「しんぶん赤旗」2024年6月6日
石原D「巨大な暴力に負けない人たち」
放送に関わる多様な個人でつくる「放送人の会」が毎年、優れた番組を顕彰する「放送人グランプリ2024」の贈賞式が5月下旬、東京都内で行われました。(和田肇)
大賞はNHKの「“冤罪(えんざい)”の深層」シリーズ制作チームでした。
深い取材と構成力
番組は、軍事転用が可能な機械を中国に不正輸出したとして民間企業大川原化工機(横浜市)の3人が逮捕・起訴されたものの、実は警視庁公安部によるでっち上げだったという事実を内部告発文書や証言によって明らかにしました。組織の保全を図る公安と官僚たちの保身が冤罪を生んだ構図が浮き彫りになります。昨年9月から今年2月にかけてNHKスペシャルやETV特集で3作放送されました。
授賞理由として「期待にたがわぬ深い取材と構成力で、深層に行き当たったのが成功のカギだった。今の日本は何事も真相がはっきりしない。偉い人に隠されてしまう。番組は現実に向き合い、人々が快哉(かいさい)を叫ぶぐらいの内容を与えた」と主催者が説明しました。
権力に問いは大切
受賞した石原大史ディレクターは「協力者の力があって初めてできた番組だ。化工機の皆さんは、冤罪という巨大な暴力に負けることなく声をあげ続けている。この事件は東京地裁で勝訴したが、国側は控訴した。引き続き取材していきたい」と関係者に感謝。
取材に携わった影山遥平記者は「記者クラブという権力に近い場所にいる記者として、権力に問いに行くこと自体が大切だ」。牧野大輝記者は「今回の公安部のように当局が世の中に知られたくない情報を深く取材し、表に出すことが記者に求められる仕事だ」と心構えを語りました。
優秀賞「フェンス」
優秀賞は、NNNドキュメント’23「いろめがね~部落と差別」(山口放送)▽「連続ドラマW フェンス」(WOWOW)▽連続テレビ小説「らんまん」(NHK)▽「関東大震災から100年…112歳の証言と未来への提言」(ニッポン放送)の4作品が受賞。
中でも野木亜紀子脚本、松本佳奈監督の「フェンス」(全5回)は、米軍基地の島・沖縄の現実を2人の女性の視点で描いた社会派ドラマの傑作として高く評価されました。
企画提案した北野拓プロデューサーは「もともとNHK沖縄で米軍犯罪、性犯罪の取材をしていた。放送してもなかなか届かず、いつかドラマにしたいと考えていた。各社を回り奇跡的にWOWOWに拾ってもらった。沖縄を突き詰めることが、世界に届くんだという気持ちだ」と実現に至る思いを語りました。
長年、地方で制作を続けた宮路りかディレクター(長崎放送)が特別賞に選ばれました。「九州にはドキュメンタリーの俊英が何人もいる。木村栄文さんもその一人。栄文さんに認めてもらいたいといろんな番組を作った。賞を励みに番組作りの面白さ、苦しさを後輩に伝えていきたい」と決意を新たにしていました。
特別功労賞として松尾羊一(故人)と浜村淳が選ばれました。
大山勝美賞は家冨Pと松本D
放送人の会2代目会長の名を冠し、若く優れたプロデューサー・ディレクターを表彰する大山勝美賞。今年は家冨未央プロデューサー(NHKエンタープライズ)と松本佳奈ディレクター(フリー)が選ばれました。
「神の子はつぶやく」「光秀のスマホ」などを手掛けた家冨プロデューサー。北海道の酪農家の取材が原点だと振り返り「新しい取材でドラマを生み出すことを、諦めず、怠けず、やっていきたい」と意気込みました。
「春になったら」(カンテレ)、「フェンス」(WOWOW)を演出した松本ディレクター。「監督とは答えのある仕事ではない。いろんな才能の人と一緒にモノを作る楽しさがドラマのだいご味だ。これからもすてきな人たちと作品を作っていきたい」
政権「広報」としてのNHKニュースはひどいものがあるがNHKの各局員の努力はすさまじいものがある。応援していきたいと思う。
園のようす。
亜麻が咲きだした。
朝、綺麗だなと思い午後に写真を撮りに行ったらすでに落ちていた。