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宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

【DVD鑑賞】『ガメラ2 レギオン襲来』 前作を超える面白さ!重厚なリアル志向と娯楽性を両立させた大傑作

2014-10-19 11:00:05 | 映画のお噂

『ガメラ2 レギオン襲来』(1996年 日本)
監督=金子修介
特技監督=樋口真嗣
脚本=伊藤和典
音楽=大谷幸
出演=永島敏行、水野美紀、石橋保、吹越満、藤谷文子、辻萬長、川津祐介


多くの人たちからの好評を得てヒットした映画は、その後に続編が製作されシリーズ化されることが少なくありませんが、1作目を上回るような面白く出来の良い続編には、そうそうお目にかかれないものであります。これまでわたくしが「1作目より面白い!」と感じた続編は、今のところ『エイリアン2』(1986年)と『マッドマックス2』(1981年)くらいでしょうか。
いわゆる「平成ガメラ三部作」の2作目である本作『ガメラ2 レギオン襲来』を、先月(9月)からデアゴスティーニ・ジャパンが刊行している『隔週刊 大映特撮映画DVDコレクション』最新号付属のDVDで久しぶりに観て、これもやはり、1作目より面白いと言える続編の一本なのではないか、と感じました。
もちろん、同じスタッフによる前作『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995年)も面白くて完成度が高いお気に入りの映画ですが、わたくしはこの『G2』のほうがより一層、本編ドラマと特撮の双方ともにパワーアップして充実しているように思います。

前作から1年後。世界各地に降り注いだ流星雨の一つが北海道の支笏湖付近に落下した。しかし、落下したはずの隕石は消失してしまっていた。その直後、光ファイバーケーブルやビール工場のガラス瓶が消失するという怪事件が続発。そして、札幌の地下鉄に異生物の集団が、ビルからは巨大な植物が出現する。
流星雨によって宇宙からやってきた両者は共生関係にあった。異生物はガラスに含まれるシリコンを摂食して分解し、生じた酸素で巨大植物(草体)を育て、その種子を打ち上げて拡散させようとしていたのだ。種子が打ち上がれば、それに伴う大爆発で札幌が壊滅しかねない状況となる。
札幌に危機が迫っていたとき、三陸沖から出現したガメラが飛来し、草体を焼き尽くす。しかし、地下から這い出てきた異生物の群体がガメラを覆い、ガメラは為す術もなく退却。その直後、異生物「レギオン」の巨大体が出現し、いずこかへと飛び去っていった。
続いて、今度は仙台市に「草体」が出現。それに呼応してガメラが再び現れ草体を駆除しようとするが、その前に巨大レギオンが立ちはだかり、圧倒的なパワーでガメラを倒す。満身創痍になりながらも草体からの種子の発射を食い止めたガメラだったが、草体は大爆発して仙台は壊滅。ガメラも炭化し、死んだように動きを止めてしまった。
ガメラを倒した巨大レギオンは、新たな種子の発射場として東京を狙って進撃する。それを食い止めるべく防衛出動し、総攻撃を加える自衛隊。果たして自衛隊は、その進撃を阻止できるのか。そして、ガメラは人びとの願いに応えて蘇ることができるのか•••。

もし怪獣が現代の日本に現れたら?という状況を、徹底したリアル志向でシミュレートした前作『~大怪獣空中決戦』。それに続く本作ではそのリアル志向はさらに徹底され、特撮怪獣映画の枠もはるかに超えるような、重厚にして娯楽性にも富んでいる大傑作に仕上がっています。
高度通信情報網にダメージを与え、独自の生態系を作り上げようとする宇宙からの脅威を敵として設定、それをしっかりとした科学考証のもと描き出した本作は、紛れもなく本格SF映画でもあります。現に、基本的には小説作品を対象とした日本SF大賞を映画としては初めて受賞しています(第17回にて受賞。詳しくはこちらの受賞作品一覧をどうぞ。→ http://homepage1.nifty.com/naokiaward/kenkyu/furok_NIHONSFaward.htm )。
同時に、宇宙からの脅威を前にして防衛出動し、ガメラと共闘しながら戦う自衛隊の攻防ぶりを、リアルなシミュレーションのように描いた戦争映画でもあります。東京へ進撃しようとするレギオンを阻止しようとする足利市での最終決戦の場面では、画面下に時間と状況説明の字幕が出されたりして、あたかもドキュメントのような緊張感が醸し出されます。
これらの要素が1分の隙もなく組み合わさった本編ドラマ部分の充実ぶりは素晴らしく、なおかつ娯楽映画としても申し分のない高揚感をもたらしてくれます。

特撮部分のパワーアップぶりも質量ともにハンパではなく、前作以上にリアルな作り込みにより生み出された、目を見張る驚きと迫力のある映像がてんこ盛りです。
草体の大爆発により仙台市が壊滅したり、巨大レギオンが圧倒的なパワーを見せつける都市破壊シーンなどといったスペクタクルな見せ場は迫力満点です。また、飛来したガメラが高速着地し、地面の上を横滑りしながら火球を3連発する、というシビれるシーンもあったりして、樋口真嗣監督率いる特撮スタッフのノリにのった勢いがビンビン伝わってきます。
デジタル技術の使い方も前作に比べるとはるかに洗練されたものとなっているのですが、崩れるビルのミニチュアの窓に、逃げ惑う人たちを合成するという、円谷英二監督が腕を振るった往年の東宝特撮を再現したかのようなカットもあるのが嬉しいところでした。本作はまさしく、過去と現在の特撮を繋ぐ作品でもあるんだなあ、と感じました。

キャストのほうもいい役者さんが揃っています。
ひたすら真摯で頼もしい自衛官を演じた永島敏行さんや、物語の科学的背景を説明する役回りでもあるエンジニア役の吹越満さんもまことにいい感じなのですが、なんといっても井上ひさしさんの「こまつ座」などの舞台でも活躍されている辻萬長(かずなが)さんが演じる、戦闘指揮所の師団長の存在感は抜群でした。•••でもやっぱり一番のお気に入りは、利発にして花のあるヒロイン役の水野美紀さんなんですけども♡
ゲスト出演陣にも注目です。群体型レギオンの死体を解剖してみせる北大獣医学部の教授役は、本職の解剖学者である養老孟司さん。自衛隊の防衛出動を記者会見で発表する官房長官役は、当時大映の親会社であった徳間書店の総帥であった徳間康快さん。また、前作に続いて日本テレビが製作に加わっていることもあって、当時『ズームイン!!朝!』のキャスターだった福留功男さんや、日テレとその系列局のアナウンサーが出ていたりもしています。

この先もまた何回でも観直してみたい!とあらためて思わせてくれた大傑作です。特撮怪獣映画への偏見から観ていないというのは実にもったいないことだと思います。未見の方は、前作『~大怪獣空中決戦』と合わせてぜひ一度ご覧くださいませ。前作のほうも、『隔週刊 大映特撮映画DVDコレクション』として出ておりますので。こちらもすごく面白い映画であります。

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2 コメント

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Re:嬉しいコメントどうもありがとうございます! (閑古堂)
2014-10-19 12:47:28
北米版のブルーレイなんですね!なるほど、これは興味をそそられますねー。あちらの皆さんがどのようにこの三部作を捉えているのかも知りたいところですね。ご教示ありがとうございます!
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まとめて見るならこっちも! (通りすがり)
2014-10-19 12:05:19
こんにちは!平成ガメラと聞いてFacebookから飛んで来ました。
ウチはコレを買ったんですけど、アメリカンなメニューも味があっていいですよ!
http://www.amazon.co.jp/gp/aw/d/B005ENCIWG/
熱いレビューを読むだけでも楽しい!
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