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「東京新聞」社説 信じられる大人がそばに

2023年08月21日 | 教育・学校

「東京新聞」<社説>週のはじめに考える 2023年8月20日 

 夏になると、読み返したくなる。「スタンド・バイ・ミー」は、そんな小説です。一九八〇年代に映画化もされ、大ヒットしました。同じタイトルの主題歌を記憶している読者の方々も、多いのではないでしょうか。

 物語の舞台は、六〇年の米国の田舎町。夏休み最後の週末に、十二歳の少年四人が冒険に出ます。四十キロほども離れた森への、一泊二日の旅です。

 満ちあふれる好奇心。真っすぐな勇気。そして友情。少年たちのみずみずしい生命力に、深い感動を覚えます。

 しかし、作者スティーブン・キングが描いた別の一面に気が付かないわけにはいきません。それは、子どもたちの「敵」としての大人の姿です。

◆生きづらさから暴力に

 戦争で心を病んだり、貧困の中で酒に溺れたりして、息子に暴力をふるう父親たちが登場します。長男を偏愛するあまり、次男に無関心な両親がいます。

 幼いから簡単にだませるだろうと商品の代金を過大請求する店主や、現金を横領する教師…。著名な青春文学も、見方を変えれば大人に対する告発文のようです。

 私たちはこれを、ひと昔前の小説の中の、米国での話と、片付けることはできません。

 体や心を傷つける不適切な子育ては、英語で「マルトリートメント」と呼ばれます。「虐待」より広い意味で使われ、体罰や暴言、無視、親の不和や不在、ゲーム機やスマートフォンの安易な買い与えなども含みます。

 そうした家庭や社会の歪(ひず)みは今の日本で、子どもの不調に表れているのではないでしょうか。

 その一例が、校内暴力の激増です。二〇二一年度に暴力をふるった小学生は約三万六千人と、十年前の約五倍。低年齢化が著しく、小学一年生では約二十倍です。

 こうした暴力は、いじめや不登校などに結び付くだけではありません。

 臨床教育学を専門とする白梅学園大学の増田修治教授(65)によると、暴言や教室からの離席などと合わせて、授業を正常に行えない「学級崩壊」が各地で広がっています。それは、クラス全員の学びを阻害しています。

 「子どもたちの発達の危機だ。自分の価値観だけで動き、他人の気持ちを推し量ることのできない子どもが増えている」

 こう懸念する増田氏は、かつて小学校教師を二十八年間務め、崩壊学級を多く担当してきました。多様な親子と向き合ってきた経験から「問題行動を起こす子どもの多くが、家庭に困難さを抱えている」と指摘します。

 子どもたちの「生きづらさ」の原因は、貧困や家族の介護などさまざまです。増田氏は大学の授業で、教職を目指す学生らにこう説き続けています。

 「子どもたちはランドセルと一緒に、生活の重みを背負って学校に来ます。教師の役割は悲しみや苦しみについて共に考え、それを軽くしてあげることです」

 「クラス全員が『私は先生に一番愛されている』とそれぞれに感じた時、学級づくりが成功したと言えるんですよ」

◆人のぬくもり届けねば

 国は、子育て支援の充実を掲げて、デジタル化による学校改革も進めています。

 ただ、家庭の金銭負担を軽減したり、パソコン教材で興味を引くだけでは、子どもの不調は解消しないでしょう。

 SOSを受け止める、ぬくもりを持った人間が不可欠です。地域の人々の力を借りて、機能不全に陥る家庭や学校に質の高い支援の人材を送り届け、手厚くする。そして、生きづらさを社会全体が減らすことが必要です。

 人間への信頼を実感させ、生きる意欲を持たせてあげたい。それらを欠いたまま大人になる子が増えれば、未来の社会の根幹が揺らぐと言わざるを得ません。

 「スタンド・バイ・ミー」の作者キングの生い立ちをご存じでしょうか。二歳の時、父親が借金を残して失踪し、貧しい母子家庭で文章を書き始めました。

 この小説の中で、ある少年が言います。「子どもってのは、誰かが見守っててやらないと、なんでも失ってしまうもんだ」。キングの心からの叫びでしょう。

 スタンド・バイ・ミー、つまり「そばにいて」。子どもがなかなか言えない言葉の重みを受け止めたい。そして、身近なところに信頼できる大人がいるよ、と言える社会を築いていきたいのです。

 

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トー横キッズの背景(上)

居場所を求めて

「しんぶん赤旗」2023年8月21日

 東京都新宿区の繁華街、歌舞伎町シネシティ広場かいわい、通称「トー横」(新宿東宝ビルの横)に居場所を求めて集まる未成年たち。彼らは「トー横キッズ」と呼ばれ、トー横が売買春や薬物乱用の入り口になっているなどと報道するメディアもあります。背景には何があるのか。行政や支援団体はどう向き合っているのか。新宿で活動する支援団体の一つ、公益社団法人「日本駆け込み寺」の活動や、地方議員の取り組みから考えました。(横田和治)

 8月上旬、映画館脇の広場。観光客や通行人が行き交う中、10~20代とみられる男女6~7人ずつのグループがいくつか、壁際などに座り込んでいました。段ボールを敷いて寝転がる人も。すぐ隣にはホームレスとみられる男性の一団が、やはり段ボールを敷いて座っていました。

 歌舞伎町で20年にわたりDV相談や性売買から、金銭問題、心の相談までさまざまな問題について当事者から無料で相談を受け、解決に導いてきた公益社団法人「日本駆け込み寺」創設者の玄秀盛(げん・ひでもり)代表理事は現状についてこう話します。

生きていくため

 「居場所のない子たちが生きていくにはお金が必要です。少女はSNSを利用して性売買などせざるを得ず、それにおとなが群がります。また、少年たちはそれらのあっせんや万引き、詐欺まがいの違法行為などをして生活の糧にしています。現実逃避や多幸感を目的にオーバードーズをし、自傷行為や自殺未遂など命にも関わる事案が頻繁に起きています」

 駆け込み寺の活動に同行しました。

 日中の炎天下。駆け込み寺スタッフと地元ボランティアのパトロール兼清掃活動です。40リットルのごみ袋を何枚も台車に配備し、清掃活動をしながら町を歩きます。

 スタッフが少女にティッシュを渡しながら、「事務所に無料のギョーザ弁当あるよ」。するとトーンの高い声で「わかった、行くよー」と返し、心もとないフワフワした足取りで事務所の方に向かいます。

 18歳だという青年が、ボランティアの肩にもたれかかりながら事務所に向かう姿も。事務所の食堂ではスタッフと子どもたちが談笑する姿もありました。

 「家出した子どもたちが『トー横』に集まり始めたのは2018年ごろからと言われています」と玄代表理事が説明します。

 その後、コロナ禍を背景に家族が自宅で過ごす時間が増え虐待などが増加。家にいられない子が居場所を求めて集まるようになりました。「ここにいる」という情報が若者同士のSNSでも共有され、拍車がかかったといいます。

まずはつながり

 日本駆け込み寺が「トー横」の問題に取り組んだのはコロナ禍の22年から。行き場をなくした子たちは無償でサポートしようとするおとなを警戒しており、会話をするのにも時間がかかりました。

 「まずは彼らの居場所をきれいにするため清掃活動を始めました。そして無料で配るティッシュや水に事務所住所を記載して渡す。私たちは子ども食堂もやっているので、まずはつながって、足を運んでもらう。一緒にご飯を食べて、会話が生まれる。その中で信頼関係が生まれるんです」 (つづく)


 氣になる子がいたら声掛けしてみてください。
うるさいジジババと想われてもそこからしか「関係性」はできません。
でも、「直球」はダメですよ。
まずは天気の話などから…

 



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