9/21(土) 晴れ。
いよいよ今回の研修のまとめに入る。
本日は、森林官のランゲ氏より、持続可能な近自然的林業のための3つのカギについて説明を受ける。
1つ目は「路網」。
路網をシステマチックに整備することで、どの森にも継続的に入ることができ、森林の整備が行いやすくなることは明白。
この際に重要なのが、恒久的に利用可能なしっかりとした道を計画的に整備すること。
忘れてならないのは、林業機械が通ればその土壌は破壊されるということ。
そのため、やみくもに林内を重機が通ることなく、定められた道のみを走ることにより、他の林地が守られることとなる。
上記の道は、ランゲ氏が2年前に開設した林道だ。
写真の左側の山をご覧いただくと、森の中が真っ暗なのに気が付かれると思う。
間伐が遅れている証拠だ。
そこで、ランゲ氏は、この山を担当するやいなや、地主の合意形成を得て、まずこの林道を開設した。
森林再生の始まりはココからだと言わんばかりに。
この道づくりにも、日本とは大きく異なる点があるだが、それは最終日の講義のレポートの中に記すこととする。
2つ目は「間伐」
ここで大事なのは、自然のプロセスに沿って作業するということだ。
1990年頃の間伐は、劣性木を取り除く比較的強度(30%程度)の間伐が中心であったが、
ランゲ氏達は、「将来木施業」と呼ばれる、将来的に残したい木の成長を妨げる恐れのある他の優勢木を伐倒する方法を用いる。
この現場では、実際に選木を行った。
選木の基準は次の3点。
①バイタリティ(生命力のある木か?)
②クオリティ(傷等がないか?)
③間隔(他の将来木を10~12m程度離れているか?)
ただし、すべてをこの基準にあてはめて選木するわけではない。
例えば、その林内に数が少ない樹種は、多少、①に問題があっても、あえて将来木として残すこともある。
それは、そうして複数の樹種が混合する多様な森づくりを行うことで、
市場の変化にも対応できるリスクの少ない林業経営を可能にするためである。
上記の写真の緑のマーキングが将来木。
赤の斜めのマーキングが間伐する木である。
この将来木の選定は最も重要な仕事であり、山のことをよく分かっているトップの人間がやるべきであるとのこと。
ドイツでは、主に森林官がその職務を担っている。
3つ目は「野生動物のマネジメント」である。
ドイツでも日本同様に獣害はあり、ブナやモミはノロジカによく狙われるようだ。
そこで、ドイツでは、「狩猟」が林業経営に必須のものとしてとらえられている。
そのため、各山に狩猟小屋と呼ばれる、ノロジカを撃つための小屋も設けられている。
しかしながら、ただやみくもに撃つわけではない。
それよりも間伐によって光環境を多様に整えることで、ノロジカの食害以上に天然更新を行わせている。
北海道帯広市の石井林業は、狩猟を一切行わずに天然更新を実現させているそうだが、それは極めて特殊な例であり、
ドイツでは天然更新を可能にするために、狩猟によってノロジカの個体数の調整を図っているとのこと。
以上の3点を行うと、このような天然更新が活発な美しい山ができる。
この写真の森は手入れが遅れていたのだが、道を入れ、将来木間伐をし、天然更新を促したため、
20年間でこのような美しい森になったとのこと。
日本の単層林でも、20年かけて同様のことを行えば必ずできる、と力強い言葉をもらった。
もちろん、道の線形の問題、周辺の所有者の同意の問題、狩猟の担い手の問題等々、いつくかの課題はあるが、
それでも、今後の日本の森林再生に光が見えたと感じた。
この日の最後は、山の頂上まで登り、美しい夕焼けを見た。
研修も残り1日。
明日は、総括ワークショップだ。