霞の目の航空祭で地上展示されていました。雪の多い東北・北海道などで冬季のOH-1運航をする場合、新雪のグラウンドなどに着陸する場合、車輪が雪に埋もれないように写真のようなそり(スキー)を履きます。陸上自衛隊が運航する主なヘリコプターにはすべてこのようなスキーの装備があり、雪害などの山村でも離発着ができるように訓練をしています。雪面に着陸する際、ヘリコプターが発生させるメインローターのダウンウォッシュで雪煙りが発生し、着陸寸前に雪面が見えなくなる「スノーアウト」と言う大変危険な状態になることがあります。各部隊は、これを回避するための厳しい訓練を行っていますが、雪深い山地の災害などで出動を要請する場合、学校のグラウンドなどに積もった新雪を50m×50mくらいの広さに、雪上車などで圧雪するだけで「スノーアウト」を防止でき、安全が確保できますので、救助活動の準備間に着陸場の整備も忘れないようにしたいものです。初めて降着する雪面では、パイロットが着陸の時点で、水平かどうかを瞬時に判別することは困難ですから、着陸点を学校のグラウンドとか、広い河川敷など日頃から水平面であることを確認している場所に選定することが極めて重要です。
先日の角田市での空中消火活動でも活躍したヘリコプターです。胴体の下に白く見える部分がベリータンクで、最大約1.2t程度の水を搭載することができます。給水管を下垂させて迅速にホバリングして自動給水させることができますので、効果的な消火活動が実施できます。陸上自衛隊のUH-1は、700ℓの水のう方式ですね。また、500リットル型のバケットを使用する消防ヘリもあります。更に既に掲載したCH-47による空中消火では、巨大なバケットを使用して約5~8tもの水を一度に散水できますので、給水場所や消火区域は、中・小型のヘリコプターとは別にするのが通常です。それぞれ利点欠点をもっていますので、上手く活用することが重要です。消火用バケット等の方式が異なる場合は、安全確保と効率的な消火活動のために給水場所をそれぞれ別の場所に設定することが有利となります。各機関が連携して行う場合は、給水場所の指定や飛行ルート・消火区域の指定などを手際よく統制することが必要になります。
地上展示されていた装置です。けが人などの安全を確保するための担架装置とそれを釣り上げるウインチ、操作員が関連付けて展示されていました。この装置は、骨折をしているけが人などで、担架装置のまま吊り上げる必要がある場合に、空地の連携をしながら行う運用の一つです。山岳地で滑落したけが人などを救助する際にも使われます。まずヘリコプターから救助員が降下して、この担架装置にけが人を固定し、ホイスト用ロープをこれに掛けてウインチで引き上げます。このオペレーションでは、条件によっては、空気摩擦で帯電した静電気を地面につけて放電してから運用しないとスパークが起きる場合がありますので、整備員などの指示に従って運用する必要があります。
宮城県防災航空隊が保有するBK117C2によるホイスト救助活動が展示されました。小型のヘリコプターですから、ペイロードには限界がありますが、狭い地域での救助活動には向いており、各種機材などを搭載して救急救助活動などに使用されています。同型機は各地でドクターヘリとしても運用されています。ご指摘をいただきありがとうございました。ご指摘のとおり、仙台市消防航空隊にはBK117は在籍したことがないため、宮城県防災航空隊に修正しました。
災害当初の広域情報収集に当たるヘリコプターとしての運用が展示されました。このヘリコプターは、AS332L2型で、赤外線カメラなどを搭載して、地震災害時の道路・山間地などの土砂崩れ現場、建築物の崩壊状況など専門的な情報収集にあたったりしています。このヘリコプターの製造元であるフランスでは、そのペイロードの大きさから空中消火活動などにも威力を発揮しています。写真は4月19日に撮影しました。
陸上自衛隊東北方面航空隊が所在する霞の目飛行場で、近く発生が心配されている「宮城県沖地震」を想定して、関係機関が合同で実施する防災訓練の展示がありました。陸上自衛隊東北方面航空隊、陸上自衛隊中央即応集団隷下の第1ヘリコプター団、航空自衛隊松島救難隊、宮城県警察航空隊、宮城県防災航空隊、仙台市消防航空隊、国土交通省東北地方整備局などの関係機関が運用するヘリコプターが参加していました。それぞれの機関は、北朝鮮のミサイルから東北地域の市民を保護するための諸活動、角田市で発生した大規模な山林火災の空中消火活動などを連携して行ったヘリコプター部隊でした。昨年の「岩手・宮城内陸地震」などで活躍をした航空部隊でもあることから、地元の市民の関心も高く、大勢の人が見守る中での展示訓練でした。陸上自衛隊の映像伝送器材を搭載したUH-1の離陸、東北地方整備局屋、警察など関係機関の情報収集、偵察部隊や救急救助のための運用や、救援物資の搬送など想定される主要な行動についての連携ある行動が見事に統制されて行われました。その模様を数枚連続して掲載します。最初は、救急救助したケガ人をヘリコプターから消防の救急車へ、リレー搬送する訓練の写真です。
北朝鮮のミサイル発射問題で、海上自衛隊や航空自衛隊が機動展開して万一の場合に備えて飛来する飛翔体の破壊態勢をしていただいていることを心強く思います。また、自治体などでは、市民の避難処置についての情報伝達訓練や広報活動もされ、かつてないほどに国民保護のための危機管理態勢が構築されつつあることにも心強く思います。しかしながら、相手のミサイルは、過去に弾道を外れたり失敗した経験を持っていますから、待ち受けた軌道での撃破ができない場合もあることを考慮して、国や地方自治体はその際の救助活動の準備がされていることと思います。その際、落下したミサイル破片等の位置情報・被害情報を各機関が共有して、速やかにヘリコプターなどを使った緊急展開部隊の運用で対処して被害を局限するための救助活動等(救急救助・避難・消火活動等多様)を行って頂きたいものです。自衛隊・警察・消防防災、海上保安庁などの関係機関が、個別に運用されることなく、それぞれの機関が持つ優位性を活かしながら、一元的な指揮運用体制の下で連携ある活動がされることを切に願っています。東北地域では前にも記述したとおり、地震災害などですでに連携運用の実績を持ち、継続した訓練もされているようですから、今回の危機管理においても、万が一の場合にはしっかりした指揮統制の下での連携ある活動を期待しています。
最近各地で林野火災が多発しています。昨年ギリシャで行われた国際航空消防会議においても、温暖化による林野火災の増加について懸念が表明されています。消防防災ヘリコプターは近年逐次中型のペイロードがあるヘリコプターに換装されて、消火のための水を1.5~2tくらいまでは搭載できるようになってきました。写真は2003年秋に行われた国際会議で三重県防災ヘリコプターによる空中消火展示が行われた際の写真です。このヘリコプターは、胴体の下にベリータンクを装備して、給水もホバリングしながら自己給水可能ですので、迅速に連続して消火活動ができると言われています。湯布院や多摩川での野火による火災には、地上消防部隊の水が届かない場合も多いので、このようなヘリコプターによる空中消火がすぐに決断されて出動できれば、地上部隊との連携で被害を極小しながらの消火活動ができるものと期待しています。また、初期消火の段階から自衛隊に対する出動要請をして自衛隊ヘリコプターとの連携による長時間連続空中消火が可能な体制を整えることが求められています。
オーストラリアで大規模な山火事が発生し、大きな被害をもたらしてなお延焼中です。熱波による高温と乾燥、強風が重なって被害が拡大しているようです。我が国では、高い技術力を持って飛行艇が製造されており、海上自衛隊で捜索救難などに運用されています。飛行艇は日本の他、カナダ、ポーランド、ロシアなどでも製造され、消防艇として山火事などの対処の為にも運用されています。2008年10月にギリシアのアテネで航空消防をテーマにした国際会議「Aerial Firefighting 2008 Conference」が開催されて、重要な指摘がされました。山火事が頻発している欧米を中心に22カ国から航空消防関係者が参加して運用、管理、安全性、国際協力などの幅広いテーマが議論されたようです。中でも、近年の森林火災は、気候変動によって大規模化しており、火災が発生すると一国のみの対処では困難な場合が多く、国際的な協力体制が不可欠であること。また、山間地の住民の都市への集中や、森林管理の不足によって、山林が荒廃していることにも山林火災の規模拡大の原因があるとの指摘もあったようです。
将来的にも地球の温暖化や乾燥化がさらに進むものと予測され、山林火災による被害は、多発化・大規模化するものと危惧されています。わが国では、消防防災や自衛隊によるヘリコプターを使用しての消火活動が主体ですが、更に規模が大きくなり広大な地域での火災に対処するには、ヘリコプターだけではなく、飛行艇を改造した消防艇などの固定翼による広域の空中消火が必要になるものと考えられます。
今回のオーストラリアの大規模な山火事は決して対岸の火事ではないと思います。わが国もヘリコプターだけではなく固定翼による空中消火の必要性を認識・整備するとともに、それらの安全な消火活動を可能にし、効果ある消火活動ができるように備えておく必要があると痛感しています。写真は海上自衛隊のUS-2ですが、これを改造して消防艇にしようとする研究が行われています。
将来的にも地球の温暖化や乾燥化がさらに進むものと予測され、山林火災による被害は、多発化・大規模化するものと危惧されています。わが国では、消防防災や自衛隊によるヘリコプターを使用しての消火活動が主体ですが、更に規模が大きくなり広大な地域での火災に対処するには、ヘリコプターだけではなく、飛行艇を改造した消防艇などの固定翼による広域の空中消火が必要になるものと考えられます。
今回のオーストラリアの大規模な山火事は決して対岸の火事ではないと思います。わが国もヘリコプターだけではなく固定翼による空中消火の必要性を認識・整備するとともに、それらの安全な消火活動を可能にし、効果ある消火活動ができるように備えておく必要があると痛感しています。写真は海上自衛隊のUS-2ですが、これを改造して消防艇にしようとする研究が行われています。
平成20年12月28日、山梨県笛吹市大蔵経寺山、山頂付近で出火した林野火災は、山梨県知事からの要請で陸上自衛隊のヘリコプターが出動し、空中消火活動を実施しました。一度火勢が弱まったため要請により撤収しましたが、31日に再燃したため、31日から元日にかけて越年の懸命の消火活動が行われています。防衛省のHPを見ると、航空機は、OH-6、UH-1、CH-47等が東京都立川市、群馬県榛東村(相馬原駐屯地)、千葉県木更津市から延べ10機が出動し消火活動に当たりました。OH-6やUH-1は火点誘導や統制、映像撮影伝送のために運用され、CH-47は大型バケットを使用して消火に当たっていたようです。その散水量は2日間で1170t(700+470)と言う大量の水を散布しています。31日は1日で700tもの水を散布したわけですが、自衛隊の空中消火能力の凄さがわかりますね。日頃の厳しい訓練があるからこそ、いざと言うときに迅速・安全にその能力を発揮できることを再認識させられます。出動された地元消防隊や消防団の皆さまを含めて大変お疲れさまでした・有難うございました・・と申し上げたいですね。写真は、かつて木更津で大型バケットを使用して空中消火の訓練をしている時のものです。