『夢にめざめる世界』
ロブ・ゴンサルヴェス作、金原瑞人訳、ほるぷ出版、2016年
絵本に興味関心はありつつも、さりとて詳しく知っているというワケでもないわたしにとって、楽しく素敵な絵本をお教えくださる職場(書店)の同僚や、SNS(特にFacebook)でつながっている絵本に詳しい方々は、実にありがたい情報源となっております。
そんな情報源の一人である職場の上役から、
「この絵本、すっごくいいんだよ〜〜」
と強力推薦されて中身を見たらたちまち虜となり、さっそく取り寄せて購入したのが、この『夢にめざめる世界』でした。
ルネ・マグリットなどのシュールレアリズムに影響を受けたというカナダの画家が、これまで描いてきた数々の「だまし絵」に、自作の詩を添えて一冊にまとめたのが、この絵本です。日本語版はつい最近、刊行されたばかりでした。
森の中にある湖にぷかぷか浮かぶ女性の上に広がる空が地球の姿へとつながったり、水中の光景が上空から眺める砂浜の風景につながったり、はたまた流れ落ちる滝の水がダンスを踊る女性たちの姿に変わっていたり・・・。精緻なタッチで描かれた不思議な「だまし絵」の数々は何度見ても、驚きとともに遊び心を刺激されます。そして、それぞれの絵に添えられた詩の言葉が、想像力を大いに掻き立ててくれます。
収録された「だまし絵」の中で、とりわけわたしがお気に入りなのが、閲覧机の上に本が積み上がった図書館の光景が、いつしか建物が立ち並ぶ街の風景へと変わっていく絵です。そこには、こんな詩が添えられています。
「その世界では、
ひとつの言葉
ひとつの考え
本の1ページから
すべてがはじまる。」
なにげなくめくる本の1ページが、さまざまな世界へとつながり、いろいろなものを作り上げていく基にもなるということが伝わってきて、なんだか感慨深いものがありました。
また、ちょっとアインシュタイン似の学者が黒板いっぱいに書いた難しげな数式が、星の瞬く宇宙の光景へとつながっている絵も素敵でした。想像力と探究心があれば、人間は宇宙の果てを含めたあらゆる場所へと飛んでいけるのだということを、あらためて教えられたような気がいたしました。
同じ版元と訳者により、ゴンサルヴェス氏の絵本はこれまでに3冊出版されているようです。それらも順次、買い揃えてみようかなと思います。
ここのところ、昼夜を問わない蒸し暑さからくる疲れもあって、読書量が極端に落ちていたわたしでしたが、この『夢にめざめる世界』から、さまざまな世界へ飛び、つながることができる想像力の楽しさと豊かさを教わることができました。
ようやく、夜には涼しさを感じる時期になってきた昨今。これからまたさまざまな本のページをめくって、自分の知らない世界を知り、想像し、つながっていきたいと思います。