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俳優・勝地涼くんのこと。

『さとうきび畑の唄』(2)-1 (注・ネタバレしてます)

2007-01-26 22:48:58 | さとうきび畑の唄
・学校の式典で森山良子さんが弾き語りで『さとうきび畑』を歌う。ただストーリーのバックに主題歌を流すのでなく森山さんご本人に登場してもらうことで、歌の重み・作品とのシンクロ度が増している。
歌のテーマから言って実際にこうした式典に呼ばれて歌うこともありそうなのでシーンとしても自然だし。
式典に親でなく祖母が出席しているのは、両親は仕事が忙しくて子供を放置、という家庭環境なのだろうか。

・幸子(黒木瞳さん)の孫娘(上戸彩さん)登場。部屋に何重にも鍵を掛けているところからすると引きこもりなのか?
それにしては髪や爪などお洒落で身綺麗。何て説得して沖縄まで連れ出したのだろう?

・さとうきび畑を走る勇(坂口憲二さん)と紀子(仲間由紀恵さん)。追いかけっこからプロポーズというベタベタかつ爽やかなシーンのバックに「さとうきび畑の唄」のタイトルが浮かぶ。
物語の最初がごく平和な、幸せいっぱいの場面で始まることが後の展開の哀しさを際立たせる。
この先彼らの結婚関連のイベントごとに戦争の影がひたひたと忍び寄ってきます。

・平山写真館。表情の固いお客さんを笑わせようと家族の話を面白おかしく話して聞かせる幸一(明石家さんまさん)。
平山一家の面々を紹介しつつ、人の笑顔を見るのが大好きで冗談ばかり言っている幸一の人柄もスムーズにわかるようになっています。
お客さん役の女優さん、綺麗な方だなと思ってたら加山雄三さんの娘さんなのですねー。驚き。

・昇(勝地くん)と美枝(上戸さん)登場。瞬間、「うわあ綺麗な男の子!」と思ってしまった(笑)。なまじ髪型でごまかせない分顔立ちの整い方が際立ってるというか。学帽で坊主頭が隠れてるのも相乗効果。
上戸さんも冒頭とはうって代わって明るくしっかり者の優等生の顔になっているのがさすがです。

・昇が友達の川平くん(尾上寛之くん)をかばって上級生と喧嘩をしたエピソード。昇の正義感の強さ、友達のためなら目上の者にも向かってゆく勇気が登場時点から示されています。

・勇と紀子が結婚の許可をもらった直後、昇がカメラで二人の写真を撮る。
手馴れた動作、「兄さん」と声をかけるだけで「写真を撮るよ」といちいち断らないのは、普段から何かイベントがあった時にはこうしてシャッターを切っていることをうかがわせます。
後の「お父さんの写真館を継ぐのが夢」という告白の伏線ですね。

・勇と紀子が大学の先輩後輩という設定。当時沖縄には大学がなかったそうなので、二人とも海を越えて入った大学で知り合った、ということなんですかね。
しかし当時いわゆる共学の大学はあったのか。ごく一部の大学が例外的に女性を受け入れる例はあったらしいですが、普通女性は行くなら女子大でしょう。
無理を押して「大学の先輩後輩」設定にしたのは、勇は役所勤め、紀子は小学校の先生で就職後は接点がなさそうだったからでしょうか・・・。

・「紀子が英語が得意」という設定がここで登場。のちの「Do you kill me?」の伏線。

・ラジオが日米開戦を告げる。「お父さん、どうしましょう」という勇の途方にくれたような声に、幸せから急転直下の大事件に対するショックがよく表れています。

・兄弟喧嘩。「お前は学校で教えられたことを信じているだけだ」という勇の声が苦渋に満ちている。
一方「兄さんはそれでも日本人か!」の台詞に、昇の典型的軍国少年ぶりが表れています。
勝地くんは台詞が明瞭かつよく通る声をしてるので、昭和初期の凛とした少年にはぴったりですね。
その一方で「ぼくは子供じゃない」と抗弁する時の語尾が拗ねた感じで子供っぽいのも上手い。放送分ではここのシーンがカットされたそうで残念。

・幸一の昔語り。新たに家族になることが決まったばかりの紀子を聞き役にすることで家族史を語る必然性を持たせている。
ここで幸一・美知子(黒木瞳さん)夫婦が大阪から駆け落ちしてきた事が明かされる。幸一がなぜ関西弁なのかの理由づけ。ついでに平山一家が誰も沖縄語を使わないことの理由づけにもなっている。
子供たちは沖縄生まれなんだから本来沖縄言葉を話しそうなものですが(美枝は時々イントネーションがそれっぽい)・・・まあ役者さんたちが方言に気を取られて演技に集中できないよりいいか。
しかし神戸のお嬢さんだった美知子がなぜわざわざ大阪へ写真を撮りに来るのか。一度ならず何度も。
「初めて会った時からお父さんのことが大好きだった」と言っていたから、無理を押して通って来てたんでしょうか。

・窓の下を通る歩兵達の軍靴の音に不安な顔を見せる一同の中、一人昇だけが「○○師団だ!」(正確に聞き取れなかった)と声を弾ませているのが印象的。
次のカットで窓の下を見下ろす時も笑顔だし。後には軍国少女な言動を見せる美枝もこの頃は軍靴の音にまず不安を覚えています。

・幸子の語りによるナレーションが「春子姉さん」と言った時、「春子の下には健しかいないはず、まさか性転換!?」などと途轍もなくアホな事を考えてしまった(笑)。
美知子に子供が出来た場面で「ああそういうことか」とホッとしました。

・勇あての赤紙を受け取った幸一の表情が、驚き・不安・悲しみなどさまざまな感情を映している。
陽気に踊る勇のカットが挿入されるのも、幸一の辛さをより伝えてくれる。

・出征する勇を見送る。実は出征兵士の多くはCGだとか、本当は横浜でのロケだとか、美知子と健(我妻泰煕くん)がいないのはスケジュールの都合だったとかの裏話(DVDの副音声で聞けます)がいっぱいのシーン。
勇から「皆を頼む」と言われて「はい」と答える昇。精悍な印象の強い彼が、この時は実に少年らしい無邪気な笑顔を見せています。一方で兄を呼びとめ敬礼で送るシーンはやはり凛々しいのですが。
勇役の坂口さんも本当の軍人さんのように軍服姿が決まっていました。
そして紀子と見つめ合う様子には、言葉なしでも通じ合える、本当の夫婦のような信頼関係を感じました。

・幸一が冗談をいいつつ写真を取り出す時、紀子も含めた皆が幸一の方に笑顔を向けているのに、昇だけは真顔で兄を見つめている。
バリバリの軍国少年である昇にとって、まさに戦場に赴こうとする兄は英雄として映っているのでしょう(先に「それでも日本人か!」と罵倒したぶん余計に)。
自分もいずれ国のために死んで靖国神社に行くつもりなだけに、兄も戦場で散る―これが今生の別れになる―ものとして、その姿を目に焼き付けようとしているようでもあります。

・夕飯の席で乏しいおかずに皆がいっせいに箸を出す場面で、紀子だけ箸を出すのが遅い。
そこに嫁としての遠慮が見えて、疎開先での平山一家最後の夜の場でコメンタリーが指摘していたように、彼女だけ血のつながった家族ではないことがよく表れている。

・「この身は天皇陛下に捧げたものです」が微妙に棒読みっぽいのはやはり現代っ子には理解しにくい感覚だからか、あるいは勇に言われたように「学校で教えられたことを信じているだけ」の、教育に「洗脳」された感じを出したものでしょうか。

・美知子の妊娠。最初自分に子供が出来たと勘違いされた紀子のびっくりした顔が可愛い。
「この前のやつです」「またやりますー!」はさんまさんのアドリブでしょうか(笑)。
美知子が幸一をはたくところに初々しさと夫婦の睦まじさが表れていて微笑ましい。しかしこの時代にオープンな家庭だなあ。

・美枝たちが初めて米軍機に遭遇する場面で、飛び去る飛行機の画像が白黒になり、当時のドキュメンタリー映像(当然白黒)につながって行く流れが自然で良い。

・平山家炎上。「お父さーん!」と叫び続ける春子(大平奈津美ちゃん)の名演技が光る場面。
自分を案じて涙する妻子の横でふざける幸一父さん、冗談きついっす!どんな状況でもつい笑いを取りに行ってしまう人っていますねえ。
ここでちょっと和んだ分、燃え落ちる写真館を振り返る幸一の静かな無念の表情が際立つんですが。
裸一貫、一代で築いてきたものが瓦礫になって・・・こういうのは男のほうがこたえるだろうなあ。 

                                            (つづく)

 

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