読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

第20回宮崎映画祭、閑古堂的見どころポイント(今年はプレイベント「自主映画祭」にも注目!)

2014-06-03 22:33:19 | 映画のお噂
当ブログでも、これまで幾度か取り上げている「宮崎映画祭」。
映画をこよなく愛する市民ボランティアにより、いわば手弁当で運営されている手づくり感覚あふれる映画祭ながら、目利きのメンバーによって選び抜かれた上映作品の質の高さに加え、毎年高名な映画人を招いてはファンとの交流の場を設けたりするなど、宮崎を代表する文化的なイベントとして定着しております。
1995年の第1回から、一度も欠けることなく続いてきたこの宮崎映画祭も、今年でついに節目となる第20回目です。7月5日から13日までの9日間にわたって、宮崎市の中心部にある宮崎キネマ館をメイン会場にして開催されます(12日のみ宮崎市役所そばの宮崎市民プラザ・オルブライトホールで開催)。
すでに、上映される作品全19本のラインナップも出揃い、開催まであと1ヶ月ほどに迫ってまいりました。そこで、今年のラインナップから、わたくし個人の見どころポイントを挙げてみたいと思います。
映画祭の詳細な情報については、映画祭公式サイトのほうを、また上映作品の内容紹介は映画祭公式ブログを参照していただければと思いますが、まずは上映作品のラインナップをこちらにも記しておくことにいたしましょう。


『未知との遭遇 特別編』 (1980年 アメリカ、オリジナルは1977年)
監督=スティーヴン・スピルバーグ
主演=リチャード・ドレイファス、フランソワ・トリュフォー、テリー・ガー、メリンダ・ディロン

『CURE』 (1997年 日本)
監督=黒沢清
主演=役所広司、萩原聖人、うじきつよし、中川安奈

『Seventh Code セブンスコード』 (2013年 日本)
監督=黒沢清
主演=前田敦子、鈴木亮平

『ビューティフル・ニュー・ベイエリア・プロジェクト』 (2013年 日本)
監督=黒沢清
主演=三田真央、柄本佑、森下じんせい

『太陽を盗んだ男』 (1979年 日本)
監督=長谷川和彦
主演=沢田研二、菅原文太、池上季実子

『AKIRA』 (1988年 日本)
監督=大友克洋
声の出演=岩田光央、佐々木望、小山茉美

『ドラゴン・コップス 微笑捜査線』 (2013年 中国)
監督=ウォン・ジーミン
主演=ジェット・リー、ウェン・ジャン、ミシェル・チェン

『皇帝と公爵』 (2012年 フランス、ポルトガル)
監督=バレリア・サルミエント
主演=ジョン・マルコビッチ、カトリーヌ・ドヌーブ、イザベル・ユペール

『ポルトガル、ここに誕生す ~ギマランイス歴史地区』 (2012年 ポルトガル)
監督=アキ・カウリスマキ、ペドロ・コスタ、ビクトル・エリセ、マノエル・ド・オリヴェイラ

『日本のいちばん長い日』 (1967年 日本)
監督=岡本喜八
主演=三船敏郎、笠智衆、加山雄三

『生きるべきか死ぬべきか』 (1942年 アメリカ)
監督=エルンスト・ルビッチ
主演=ジャック・ペニー、キャロル・ロンバート

『ペコロスの母に会いに行く』 (2013年 日本)
監督=森崎東
主演=岩松了、赤木春恵、原田貴和子、加瀬亮

『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』 (1985年 日本)
監督=森崎東
主演=倍賞美津子、原田芳雄、平田満

『忠次旅日記』 (1927年 日本)
監督=伊藤大輔
主演=大河内傳次郎、伏見直江

『丹下左膳餘話 百万両の壺』 (1935年 日本)
監督=山中貞雄
主演=大河内傳次郎、喜代三

『ニシノユキヒコの恋と冒険』 (2014年 日本)
監督=井口奈己
主演=竹野内豊、尾野真千子、成海璃子、本田翼

『ビフォア・ミッドナイト』 (2013年 アメリカ)
監督=リチャード・リンクレーター
主演=イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー

『少女は自転車にのって』 (2012年 サウジアラビア、ドイツ)
監督=ハイファ・アル=マンスール
主演=ワアド・ムハンマド、リーム・アブドゥラ

『神奈川芸術大学映像学科研究室』 (2013年 日本)
監督=坂下雄一郎
主演=飯田芳、笠原千尋、前野朋哉


第20回目を飾るゲストのお一人目は、過去にも3回にわたってお越しいただき、映画祭を盛り上げてくださった黒沢清監督です。今回は、代表作であるサイコサスペンス『CURE』のトークショーつき上映に加え、自作2本とスティーヴン・スピルバーグ監督の名作『未知との遭遇 特別編』を題材にした「黒沢清の映画塾」といったプログラムに登場されます。
『未知との遭遇』は何度か観ていて大好きな作品でありますが、まだ劇場で観たことはありませんでした。今回、劇場で黒沢監督のお話とともに鑑賞することができるというのは、実に嬉しいことです。
お二人目のゲストは、『人のセックスを笑うな』(2008年)で一躍名をあげた新鋭、井口奈己監督。井口監督もおととしの第18回に続くご登場です。今回は最新作『ニシノユキヒコの恋と冒険』のトークショーつき上映のほか、のちにメル・ブルックス監督によりリメイク(『メル・ブルックスの大脱走』1983年)もされたクラシック作品『生きるべきか死ぬべきか』の解説つき上映にも登場されます。こちらも楽しみであります。

『ニシノユキヒコの恋と冒険』予告編(YouTube)

そして、三人目のゲストは、宮崎映画祭初登場となるシネマイラストライターの三留まゆみさん。「三留まゆみの映画塾」というプログラムに登場されるのですが、取り上げられる作品はなんと『太陽を盗んだ男』!

『太陽を盗んだ男』オリジナル予告編(YouTube)

沢田研二さん扮する理科教師が、原子力発電所から奪ったプルトニウムを使って原爆を製造。それをネタにした途方もない要求で政府を揺さぶる教師に、菅原文太さん扮する刑事が闘いを挑んでいく•••という、ド迫力のカーアクション場面などもたっぷり盛り込まれた奇想天外な活劇映画です。
実はこの作品、前々から気にはなっていたものの、今に至るまで観る機会がございませんでした。なので、今回劇場で観ることができるというのはものすごく有難いことであります。しかも、三留さんのお話とともに!このチャンスはなんとしても見逃すわけにはまいりませぬ。とりあえず、三留さんには絶対サイン貰っとくことにしなければな(←ミーハー)。

もう一本、劇場で観られるチャンスが得られることになって嬉しいと思える作品が、アニメーション映画『AKIRA』です。大友克洋さんが、自らの漫画を監督・脚本兼任で映画化した本作は、日本以上に海外で熱狂的な支持を集め、目下ハリウッドにて実写映画化のプロジェクトが進行中であります。

『AKIRA』オリジナル予告編(YouTube)

圧倒的に緻密な画づくりは、もうセルアニメーションの極北といってもいいような素晴らしさ。そして、山城祥二さん率いる芸能山城組の音楽が、リアルな映像に独特の雰囲気を与えます。
本作はまだ、レーザーディスク(懐)で鑑賞しただけでありましたので、ぜひとも劇場のスクリーンで、あらためて迫力を体感してみたいと思っております。

御年86歳にして、旺盛な映画への情熱を持ち続けておられる喜劇映画の名手、森崎東監督の特集も必見でしょう。
原子力発電所を渡り歩く「原発ジプシー」と呼ばれる労働者の存在などに光を当てた社会派作品でもあり、底辺に生きる人間たちのアナーキーな生きざまが炸裂する隠れた秀作『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』。さまざまな映画賞を総なめにした上に、赤木春恵さんが「世界最高齢の映画初主演女優」としてギネス世界記録に認定されるというおまけまでついた話題作『ペコロスの母に会いに行く』。新旧の森崎作品も、それぞれに見応えありそうで楽しみです。

そして、日本映画のクラシックス2作品も、やはり見逃せないものがあるでしょう。
天才と謳われた山中貞雄監督の数少ない現存作にして、斬新なエンタテインメントでもある『丹下左膳餘話 百万両の壺』も貴重な作品ですが、なんといっても『忠次旅日記』の上映に注目です。広島市の民家から発掘され、復元された「幻のフィルム」が上映されるなんて、宮崎においては滅多にない意義深い機会でしょう。ぜひとも観ておきたいと思います。
宮崎初公開の新作では、『マッチ工場の少女』(1990年)のアキ・カウリスマキ監督や、『ミツバチのささやき』(1973年)のビクトル・エリセ監督、それに105歳にして現役のマノエル・ド・オリヴェイラ監督らによるオムニバス『ポルトガル、ここに誕生す ~ギマランイス歴史地区』が気になります。

今回は節目の第20回ということもあって作品数もいつもより多く、スケジュールを組むのがなかなか大変だわい、と嬉しい悲鳴を上げたい気持ちであります。
何本でも好きなだけ観放題のフリー券(3000円)を購入して、でき得る限り観ていくつもりでおります。

映画祭本体とは別に、プレイベントとして開催されるのが、みやざき自主映画祭2014「第4回MIFF~投げ銭映画祭~」であります。
例年のみやざき自主映画祭は、映画祭本体の開催前日の夜に、それこそ「前夜祭」的に開催されていたのですが、今回はいくらか趣向を変えて、映画祭開催よりけっこう早めの6月15日に開催されます。会場は、やはり宮崎市中心部のカリーノ宮崎8Fにあるシアター88です。
これまでは短篇作品がメインでしたが、今回は東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻の修了生による長篇作品2本も上映されます。さらに、福岡インディペンデント映画祭での過去上映作品の紹介と合わせて、同映画祭の会長を招いてのトークなども盛り込むなど、なかなかに意欲的なプログラムを組んでいるようです。
荒削りながらも、若い才能のほとばしりを感じることができる自主映画にも、意外な拾い物があったりいたします。なので、ぜひこちらのほうにも注目し、足を運んでみたいと思っております。
なお、みやざき自主映画祭2014「第4回MIFF~投げ銭映画祭~」は入場無料です。詳しいプログラムにつきましては、こちらのページの下のほうをご覧くださいませ。

今年も、さまざまな映画との出会いを首を長くして楽しみに待ちたいと思います。