読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

別府・オトナの遠足2015 (第2回) 明礬温泉の展望露天風呂は極楽だった

2015-01-22 23:24:32 | 旅のお噂
別府旅2日目の1月11日。午前中、市の北部山側に位置する「明礬温泉」まで足を伸ばしました。
「別府八湯」と呼ばれているように、別府の温泉地は全部で8つのエリアに分かれていて、それぞれに異なる泉質の温泉と風景を楽しむことができます。わたくし、これまでにその半分を制覇(って、大ゲサな言い方ですが)いたしましたが、市の中心部から少し離れた山側の温泉地には、なかなか行くことができずにおりました。今回は2泊3日の余裕あるスケジュールということで、山側の温泉地にも足を伸ばしてみようと思ったのであります。

別府駅のバス乗り場から路線バスに揺られること30分。曲がりくねった道をしばし登っていった先に、明礬温泉はありました。

バス停に降りるとすぐに、あたり一面に漂う硫黄の匂いが鼻をくすぐりました。そして、ひんやりした空気の中に白く立ち昇る湯けむり。ああ、温泉地にやってきたんだなあ、という感慨がしみじみと湧いてまいりました。
明礬温泉にやってきてすぐ目につくのが、道路に沿って立ち並んでいる茅葺き小屋。これ、湯の花の製造小屋なのであります。

この地は江戸時代から明礬の産地として名高い場所だったそうで、明治時代以降は明礬の精製過程でできる湯の花がお土産ものとして人気を呼び、その製造技術は国の重要無形民俗文化財にも指定されております。明治から昭和戦前にかけての古い絵はがきを集めた本でも、まったく同じ形の茅葺き小屋が立ち並ぶ明礬の風景を見ることができます。今の明礬の風景も、その当時の面影をそこかしこに残しているように見えましたね。
さっそく温泉に浸かりたいところでしたが、宿泊先のホテルでは素泊まりということもあって、まだ朝食を食べておりませんでした。わたくし、バス停の真ん前にある「岡本屋売店」に立ち寄りました。
うどんやおにぎり、カレーなどの食事もとれるお店のようでしたが、ここの看板商品である「地獄蒸しプリン」を頂いてみました。カスタードとコーヒー味の2種があったので、その両方を注文いたしました。ええ、わたくし旅先では「スイーツ男子」に変貌するのでございまして•••。

カスタードのほうは、卵の美味しさがしっかり活きている少し固めの生地に、ちょっと苦味のあるカラメルがかかっておりました。そしてコーヒー味のほうは甘さを抑え、苦味の引き立つオトナの味わい。いやー、いずれもけっこういけたのでありまして、いいブランチ代わりになりました。

バス停から少しだけ歩いたところに「みょうばん湯の里」という観光施設がありました。施設内には展望露天風呂のほか、茅葺き湯の花製造小屋やレストラン、お土産屋さんなどが集まっております。
展望露天風呂がお目当てだったのですが、お風呂の開場する午前10時まで、まだしばらく時間がありました。わたくし、湯の花製造小屋を見学してみることにいたしました。


湯の花製造小屋は基本的に一般人の立ち入りは禁止されているのですが、施設内にある2つのみ、見学用として開放されておりました。本来は真っ白な湯の花なのですが、見学用の小屋の中でできていた湯の花は空気に当たってやや黄色がかっておりました。
そのあと、売店で売っていた温泉ゆで卵を頬張ったりなんぞして露天風呂の開場を待っておりましたが、冷たい風が吹いてくる高台はやはり寒うございました。わたくし、レストランに入って温泉蒸しプリンとコーヒーのセットで一服いたしました。•••ええ、またプリンを食べたのですが。

レストランの窓から眺める景色はなかなか良く、目の保養にもなったのでありました。

そうこうするうち、お待ちかねの露天風呂開場時間となりました。喜び勇んで軽くなった足取りで、施設本体よりもさらに高台にある露天風呂へ上がりました。
中に入ると小さめの内湯があり、そのすぐ向こうでは開放感溢れる露天風呂が、乳白色のお湯をたたえながら、なまめかしくユーワクしているではありませんか。うわ~、早くそのフトコロにザブンと飛び込みたい!•••でもちょっと寒いのよ、ぶるるる。
わたくし、まずは内湯でしばし暖まったあと、満を持して露天風呂へ突入いたしました。陽の光を浴びて水色となっている乳白色のお湯が、いかにも効きそうな感じであります。ザブンと飛び込みたいところでしたが先客がおられましたので•••チャプン。
「くう~~~、こりゃ気持ちよかわ~~!」わたくし、浸かると同時にに思わず声を上げてしまいました。熱くもなければぬるくもない、実にいい湯かげんのお湯は、心身の緊張を一気にほぐしてくれました。雲ひとつない青空の下で浸かる、いい湯かげんの露天風呂。これはほんと、余裕あるスケジュールを組んでやって来て良かった、と心底思いましたよ。
しばらく浸かってカラダが暖まると、湯から出て衝立越しに広がる絶景を眺めたりいたしました。•••下の写真はもちろん、中で撮ったわけではございませんが、露天風呂からもほぼこれと同じ眺めを楽しむことができたのであります。

わたくし、カラダが暖まると外の景色を楽しみ、カラダが冷えてくるとまた温泉に浸かり•••ということを繰り返しておりました。
何人かのお仲間と湯船に入ってきたお兄さんは、気持ち良さそうに瞼を閉じつつ「あ~~、もう出たくねえ~~」などと言っておりました。その気持ち、よ~くわかりました。これは掛け値なしの名湯、極楽でございましたよ。
わたくしもしばらくの間、「オレも出たくねえ~~」などとココロの中でつぶやきながら、湯の中にカラダを沈めていたのでありました•••。

露天風呂から上がって、再び路線バスに乗って別府の中心街へと戻りました。湯から上がったあともしばらくは、温泉のおかげでカラダはポカポカしておりました。
さあ、湯上がりのあとは冷た~い生ビールでありますよ。ということで、以前にも一度立ち寄ったことのある、別府駅からすぐ近くにある焼肉店「アリラン」で、生ビールとともに焼肉を満喫いたしました。柔らかな食感の黒毛和牛もさることながら、旨味たっぷりのとろけるような脂が絶品のホルモンが、生ビールをグイグイと進ませてくれました。

今では、別府の数多くの飲食店で出されている「別府冷麺」発祥のお店という「アリラン」。さっぱりした魚介系のスープを使った普通の冷麺も、生ビールと焼肉のシメにぴったりなのですが、今回は8段階の辛さが選べるというピビン冷麺を賞味いたしました。わたくしは2辛を選んだのですが、ちょうどいいピリ辛で食欲をそそられ、食べ始めたら箸が止まりませんでしたよ。おかげさまでもう、満腹でございました。


「アリラン」のすぐ前にある海門寺というお寺。そのそばに「腰掛けているように見える木」なる物件がございました。いやー、これは初めて気づきましたね。この物件、テレビ番組『ナニコレ珍百景』にも取り上げられたんだとか。木としては、もうだいぶん朽ちているように感じられましたが•••確かになんだか「腰掛けているように」見えますなあ。

その海門寺には1匹の街ネコがおりました。街ネコといいましても首輪をしていたので、近くで飼われているネコだったのかもしれません。

呼んでみると逃げることもなく、ソロリソロリと近寄ってきてくれました。わたくし、それをいいことにしばらくの間、撫でたり抱っこしたりいたしました。最初のうちはおとなしく相手してくれていたのですが、だんだん鬱陶しく思われでもしたのか、やがてわたくしから遠ざかってどこかへ行ってしまったのでありまして•••。うう。すまんのう。
街ネコに振られてしまった失意のわたくしは、海門寺のそばにあるその名も「海門寺温泉」という共同浴場に入りました。この日2度目の温泉であります。
ここは入浴料100円で入れる市営の共同浴場のひとつ。昔の銭湯を彷彿とさせるような、古い歴史を感じさせる建物が多い別府の共同浴場にあって、この海門寺温泉はバリアフリー対応の真新しい建物でありました。ですが、中に流れる空気はまさしく、古き良き銭湯そのものでしたねえ。
浴槽は「あつ湯」と「ぬる湯」に分かれており、まずは「ぬる湯」に浸かりました。•••くう~~、これも気持ち良かったですなあ。しばらくして隣の「あつ湯」に入ってみたら•••これはもうけっこうな熱さでありまして、1分かそこらで出て「ぬる湯」に移ったのでございました。ええ、軟弱者なもので•••。
地元の皆さんに混じって湯に浸かりながら、街ネコに振られた失意をじっくりと癒したわたくしなのでありました。


(次回につづく)