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空を愛する者として各地を歩いた際の航空機の写真災害時の活用法などを掲載しています。現場の意見などコメントをください。

原子力災害対処

2011-04-23 21:01:49 | 趣味・航空機
東日本大震災の津波被害を受けた福島第1原子力発電所は、大きなダメージを受けていた。当時の緊迫した状況を報道された新聞資料などから時程を追って振り返ると次のようになる。
平成23年3月11日1446頃、三陸沖を震源とし、M9.0という未曾有の規模の「東北地方太平洋沖地震」が発生した。宮城県栗原市では、最大震度7を記録、岩手・宮城・福島・茨城・千葉等東日本の広範囲にわたって沿岸部での地震・津波被害は甚大なものとなった。福島第1原子力発電所も想定していた震度や津波の高さを大きく超えたため、大きなダメージを受けた。炉心を冷却するための電源や設備が機能しなくなったことが大きな原因であると言われている。12日には冷却水が減少し炉心の温度が上昇・原子炉格納容器の圧力が上昇して溶融や水素爆発が心配されていた。12日1536には1号機で水素爆発が起き、原子炉建屋が破損した。13日には3号機の冷却機能が失われ、一時燃料棒が露出して炉心融解の可能性があり、14日1310に3号機でも水素爆発が起きた。2号機も14日の3号機の水素爆発の影響で原子炉建屋が破損し、15日午前6時過ぎに圧力抑制室付近で爆発音が確認された。4号機も15日午前6時頃大きな音が発生し、原子炉建屋5階屋根付近を損傷した。原子力安全・保安院は、14日午前7時現在、福島第1原子力発電所付近で毎時965.5マイクロシーベルトの放射線量を検出したと報告した。この様な緊迫した状況が続いていた頃、菅総理は15日4号機から放射性物質が漏れ出したことを受けて、原子炉を冷却するため上空から大型ヘリコプターによる冷却水投下を検討するよう指示を出したと報道された。北沢防衛大臣は、15日時点では、「まだ上空から冷却水を投下する段階に至っていない。・・地上からの放水の成果を見極めたい・・」と語ったと報道されていた。その時点で陸上自衛隊は大熊町の病院に取り残された患者等を避難所へ移送していた。枝野官房長官は、16日午前の会見で、福島第1原発4号機への注水について、「若干の遅れが予想されるが、準備を進めている。」「ヘリコプターからの注水についてはかえってリスクが大きい」と発言していた。一方では、東京電力や関連会社の現場作業は深刻な事態を回避するため、多くの危険を覚悟の上で作業に当っていた。陸上自衛隊は、17日午前8時過ぎからヘリコプター(UH-60JA)による放射線量のモニタリングを始めた。放射線量が低ければCH-47による冷却水の投下を始める為であった。当時警視庁機動隊の高圧放水車も現地で待機態勢にあった。17日0948陸上自衛隊はCH-47×2機による空中からの冷却水の投下を開始した。3号機の直上からの放水は、慎重に高度飛行コースを変えながら4回実施された。実施を決めた防衛大臣は会見で「(放射能)が高い濃度のため計算できない状況下、今日が限度だと判断し決心した・・。」と述べたと報ぜられている。その後は、航空自衛隊や陸上自衛隊の航空救難用の消防車や消防庁が保有する特殊の消防車によって繰り返し注水作業が行われることになる。地上からの注水作業が可能になった為、その後は大型ヘリコプターからの冷却水の投下は行われることは無かった。12日~17日頃の緊迫した状況の中で、行われた初めての有人ヘリコプターによる原子力発電所直上からの冷却水の投下は、NHKの実況中継画像がそのまま世界各国のニュースで報ぜられるなど大きな反響を呼んだ。東京電力及び関連会社の現場での活動は勿論、自衛隊や警察・消防等の命を賭けた行動が少なくとも当時の被害拡大を最小限度に抑え、国民への被害の極限になったことを感謝したい。写真は最近防衛省HPに掲載されたCH-47大型ヘリコプターの要員に対する除染(スクリーニング)の訓練の模様である。何時撮影されたかは定かではないが、緊迫した状況での行動であったことが伺える。当時空地での活動をして被害を極限していただいた現場の全ての皆さんに感謝したい。

最近やっと米軍が持ち込んだ無人ロボットや無人ヘリコプター等を使うようになっているが、わが国にも保有するその能力を最大限活用し、無人機レベルで可能な作業は、現場で行動する「人」への放射線被ばく量を最小限にするために極めて重要であることを理解すべきである。「人」でなければ対処できない内容だけを有人のヘリコプターや機材を運用して原子力災害に対応するようにマニュアル化して頂きたいと願っている。防衛警備活動の他、特殊災害等への対応を確実に行う為に陸上自衛隊は無人ヘリコプターを保有し、訓練も行ってきた。最近政府は、20kmの範囲内を警戒区域として立ち入りを禁止した。地上には監視カメラ等を設置していると思われるが、広域であることから、上空を警戒監視し、放射線量を継続して測定する任務はまさに無人ヘリやロボット等が最適であることを認識して、米国任せにしないようにしないと、いつまでたっても経験が無いから自信を持って運用できないのではないだろうか?

無人機はなぜ使用されないのか

2011-04-07 23:01:55 | 趣味・航空機
福島原子力発電所関連の対応は毎日予断を許されない状態で懸命に対応されている。現場で命の危険を顧みず頑張っている作業員の方々や、自衛隊等対応に当たっている皆様に心より感謝申し上げたい。ところで、このブログでは数回にわたって、原子力災害等での無人機の運用が必要であると述べてきた。しかしながら、約1ケ月を過ぎようとしている現在も、被曝線量が蓄積する中で、人に頼った対応が続いていることに驚いている。わが国は、ロボットや各種無人機(UGV、UAS、USV、UUV)等においては世界を技術的にリードするものが多い。筆者も5年くらい前に無人機の調査に米国へ行ったことがある。運用されている各種無人機は多いが、無人機(UAS)の飛行の安定性やセンサーの一部は、わが国の無人機が優れているものもあった。わが国は、トップレベルの技術を持っていると確信したものだった。東京消防庁等では、消火ロボットや救助ロボットも開発されている(http://www.tfd.metro.tokyo.jp/ts/soubi/robo/)。陸上自衛隊においても、一部の装軌車を無人化したり、写真のような無人ヘリを実用化して装備したりしている。すでに運用されているものが有るのである。原子力災害での放射線や飛散した放射性物質によって、汚染された環境(Dirty)下での有人機の運用は最小限に抑制されるべきであり、特に継続した避難地域の監視や原発周辺の放射線量の測定等いわゆる「Dull」で「Dirty」な任務は、無人機で対応すべきであると思う。毎日上空を飛行する航空機の乗員や地上作業員の累積被曝線量は確実に増大しており、長期化するに伴って交代要員の確保さえ難しくなる恐れがある。一部の報道によれば、外国から持ち込んだ無人機が運用されると言うが、わが国で装備しながらそれを活用できないのであれば、なぜなのか対策本部での政策判断を問うてみたい。

ビッグレスキュー'91

2011-04-05 19:17:12 | 趣味・航空機
平成3年8月に陸上自衛隊は、北部方面隊を挙げて初めての緊急医療支援訓練を行った。当時は陸上自衛隊としても初めて実施する大規模な訓練で、札幌病院長以下約1800名の緊急医療支援団が編成され、航空機約40機、車両約1000両が参加して行われた訓練であった。情報が途絶した中での空地の情報収集と迅速な医療チームの派遣による救助活動については、その後阪神淡路大震災や、国際緊急援助隊などでその成果が発揮されている。東日本大震災においても、初動からその能力を発揮して懸命の努力が行われている。想像に絶する広大な地域の被害であり、医師団の努力にもかかわらず、避難諸地域での衛生環境の悪化と感染症の拡大が心配されていると言う。(4月5日NHKラジオ)
各地から馳せ参じた大学病院や医師会などの医療チーム、そして自衛隊の医療チーム等によって毎日巡回診療なども行われているが、追いつかないとの放送であった。生活支援のための物資輸送はある程度落ち着いて来たとのことであるので、ヘリコプターや車両をフル活用して、陸・海・空自衛隊だけでなく、あらゆる機関の医療チームを必要な地域に迅速に派遣して医療活動や、感染症の予防のための活動を実施し、医療チームによる最大限の効果をあげて欲しいものである。阪神淡路大震災でも当時自衛隊の医療チームは、毎日ヘリコプターで数カ所の避難所に医療チームをヘリコプターで派遣していたと記憶している。写真は平成3年8月に行われたビッグレスキュー'91で救助活動の訓練を行う医療班とヘリコプターである。