読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

【DVD鑑賞】『大怪獣ガメラ』 明朗な娯楽性に満ちた、ガメラシリーズの原点

2014-09-12 23:14:52 | 映画のお噂

『大怪獣ガメラ』(1965年日本)
監督=湯浅憲明
脚本=高橋二三
音楽=山内正
特殊技術=築地米三郎
出演=船越英二、姿美千子、霧立はるみ、山下洵一郎、内田義郎、浜村淳


今月の2日、デアゴスティーニ・ジャパンから『隔週刊 大映特撮映画DVDコレクション』が創刊されました。2009年から数年間刊行された『東宝特撮映画DVDコレクション』や、現在刊行中の『東宝・新東宝戦争映画DVDコレクション』に続く、DVD付き特撮映画パートワークの第3弾であります。
多くの人に親しまれているガメラシリーズや大魔神シリーズをはじめ、SFや妖怪もの、怪談もの、史劇スペクタクルといった知る人ぞ知る作品まで、堂々全46本が刊行予定としてラインナップされています。

創刊号に収録されたのは、大映特撮を代表する人気キャラクター、ガメラが産声を上げた、1965年の『大怪獣ガメラ』であります。

北極海上空に現れた謎の国籍不明機が、米軍機の呼びかけを無視して飛行を続けたあげく攻撃の挙に出る。米軍機の反撃を受けて撃墜された国籍不明機に搭載されていた核兵器が炸裂し、その衝撃で氷の奥深くに眠っていた巨大な亀の怪獣が目覚めてしまう。ちょうどそのとき、北極のエスキモー集落を訪れて調査に当たっていた東大の生物学教授・日高は、その巨大な亀怪獣がアトランティス伝説に出てくる「ガメラ」であることを知る。
やがてガメラは灯台の光に誘われるように北海道の襟裳岬に出現、灯台を破壊するが、その灯台に取り残されていた少年・俊夫が落下した瞬間、手を差し伸べて救ったのであった。
その後、熱エネルギーを求めたガメラは地熱発電所を襲撃する。35万キロワットの高圧電流による攻撃にも怯まないガメラに、自衛隊は開発途上であった冷凍爆弾を撃ち込む。動きが鈍り、発破により仰向けにひっくり返るガメラ。あとは餓死するだけ、と喜ぶ人びとであったが、ガメラは手足を引っ込めてジェット噴射で宙に舞い、そのままどこかへ飛んでいってしまう。
世界各地の空に姿を見せた末、ついに東京へと飛来したガメラは破壊をほしいままにする。ついに万策尽きた人類は、最後の切り札として「Zプラン」に命運を託すのであった•••。

ライバルであるゴジラ同様、核兵器によって眠りを覚まされるという登場のしかたをするガメラですが、核兵器廃絶への重いメッセージ性に溢れた『ゴジラ』(1954)とは対照的に、本作は78分というコンパクトな時間にテンポ良く次々と見せ場を詰め込み、徹底した娯楽路線で勝負しています。
主役のガメラも出し惜しみすることなく、開始早々にその勇姿を披露。あらゆる攻撃をものともせず、地熱発電所や東京のビル群などを壊しまくるという、なかなかの大暴れっぷりを見せてくれます。
それでいて、子どもに対しては親愛の情を示したりするあたり、のちのシリーズで子どもたちの味方となって大活躍する性格設定の萌芽が見てとれたりもいたします。ガメラに助け出されたことで、ガメラを自分が育てていたカメの生まれ変わりだと信じ、ガメラを危険視する大人たちに抵抗する孤独な少年・俊夫の存在が、後半のドラマにおける柱の一つでもあります。
徹底した娯楽路線を敷いたことで、ドラマ部分に若干の物足りなさを覚えることも確かではあります。また、日本人にわりと似ているエスキモーはともかくとして、ソビエト代表の配役までが日本人というのにも、若干無茶ぶりを覚えたりしましたねえ。まあ、一応それっぽく見せてはおりましたが•••(笑)。
とはいえ、作風にはある種あっけらかんとした明朗快活さが感じられたりもして、これはこれで悪くないし楽しめるな、と思いました。

要所要所できっちりと作り込んでいた特撮にも、見るべきものがいろいろとありました。
中でも白眉だったのが、ガメラが吐く(あるいは吸い込む)炎の表現に、実際の火炎を使用していたことです。『大映特撮映画DVDコレクション』のマガジンにも、その場面のメイキングが出ておりましたが、プロパンガスとガソリンの混合物に点火しての撮影には、さぞかし危険がともなったことでしょう。
東宝特撮映画におけるゴジラの火炎放射の表現が、主に作画による合成だったことを考えれば、実際の火炎を使用しての表現には、東宝特撮に追いつけ追い越せという、当時の作り手たちの気合いを感じるような思いがいたしました。
また、冒頭の北極海での、ガメラによる観測船襲撃シーンでは、船から逃げていく船員たちをアニメによる合成で表現したりするなど、随所に小技を効かせたりしているのも心憎いものがありました。

明朗な娯楽性と、大技小技を組み合わせた特撮の妙を楽しめる『大怪獣ガメラ』、やはり一見する価値はありました。
『大映特撮映画DVDコレクション』、次回刊行の第2号に収録されるのは、こちらも大映を代表する名キャラクターのスクリーンデビュー作『大魔神』(1966)です。こちらもまた、大いに楽しみであります。