・妄想ビジョンによる「僕の時間、川村の時間」。二人ともなぜあのポージング。とくに川村(笑)。
・野木の話の振り方は例によって唐突にして過激。そしてその展開を完璧に読んでいる須藤。これって名コンビ?
・昨夜の「白い女」登場を川村が仕掛けたドッキリじゃないかという野木。
しかし見知らぬ女(しかも可愛い)がいきなり入ってきたら「驚く」のはわかるが、「どうにもこうにもならなくなる」ってのはどうなのか(笑)。いかに自分たちが女に免疫がないか告白してるようなもんだよなあ。
・ハーレーに傷をつけられた場合の川村の反応を野木が想像するのだが・・・何そのハードボイルド。
この場面に限らないが、野木の妄想力は断然須藤を上まわってる気がする。
・不気味に笑いながらデータの自爆テロに走る野木。わけわからん事で一人暴走し一人冷静に返る野木といいように振り回されっぱなしの須藤のあわて方が可笑しい。
多くがこの二人の会話劇と言ってよいこの作品、表情から声のトーンに至るまでの二人のキャラの立ち方が物語を支えている。「支えている」という表現の芯の通った響きがおよそ似合わない作品ですが(笑)。
・「ゲームつけっぱなしでこいつらずっとセックスしてたんじゃねえの!?」 発言の根拠が全くわからない(笑)。
「わざわざセーブする?」という須藤の疑問に対する「ゲームをセーブすることだけは忘れてねえんだよ」という回答も無理やりすぎて。
・「僕は少し怖くなった。黒い妄想がどんどんとエスカレートしてゆく自分に」のナレーションを受けて、妄想の中で「白い女」にこけしでせまる須藤がどんどんアップになりそのまま暗転。なるほど黒い。
第4章
・カウンターで化粧するおばちゃん(浅見千代子さん)。ほとんど台詞もないのに、パーマヘアと無表情の白い顔は大仏様のごときインパクト。
・川村に話しかける須藤の声の小さいこと。そして「すみません」を連発するキョドりっぷり。本人も認めるとおり、男として、というか人として何かもう最初から完全に負けている。
長身痩躯のモデル体型な川村と並ぶと須藤がいかにももっさりと冴えなく見えてくる。
公式サイトの壁紙でメインキャスト4人で並んでいるところや、セルDVDのメイキングでじゃれあってる時には全然見劣りしないのに。
以前こちらでも書きましたが、メイクや衣装は同じでも中の人格次第で別人のように違って見える勝地くんに改めて感心したものでした。
・エプロンをつける須藤。左右のひもが捻じれてますが、これはキャラ演出としてわざとやってるんでしょうね。
メイキングで「わざと服がよれるようにリュックしょったりしてる」(概要)と語ってましたし。
・川村は一応一つ年上の須藤にそれは横柄。野木は川村が彼女を使って自分たちにドッキリを仕掛けたと勘ぐってたけど、ドッキリ仕掛ける以前に彼らのことなど全く眼中になさそうだ。
しかし何故彼女を連れてくるかな。「白い女」だって須藤とバックルームに二人きりになる時間があるんじゃ気詰まりだろうに。それだけ一緒にいたいってことですかね。
・ほぼ初対面の女の子に持ち出す話題が「ガンダム好きですか」→「ザクってわかります?」。
前回、須藤・野木はいわゆるオタクじゃないと書いたんですが、とっさにガンダムしか出ないあたりやっぱり微オタですかね(笑)。まあ美少女アニメのネタを振らなかっただけマシというものでしょうか。
・妄想の中でソファに押し倒した?「白い女」に迫る須藤が「マジでヤリたそうな顔」をしていてちょっとドキッとした。一種色っぽいというかエロいというか。
通常勝地くんが演じる役は本人の人間性を反映してか、時に透明な少年の色気、稀に男の色気を感じさせはしても決していやらしくはならない。
しかし『ソウルトレイン』では、その透明感やさわやかさがぎりぎりまで抑えられていて、結果須藤くんには他の役では見られなかったたぐいのエロティシズム―ムッツリスケベ感が備わったように思います。
ちなみに2007年夏の舞台『犬顔家の一族の陰謀』で演じたさわやか少年・野見山玉男も根は結構なエロガキでしたが、玉男の場合「さわやかじゃないことがしたーい!」と晴れやかに叫んでしまうほどにさわやかなスケベだったので、ムッツリ感もエロティシズムも全然でした。
・須藤に笑顔で話しかけてくる「白い女」のカットは、距離感からすると須藤の目線で撮られている。
ゆえに彼女の仕草のいちいちや襟足、スカートから伸びる足などを舐めるような映像の流れが何やらエロ。
・「会話のボールがピンポン玉のような軽やかさとスピードで跳ねていた!」
単に盛り上げ上手な彼女の言葉に「そうっすね」とドモり気味にうなづいてるだけなのだが。これでも女性と話した中で最も中身のある会話なんだな・・・。
・落とした飴を拾う「白い女」を見つめる須藤のナレーション。切れ切れな言葉の羅列→喘ぎ→「ダメだ。もうパンパンだ~」という流れがエロ全開。声がかすれ気味なのも何だか色っぽい。
その直後机に頭をぶつけてうめくところや「ちょっとコンビニ言ってきます」という台詞のトーンに表れた必死さ・・・。一連の情けない演技に、改めて「上手いなあ」と思ったものでした。
・カウンターで川村がなんと洋書を読んでいる。意外にインテリ。
しかもイケメンでスタイル抜群でハーレー乗ってて喧嘩も強い――これで金回りがよかったら無敵ですね。
・コンビニの立ち読みシーンで原作者の石原まこちん先生が登場。まこちん先生曰く須藤を演じる勝地くんを見て「(顔の造作は)全く違うのに、『オレがいる』と感じた」そうです。
・憑かれたように話し続けるリストラ親父(田口トモロヲさん)。目付きといい突然激昂するところといい実にヤバそうな感じ。
わけわからん薀蓄につきあわされる須藤とバックルームで楽しげに話す二人のコントラストが楽しいというか悲しいというか。
第5章
・前章のエロモードから一転して純情路線に妄想が転換。
しかし自分で押し倒して?おいて「自分を大切にしてほしい」もないもんだ。台詞のいかにもな陳腐さも須藤らしいというか。
・「名前は美穂」に始まるやたら具体的かつ清純な妄想。妄想ビジョンの全てにソフトフォーカスがかかってるあたりが夢心地。
・原作ではこの第5章に相当するあたりから何度か須藤の家庭が登場するのですが、DVDではそこの部分―「親不孝息子・須藤」をすっぱり切って、「ダメーなフリーター・須藤」にキャラの見せ方を限定している。
それもまた原作より湿り気のない、ポップな青春ムービーに仕上げるうえで大きかったように思います。
・自転車でソウルトレインに向かう場面はバックルームの「白い女」同様須藤目線で撮られている。恋する男の目に映る街はいつもより輝いている?
(つづく)