今日が最後。

よくこういうときに、「長いようで短かった云々」という言葉がしばしば引用されるが、

「あぁ、こういうことなんだな」と実感。

 

午前中は、現場で道づくりの研修。

これまでにも何度も申し上げてるが、ドイツでは、このようにきちんと整備された道が、山のいたるところに入っている。

 

これは1年半前に開設した道。

まだ仕上げ前。一度落ち着かせてから仕上げに入る。

仕上げには、かなり粒子の細かい砕石を敷均し、ローラーで締め固める。

タイヤの溝の跡が若干つくぐらいにかなりカチカチに仕上げる。

こうして施工当初は固い路面に仕上げても、やはり雨が降れば何年か後には、路面も緩み、轍が出来、

そこが水道(みずみち)となって、路面がえぐられる。

日本の林道は多くがそういう状態にある。

 

ドイツが日本と異なるのは、そのための排水処理が徹底されているということ。

第1に、縦断勾配は2~8%以内とし、横断勾配をそれ以上とることで、雨水を路面を走らせずに、すぐに山側と谷側に流すということ。

これはできるだけ一カ所に水を集めずに、分散させることによって雨水の浸食を防ぐとともに、

路面が乾いた状態を保ちやすくする工夫である。

 

第2に、山側には50m間隔で、集水桝を設けて、暗渠によって谷側へ雨水及び沢の水を流すということ。

その際の集水桝と暗渠の作り方が特徴的だ。

桝といっても2次製品やコンクリートを用いるわけでなく、基本的に現地発生材で工夫して設ける。

そして、沢の水を一気に谷側に落としてしまうと、暗渠内が土砂で詰まったり、谷側の法面が浸食されてしまうので、

進入口と排出口が直線的にならないように、いったん桝に水をプールさせ、減速させてから谷側へ流す。

こちらもそう。

こちらは、進入口より排出口が高い位置にある。

本当はもう少し桝が大きい方が良いそうだが、岩盤が出ており施工コストを考えた上で、このサイズに決まったそうだ。

また桝の位置とサイズは、定期的に桝に溜まった土砂を排出する際に使用するバックホウのバケットのサイズを考慮するそうだ。

つまり、桝の脇にバックホウが止められて、そのままバケットですくって掻き出せることが重要とのこと。

メンテナンスにかかるコストも最初から計算されている。

暗渠の設置方法もいかにもドイツ的。

暗渠の勾配は0~‐1%とフラットもしくは逆勾配にしている。

こうすると暗渠内に土砂が溜まりやすくなってしまうのだが、そこがねらい。

そうすることで、自然環境に近い河床状況をつくり出し、生態系の維持に努めるとのこと。

もともと、林道開設時に沢を超える際に、洗い越し方式でなく暗渠を必ず用いるのも、この生態系の維持が理由。

いかにも環境先進国のドイツらしい。

また、暗渠の排水口の処理も徹底している。

下記の写真のように、現地発生材を用いて階段状の沢を人工的に設けることで、

水を減速・分散させ、谷側の法面の浸食を防いでいる。

 

お気づきのように、こうした施工はコストがかかる。

それでも、ドイツでこの方式が取り入れられているのは、「道づくりは将来への投資である」との考えからだ。

道があって初めて高性能のマシンが使用でき、高い生産性をあげられる。

確かにこれまで見てきた林業機械はいずれもホイール式であり、日本の森林作業道で使用されているクローラー式と比較すると、

圧倒的に施工スピードが違う。

 

また、道があるから人が山に気軽に入ることができ、森林整備の重要性に対する理解が進む。

現に、研修中も山中にて、レクリエーションを楽しむ多くの市民に出会った。

また、道があるから、トレーラーが現地まで材を引き取りにくることができ、木材利用が進む。

さらには、緊急時には救急車両が走行することができ、林業従事者やレクリエーションを楽しむ市民の安全が確保される。

 

このように「道」は良いことづくめだ。

 

問題はコストとのバランス。

これについては、午後からの総括WSにて、森林官のランゲ氏から具体的な試算が示された。

 

つづく。

 


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