MAG2NEWS 2024.06.01
by 『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~
5月27日、今夏の都知事選への立候補表明会見を行った蓮舫氏。3選を目指すとされる「女帝」小池百合子現都知事に勝利することは容易ではないとの見方もありますが、『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』等の著作で知られる辻野晃一郎さんは、小池氏から東京を解放することが重要とします。なぜそのように判断するに至ったのでしょうか。辻野さんは自身のメルマガ『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~』で今回、小池氏を政治家などにしていてはならない危険人物と見做すようになった理由を記すとともに、蓮舫氏に対する期待を綴っています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:蓮舫氏、「反自民」「非小池」を掲げて東京都知事選に立つ
プロフィール:辻野晃一郎(つじの・こういちろう)
福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。
早くも誹謗中傷も。「反自民」「非小池」を掲げて東京都知事選に立つ蓮舫氏の覚悟
前号ではX(旧ツイッター)上になりすましアカウントを作られたことを報告しました。「なりすまし」とは「嘘」「虚偽」です。最近は有名人へのなりすましによる投資セミナー詐欺が流行って社会問題化しており、誰もがそれは悪いことだと思うでしょう。実際に詐欺被害が発生しているケースであれば犯罪ですし、被害が発生していなくても、なりすましをしただけで相手の名誉棄損や肖像権の侵害にあたります。
しかしながら、「嘘」や「虚偽」で塗り固められた人物が東京都知事であり続けることに対しては、何故人々はこんなにも寛容なのでしょうか。しかもその人が自分の嘘をごまかすためにエジプトの国立カイロ大学に協力を求め、その結果軍事政権であるエジプト政府に弱みを握られてそのエージェントのような振る舞いをしているとしたら?嘘でのし上がったまま、東京都民の為の政治ではなく、自らの立身出世の為に都政を踏み台にしているとしたら?
5月27日、蓮舫氏が次期東京都知事選に立候補を表明して記者会見を行いました。前日には、大相撲夏場所で久々の大型新人力士である大の里が優勝して明るい気持ちになりましたが、蓮舫氏の記者会見を見て、東京都の上を長いこと覆い続けてきたドス黒い雲が一気に晴れるような爽快な気持ちになりました。
東京都知事に立候補するということ、さらに相手は「女帝」と呼ばれ東京都民の圧倒的な支持を得て2期に渡って君臨し続けてきた小池百合子氏ですから、まさにボロボロにされる覚悟がなければ立候補など出来ません。巷では、さっそく蓮舫氏に対する足の引っ張りや攻撃、誹謗中傷が始まっています。
公約など無視して利権政治にどっぷりと浸かる小池都知事
小池氏の、出自からして嘘で塗り固められた半生は、2020年5月に発売された石井妙子氏の『女帝 小池百合子』(文藝春秋)に詳しく書かれています。かねて小池氏にある種の胡散臭さを感じていた私は、同年7月の都知事選挙に備えて、発売と同時にこの本を入手して読みました。石井氏の綿密な取材に基づいてその本に描かれた同氏の実態はまさに驚くべきものでした。
それ以来、私はこの人は政治家などにしていてはならない危険人物と見做すようになりました。もちろん、この本だけではなく、小池氏の問題については、作家の黒木亮氏、ジャーナリストの浅川芳裕氏、弁護士の郷原信郎氏などが地道に追及して発信を続けています。加えて、今年4月には、小池氏の元最側近であった小島敏郎氏から「2020年6月に駐日エジプト大使館のフェイスブックに掲載された、小池氏のカイロ大学卒業を証明するとの声明文は、小池氏側が自作したものである」との告発がありました。また、小池氏のカイロ留学時代に同居していて『女帝 小池百合子』では仮名で登場していた北原百代氏が、この本の文庫化に合わせて実名の公開に踏み切り、あらためて実名で小池氏の嘘を告発しています。これらのことにより、今や小池氏の虚像と実像については、十分な裏付けが得られていると解釈して問題ないと思います。
そもそも小池氏は、東京都議会自民党との対決姿勢をアピールして都知事になった人物ですが、その後はすっかり変節して、今や自民党べったり、引退した森喜朗氏や二階俊博氏、裏金議員の筆頭格で党内処分や説明責任から逃げ回っている萩生田光一氏などと結託して国政復帰を画策してきました。別にもともと都政に興味があったわけではなく、都知事のポジションは政治家としての自身の延命のための退避先だったのでしょう。「都民が決める。都民と進める」とした改革路線も見せ掛けだけ、「7つのゼロ」だの「12のゼロ」などと都民に約束した公約も一切無視して、神宮外苑の再開発や築地の再開発を始め、利権政治にどっぷりと浸かっています。
さらには、2020年7月の小池氏にとっては2期目となる都知事選挙の際に、カイロ大学に協力を求めて自作の声明文を出させ、その中で学歴詐称疑惑を打ち消すと共に日本のメディアに圧力をかけました。その結果再選を果たしたとすれば、エジプトの国家権力を誘導して都知事選挙への介入を許したと解釈することができます。エジプト事情に詳しい前出の浅川氏によると、エジプト政府に借りが出来た小池氏は、その後、まるでエジプト政府から東京都に送り込まれたエージェントのような立ち位置でエジプトへの支援を続けており、教育支援やODAなどの名目でエジプトに流れた金は累計で300億円にものぼると指摘しています。
小池問題の本質は、単なる学歴詐称や私文書偽造、それによる公職選挙法違反に留まらず、外国の国家権力に、日本の首都東京の都知事という権力者が弱みを握られて利用される関係になり、そのような関係作りを小池氏自らが自分自身の保身のために行った、というところにあります。これは東京都民や日本国民への明らかな裏切り行為であり立派な政治犯罪でしょう。
詳細については、ここで私が繰り返すよりも、以下の動画や記事を参照してください。
● 【ジャーナリスト浅川芳裕氏と語る小池百合子氏学歴詐称「カイロ大学声明」の本質】郷原信郎の「日本の権力を斬る!」
● 【黒木・浅川・郷原鼎談「カイロ大声明」はジャーナリストに対する脅迫!~小池氏関与の法的責任は?】郷原信郎の「日本の権力を斬る!」
● 【小池百合子都知事 元側近の爆弾告発】小島敏郎「『私は学歴詐称工作に加担してしまった』」フルバージョン(月刊文藝春秋5月号掲載)
● 徹底研究!小池百合子「カイロ大卒」の真偽〈1〉
異常な日本政治を変える起点となる蓮舫氏のチャレンジ
ところが、このようなことを東京都民も日本国民もあまりきちんと理解していません。有名な大企業で経営幹部の立場にいるような人たちと雑談してこの話をしても、「え、そうなんですか!?」と驚く方が多く、小池都政の実態についてあまりご存じない方が多いです。それは、無理もないことで、大手メディアがほとんど報道しないからです。ジャニーズ問題で反省を口にした大手メディアでしたが、その後も各社の体質は何も変わっておらず、相変わらず権力に忖度し、自分たちの保身を優先して、本来国民が知るべきことを報じません。今回の蓮舫氏の記者会見時の質問にもありましたが、現在の都知事の定例会見は非常に閉鎖的で、小池氏にとって都合の悪い質問をする記者は締め出されているか、質問しようとしてもまったく指名されない状態が続いています。
今回、蓮舫氏が都知事選で勝利するかどうかはわかりません。人気に陰りが出ているとはいえ、前回も366万票という圧倒的な都民の支持を得て当選した小池氏が手ごわい相手であることに変わりはなく、厳しい選挙戦になるでしょう。しかしそれでも、参議院議員の立場を捨ててこの闘いに挑戦する蓮舫氏の勇気にはエールを送りたいと思います。少なくとも、強力な対抗馬が登場したことによって、小池氏に忖度する大手メディアも都知事選の動向を取り上げざるを得なくなり、小池氏の実態を知る都民が増えることは間違いないと思います。
今の日本の政治は異常です。国政においては、長年にわたって組織犯罪とも言える裏金作りを続けてきた自民党裏金議員たちが、まともに法の裁きを受けないどころか、何の反省もないまま、再発防止のための政治改革の議論にまで加わっています。犯罪者たちに犯罪を取り締まる改革など出来るわけがなく、自民党の改革案などをまともに相手にすること自体がナンセンスこの上ありません。裏金作りの手口も、安倍派方式や二階派方式に加えて、茂木方式、岸田方式などさまざま発覚していますが、この原稿を書いている傍らでも、裏金を原資として自分が代表を務める党支部に寄付し、所得税の控除を受けるという新たな手口がまた見つかっています。
都政が変われば国政にも大きな影響があります。蓮舫氏のチャレンジが、嘘と汚い金にまみれた日本の政治を浄化する一石となることを願わずにはおれませんし、微力ながらそうなるように応援していきたいと思います。
ウソで塗り固めた野心の塊のような人から東京を解放することが重要
■読者の質問に答えます!(メルマガ内Q&Aコーナー)
Q:次の東京都知事選、辻野さんはどうなると思われますか?若い人たちに今回は本当に本当に選挙に行ってほしいです
A:今号の「気になったニュースから」では次回の東京都知事選について書きましたが、まさに関連の質問をいただいておりましたので、少し補足したいと思います。
本稿で書いたようなエジプト政府を巻き込んだ政治犯罪については横に置いておいたとしても、一都民として、小池都政をこれ以上続けることはあってはならないことだと思っています。
小池氏は、1期目の就任時には「都民が決める。都民と進める」をスローガンに掲げて「都民の、都民による、都民のための都政」を標榜しました。そして2期目の就任時には「東京の未来は、都民と決める」として「東京大改革2.0」などを掲げました。しかし、過去8年間の小池都政を振り返ってみて感じる事は、都民ファーストの都政ではなく、百合子ファーストの都政に終始した、ということだけです。
もともと女性初の総理大臣になることが目標の彼女にとっては、冷や飯を食わされた安倍政権時代の一時避難先として東京都知事を選択したに過ぎません。東京都に思い入れがあるわけでも、都政に関心があるわけでも、都民のことを思っているわけでもありません。やってきたことはすべて自分の為の政治的なパフォーマンスだったと断じて構わないと思います。
もともと反自民で都民の圧倒的な支持を得ておきながら、今では自公べったりで、やっていることは自民党の利権政治の東京版です。「伐採女帝」のあだ名も付きましたが、東京五輪利権や、神宮外苑、葛西臨海公園、日比谷公園、築地市場の再開発など、旧態依然としたゼネコン利権などとべったりであることは明白です。憩いの場が無くなり、歴史的価値のある建造物が壊されてしまうことに反対する都民の声などにはまったく聞く耳を持っていません。神宮外苑の再開発では、亡くなった坂本龍一さんの最期の魂の訴えを軽くあしらったことも記憶に新しいと思います。
まずはこの嘘で塗り固めた野心の塊のような人から東京都を解放することが重要で、その為には強力な対抗馬が必要でしたが、蓮舫氏はまさに最適だと思います。もちろん、激しい選挙戦になるでしょうし、蓮舫氏が当選するかどうかはわかりません。また当選した後、蓮舫氏がどのような都政を行うのかについても未知数です。しかしそれでも、小池都政はこれで終わりにすることが東京都の為であり、日本の為であると確信しています。
今の日本の政治は異常です。
そして、それを支持するインフルエンサーが少なくないということもまたとても異常に想われます。
「批判ばかり」と言いますが、まずは「批判」から始まるのではないでしょうか。
まさに「批判」のための「批判」に陥っているのはどちらでしょうか?