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俳優・勝地涼くんのこと。

『さとうきび畑の唄』(2)-2 (注・ネタバレしてます) 

2007-01-30 00:28:57 | さとうきび畑の唄
・疎開先に家族を訪ねてゆく昇がわざと俯いて顔を隠すようにしてる、そっと近付いてびっくりさせようとしてるのがお茶目。やはりあの父の息子かな(笑)。

・昇が出した遺書を見たとたんにそれまでの陽気さが一変し、辛そうな表情で固まる幸一。
さらに子供たちから非国民呼ばわりされ、ちょっと悲しげに首を振ってから泣き笑いのような優しい表情で美枝に語りかける。さんまさん上手いなあ。

・父の思い出話に「知りません」とちょっと照れたように微笑む美枝。その恥じらい方が昭和の少女らしくて可愛らしい。

・父の話を聞きながら落涙する昇。勝地くんの泣きの演技を見たのはこれが最初でしたが、正直度肝を抜かれました。
厳しい表情は動かさないまま、次第に両目に涙が盛り上がってきて、臨界点を越えたところで自然にぼろぼろと零れ落ちる。
涙を落とすためにまばたきするとか軽く目を伏せるとか一切なし。ずっと父を凝視したまま。
最後のほうでやっと目をしばたたきますが、これは大きな涙の粒が睫毛に引っ掛かってるのが鬱陶しかったんでしょう。涙の量が多いからできるんでしょうね。
そしてこれだけ涙を流しているのに鼻水が出ない。こんなに「綺麗」な泣きの芝居を見たのは初めてでした
(鼻水出ないのは体質なのかと思ったんですが、2006年4月の舞台『父帰る』(未見)では普通に出てたようなので、たまたまですかね)。
この場面、語りかけるさんまさんの方も涙ながら(こちらは鼻水も流しながら)の大熱演でした。
実はこの時左目のコンタクトレンズが涙で流れてしまったそうですが、ファンの方のブログなどで読むまで全然気づかなかった。
そのつもりで見ると確かにコンタクトが浮き上がってる。上で書いた睫毛に引っ掛かった涙も実はコンタクト?
コメンタリーを聞くとディレクターも気づいてたのに、それでもあえて撮り直さなかったんですね。あんな演技を見せられちゃあ無理もないです
(←2006年11月に勝地くんが『踊る踊る!さんま御殿SP』に出演した際、さんまさんが「勝地が両目からコンタクト落としたせいで長いシーン撮り直しになった」と言ってましたが、これは話を面白くするための誇張なのか、「最初両目ともコンタクト外れて撮り直し、また左目のコンタクトが外れたけどそこまで目立たないしOKにした」のが真相なのか、どっちなんでしょ?)。  

・川平くんをかばって切れた電線を修理しに出てゆく昇。
登場場面に続いて、昇が川平くんをかばうシーンを反復することで、最後の特攻に向かう場面の説得力を強化している。
臆病でいじめられっこ気質の川平くんまで通信兵に志願したのは、昇に誘われたのか、昇と離れるのが心細くて自主的にくっついていったのか。後者のような気がします。

・夫の死の衝撃を胸に子供たちに最後の「授業」を行う紀子。
仲間さんは実際に沖縄出身ということもあってか、気丈で健気な紀子を終始好演されていましたが、この場面は特に入魂の演技。
コメンタリーもこの場面と昇の特攻のくだりでは(演技に見入ってしまって)すっかり言葉少なになっていました。

・上官の言葉尻をとらえてとっさに頓知を働かせ一般人を救った幸一。彼のお笑い体質―頭の回転の速さと周囲を乗せる勢いがこんな形で役に立った。
町会長のにっこりした表情で、彼が幸一を見直したのがわかる。

・美枝と吉岡(オダギリジョーさん)が、今にも子供が生まれそうな美知子を診てやってほしいと軍医に頼むのだが、お産は病気ではないし、高齢出産で栄養・衛生条件も良くないとは言え、既に何人も出産経験のある美知子なら一人でももうちょっと何とかできたんじゃないかなあ。

・自分が母一人子一人であること、私生児であることを告白する吉岡。
詳しい事情は不明ですが、母親をふしだらな女とみなさず大事にしていることと、幼時から生活苦を強いられたろうに帝大に通えるまでになった意志の強さがわかります。
苦労に負けず自分を育ててくれた母を間近で見ているからこそ強い女性に惹かれるのでしょうね。
『風と共に去りぬ』に引っ掛けての二人の婉曲な「告白」は奥床しく、かつちょっと洒落ていて好きな場面です。戦後美枝は『風と共に去りぬ』を一人見たのでしょうか・・・。

・吉岡の戦死。少し後の昇の壮絶な死に様と対照的なあっさりした死は戦場の現実を感じさせる。
幸一が、彼を娘と妻の恩人だと知らぬまま「立派な人やった」と誉めるのが切ない。

・町会長が絶命するシーンは、ヒーローでもなんでもない、ごく当たり前の市井の人の死だけにショッキング。
彼が撃たれたところで幸一と一緒に「嘘やろー!」と叫びたくなった視聴者も多かったのでは。

・海辺の黒焦げ死体の一つのそばにコードの束?があって、思わず昇の死骸かと思ってしまった。そのそばを通りかかった時に幸一が一瞬足を止めるのもそれっぽいし。
何を意図した演出だったのだろう?結局すぐ後のシーンで昇が出てくるので、昇が死んだとミスリードする意味もないし・・・?

・相変わらずふざけてばかりの父に「どうしてこんな時に冗談を言えるんですか」と問う昇。けれど哀しげな響きを帯びた柔らかい口調は、父を不謹慎だと責めているようではない。
むしろ戦争の実体を知っていく中で「神国日本」への無邪気な信仰を突き崩され心の拠り所を失いつつある少年が、悲惨な環境にまるで負けていない父の揺るがなさに自分の及ばぬ何かを感じ、父を支えるものが何なのか答えを見出そうとしているように思えます。

・「人が笑うと、優しくなるんです。幸せな気持ちになるんですよ」。これまで単なる人の好い冗談好きのおじさんに見えた幸一の器の大きさを一言で表した台詞。

・自分から別れを促しながら、父の後姿を見送りつつ数歩前に歩いてしまう昇。
「お前に、負けん気大賞あっげーる」の台詞にようやく見せる柔らかい微笑みが印象的です。

(つづく)

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