まだまだしばらくは暑い夏が続くのですが、手元にはもう9月刊行予定の文庫新刊の一覧が届きました。
その中から例によって、個人的に気になる書目をピックアップしてご紹介していこうと思うのですが、9月刊行予定にはあまり気になる本が見当たりませんでした。なので、今回は8月に刊行される文庫以外の気になる単行本も、いくつかご紹介させていただくことにいたします。
9月刊行予定の文庫にはあまり気になる本が見当たらなかった、と申しましても、それはあくまでもノンフィクションを主たる関心事にしているわたくし個人にとっては、という意味にすぎません。9月にも、各社から多彩な新刊が刊行されますので、本屋さんの店頭や出版社のHPで、ラインナップをご確認いただくことをお勧めしたいと思います。
刊行データについては、書店向けに取次会社が発行している情報誌『日販速報』の8月11日号の付録である、9月刊行の文庫新刊ラインナップ一覧などに準拠いたしました。発売日は首都圏基準ですので、地方では1~2日程度のタイムラグがあります。また、書名や発売予定は変更になることもあります。内容紹介については、「『BOOK』データベース」などを参考にさせていただきました。
『ロッパ食談 完全版』 (古川緑波著、河出文庫、4日発売)
エノケンこと榎本健一とともに「エノケン・ロッパ」の一時代を築いた名喜劇役者にして、エッセイストとしても健筆をふるった古川緑波が、1951年創刊の食冊子『あまカラ』に連載した「ロッパ食談」を完全収録。この連載が本にまとまるのは1955年の単行本以来、しかも完全収録ということで、今回の文庫化はなかなか貴重な機会なのではないでしょうか。
『古代エジプト 失われた世界の解読』 (笈川博一著、講談社学術文庫、10日発売)
ヒエログリフ(神聖文字)、スフィンクス、死者の書•••。どのような国土にどのような人々が、どのように暮らしていたのか。2700年余り、31王朝の歴史を数少ない資料を丹念に解読することでひもとき、その死生観、宗教、言語と文字、文化などを概観する。
もっとも知られている古代文明でありながら、その実よくわかっていないことも多い古代エジプトのことを、いろいろと教えてくれる一冊のようですね。
『ワケありな映画』 (沢辺有司著、彩図社文庫、中旬)
爆破予告があり上映中止になった『ブラック・サンデー』、戸塚ヨットスクール事件で関係者が逮捕されオクラ入りになった『スパルタの海』、公開直後に監督の妻と子供が殺された『ローズマリーの赤ちゃん』などなど、映画そのものよりも裏側のトラブルが目を引く、古今東西の「ワケありな映画」を46本紹介。
映画そのものを観る上で知る必要があることではないのかもしれませんが、さまざまなトラブルやスキャンダルを通して、映画と人間、そして社会との関わりが見えてくる•••かもしれない、そんな一冊のようであります。
『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』 (角幡唯介著、集英社文庫、19日発売)
1845年、ジョン・フランクリン率いる129人の北西航路探検隊がイギリスから出港するが、その後消息を絶ち全員が死亡したものとされていた。しかしその中に、アグルーカと呼ばれる生き残りがいたという話が。著者は探検隊の足跡を追うべく、1600キロに及ぶ壮絶なる徒歩行へ•••。
大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した『空白の五マイル』や、『雪男は向こうからやってきた』(ともに集英社文庫)などで知られる探検ノンフィクションの旗手が放った力作。これもかなり面白そうですね。
『ポアンカレ予想を解いた数学者』 (ドナル・オシア著、糸川洋訳、新潮文庫、27日発売)
位相幾何学における難問であった「ポアンカレ予想」。それを解いていったのは、数多の数学者たちにより連綿と続けられた数学研究によって成し遂げられていった•••。位相幾何学の歴史的側面とポアンカレ予想の解決の道程を平易な語り口で綴った数学ノンフィクション。
新潮文庫で好評刊行中のシリーズ「サイエンス&ヒストリーコレクション」の1点としての文庫化と思われます。同シリーズの『フェルマーの最終定理』(サイモン・シン著)や『ケプラー予想』(ジョージ・G・スピーロ著)と共に読むのも面白いかも、ですね。
『江戸の温泉三昧』 (鈴木一夫著、中公文庫、20日発売)
百姓、町人から大名まで、さまざまな階層の人びとがレジャーとしての温泉旅行や湯治を楽しめるようになった江戸時代。温泉旅行の費用はいくらかかったのか、旅館の施設やサービスの実態はどうだったのか、湯治場とはどんな場所だったのか、などの豊富な実例を当時の温泉旅行者の書いた文章から引きつつ、江戸の温泉三昧の世界を描いた一冊。これはなかなか興味深そうで、9月刊行予定の文庫ではこれが一番楽しみであります。
9月刊行予定の文庫新刊からのピックアップは以上です。以下は、8月刊行予定の単行本から、これまた個人的に気になるものを5冊ピックアップしてご紹介いたします。内容紹介は、主に『日販速報』から引用いたしました。
『禁忌習俗事典』 (柳田国男著、河出書房新社、11日発売)
「タブーに関する言葉をジャンル別に網羅し、徹底解説。全集未収録の超貴重な本を、新字新仮名の読みやすい形で復刊。秀逸な日本人論」という本書、そのテーマゆえに全集に未収録だったのでありましょうか。いずれにせよ、なんだか面白そうな一冊でありますね。タブーに関する言葉から、日本と日本人の真の姿が垣間見えるのでしょうか。そしてそれは、現代にも通じるものがあるのでしょうか。
『宮本常一 写真を撮る民俗学者』 (石川直樹・須藤功ほか著、平凡社コロナ・ブックス、8月20日発売)
こちらもまた民俗学がらみの本でありますが•••。「宮本の撮った写真を記録としての意義とともに優れた写真表現として捉えなおし、旅をそして日本を“写真に撮る”ことの意味を探る」とのこと。宮本常一が数多くの写真を撮っていたことは存じておりましたが、それらを「写真表現」として見直してみるという試みは面白いものがありそうですね。
『笑劇全集』 (井上ひさし著、河出書房新社、8月22日発売)
演芸ブームの一翼を担い活躍していた、三波伸介、戸塚睦夫、そして伊東四朗の3人による「てんぷくトリオ」。彼らのために井上ひさしさんが書いたコント台本、156本をすべて網羅し収録した決定版です。
てんぷくトリオに書いた井上さんの台本は、1976年に講談社文庫で『井上ひさし笑劇全集』上・下として刊行されたことがあります(これはわたくしの手元にあります)。そちらの収録本数は80本でしたが、今回はその2倍近くの156本。井上ひさし流の「笑い」の原点が詰まった保存版、これもまた手元に置きたいですねえ。
『浮浪児1945 戦争が生んだ子供たち』 (石井光太著、新潮社、8月12日発売)
「終戦直後、焼け跡となった東京は、身寄りのない子供たちで溢れていたーー歴史から“消え去った”彼らを資料と証言から追う、問題作」。これは雑誌『新潮45』連載中から、ぜひ単行本でまとめて読みたいと思っていたノンフィクションであります。これは買いですね。
『文化昆虫学事始め』 (三橋淳・小西正泰編、創森社、8月21日発売)
「ヒトと虫の関わりの深さを民俗、文芸、美術工芸、昆虫食、音楽、映画などの領域から興味深く解説。文化昆虫学の意義を紹介」とのこと。生物学、生態学的な側面のほかに、近年は「昆虫食」の側面からも注目を浴びている虫たちですが、幅広い文化的な側面から昆虫との関わりを繙いていくということで、かなり惹きつけられるものがある本ですね。
その中から例によって、個人的に気になる書目をピックアップしてご紹介していこうと思うのですが、9月刊行予定にはあまり気になる本が見当たりませんでした。なので、今回は8月に刊行される文庫以外の気になる単行本も、いくつかご紹介させていただくことにいたします。
9月刊行予定の文庫にはあまり気になる本が見当たらなかった、と申しましても、それはあくまでもノンフィクションを主たる関心事にしているわたくし個人にとっては、という意味にすぎません。9月にも、各社から多彩な新刊が刊行されますので、本屋さんの店頭や出版社のHPで、ラインナップをご確認いただくことをお勧めしたいと思います。
刊行データについては、書店向けに取次会社が発行している情報誌『日販速報』の8月11日号の付録である、9月刊行の文庫新刊ラインナップ一覧などに準拠いたしました。発売日は首都圏基準ですので、地方では1~2日程度のタイムラグがあります。また、書名や発売予定は変更になることもあります。内容紹介については、「『BOOK』データベース」などを参考にさせていただきました。
『ロッパ食談 完全版』 (古川緑波著、河出文庫、4日発売)
エノケンこと榎本健一とともに「エノケン・ロッパ」の一時代を築いた名喜劇役者にして、エッセイストとしても健筆をふるった古川緑波が、1951年創刊の食冊子『あまカラ』に連載した「ロッパ食談」を完全収録。この連載が本にまとまるのは1955年の単行本以来、しかも完全収録ということで、今回の文庫化はなかなか貴重な機会なのではないでしょうか。
『古代エジプト 失われた世界の解読』 (笈川博一著、講談社学術文庫、10日発売)
ヒエログリフ(神聖文字)、スフィンクス、死者の書•••。どのような国土にどのような人々が、どのように暮らしていたのか。2700年余り、31王朝の歴史を数少ない資料を丹念に解読することでひもとき、その死生観、宗教、言語と文字、文化などを概観する。
もっとも知られている古代文明でありながら、その実よくわかっていないことも多い古代エジプトのことを、いろいろと教えてくれる一冊のようですね。
『ワケありな映画』 (沢辺有司著、彩図社文庫、中旬)
爆破予告があり上映中止になった『ブラック・サンデー』、戸塚ヨットスクール事件で関係者が逮捕されオクラ入りになった『スパルタの海』、公開直後に監督の妻と子供が殺された『ローズマリーの赤ちゃん』などなど、映画そのものよりも裏側のトラブルが目を引く、古今東西の「ワケありな映画」を46本紹介。
映画そのものを観る上で知る必要があることではないのかもしれませんが、さまざまなトラブルやスキャンダルを通して、映画と人間、そして社会との関わりが見えてくる•••かもしれない、そんな一冊のようであります。
『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』 (角幡唯介著、集英社文庫、19日発売)
1845年、ジョン・フランクリン率いる129人の北西航路探検隊がイギリスから出港するが、その後消息を絶ち全員が死亡したものとされていた。しかしその中に、アグルーカと呼ばれる生き残りがいたという話が。著者は探検隊の足跡を追うべく、1600キロに及ぶ壮絶なる徒歩行へ•••。
大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した『空白の五マイル』や、『雪男は向こうからやってきた』(ともに集英社文庫)などで知られる探検ノンフィクションの旗手が放った力作。これもかなり面白そうですね。
『ポアンカレ予想を解いた数学者』 (ドナル・オシア著、糸川洋訳、新潮文庫、27日発売)
位相幾何学における難問であった「ポアンカレ予想」。それを解いていったのは、数多の数学者たちにより連綿と続けられた数学研究によって成し遂げられていった•••。位相幾何学の歴史的側面とポアンカレ予想の解決の道程を平易な語り口で綴った数学ノンフィクション。
新潮文庫で好評刊行中のシリーズ「サイエンス&ヒストリーコレクション」の1点としての文庫化と思われます。同シリーズの『フェルマーの最終定理』(サイモン・シン著)や『ケプラー予想』(ジョージ・G・スピーロ著)と共に読むのも面白いかも、ですね。
『江戸の温泉三昧』 (鈴木一夫著、中公文庫、20日発売)
百姓、町人から大名まで、さまざまな階層の人びとがレジャーとしての温泉旅行や湯治を楽しめるようになった江戸時代。温泉旅行の費用はいくらかかったのか、旅館の施設やサービスの実態はどうだったのか、湯治場とはどんな場所だったのか、などの豊富な実例を当時の温泉旅行者の書いた文章から引きつつ、江戸の温泉三昧の世界を描いた一冊。これはなかなか興味深そうで、9月刊行予定の文庫ではこれが一番楽しみであります。
9月刊行予定の文庫新刊からのピックアップは以上です。以下は、8月刊行予定の単行本から、これまた個人的に気になるものを5冊ピックアップしてご紹介いたします。内容紹介は、主に『日販速報』から引用いたしました。
『禁忌習俗事典』 (柳田国男著、河出書房新社、11日発売)
「タブーに関する言葉をジャンル別に網羅し、徹底解説。全集未収録の超貴重な本を、新字新仮名の読みやすい形で復刊。秀逸な日本人論」という本書、そのテーマゆえに全集に未収録だったのでありましょうか。いずれにせよ、なんだか面白そうな一冊でありますね。タブーに関する言葉から、日本と日本人の真の姿が垣間見えるのでしょうか。そしてそれは、現代にも通じるものがあるのでしょうか。
『宮本常一 写真を撮る民俗学者』 (石川直樹・須藤功ほか著、平凡社コロナ・ブックス、8月20日発売)
こちらもまた民俗学がらみの本でありますが•••。「宮本の撮った写真を記録としての意義とともに優れた写真表現として捉えなおし、旅をそして日本を“写真に撮る”ことの意味を探る」とのこと。宮本常一が数多くの写真を撮っていたことは存じておりましたが、それらを「写真表現」として見直してみるという試みは面白いものがありそうですね。
『笑劇全集』 (井上ひさし著、河出書房新社、8月22日発売)
演芸ブームの一翼を担い活躍していた、三波伸介、戸塚睦夫、そして伊東四朗の3人による「てんぷくトリオ」。彼らのために井上ひさしさんが書いたコント台本、156本をすべて網羅し収録した決定版です。
てんぷくトリオに書いた井上さんの台本は、1976年に講談社文庫で『井上ひさし笑劇全集』上・下として刊行されたことがあります(これはわたくしの手元にあります)。そちらの収録本数は80本でしたが、今回はその2倍近くの156本。井上ひさし流の「笑い」の原点が詰まった保存版、これもまた手元に置きたいですねえ。
『浮浪児1945 戦争が生んだ子供たち』 (石井光太著、新潮社、8月12日発売)
「終戦直後、焼け跡となった東京は、身寄りのない子供たちで溢れていたーー歴史から“消え去った”彼らを資料と証言から追う、問題作」。これは雑誌『新潮45』連載中から、ぜひ単行本でまとめて読みたいと思っていたノンフィクションであります。これは買いですね。
『文化昆虫学事始め』 (三橋淳・小西正泰編、創森社、8月21日発売)
「ヒトと虫の関わりの深さを民俗、文芸、美術工芸、昆虫食、音楽、映画などの領域から興味深く解説。文化昆虫学の意義を紹介」とのこと。生物学、生態学的な側面のほかに、近年は「昆虫食」の側面からも注目を浴びている虫たちですが、幅広い文化的な側面から昆虫との関わりを繙いていくということで、かなり惹きつけられるものがある本ですね。
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