Blue Sky Love Sky

空を愛する者として各地を歩いた際の航空機の写真災害時の活用法などを掲載しています。現場の意見などコメントをください。

Snow Out

2012-02-09 09:47:02 | 趣味・航空機
昨日の新聞で、大湊航空基地でのSH-60Jの横転事故の報道があった。原因は調査中であり、軽々に述べることはできないが、雪国での運用では多くの人が「Snow Out」に陥りそうになった経験をしていると思う。写真はすでに紹介した昭和38年豪雪災害でのH-19による救助の模様である。写真が白く濁って見えるのは、雪が舞っているからである。ヘリコプターが発生させるダウンウォッシュによって巻き上げる雪で周辺が見えなくなって、空間識失調の状態になるとアンコントロール状態になってしまうから怖い。
かつて道北で勤務していた頃、冬に備えて秋から特別の訓練をしていた。雪が降った条件での離発着訓練を全員が定められた手順に従って行い、確認するものであった。その重要なものが「Snow Out対処訓練」であった。滑走路上に新雪が積もった時に起きやすいので、朝早くから雪上車で圧雪を兼ねて軌跡を作るのである。人間の目は、素晴らしい能力を持っているもので、雪上車で付けた軌跡があると一面白い雪に見えても、詳細を見ると影ができており、浮上している機体から見てもわかる。その光の影がスノーアウトを防止するのであった。また、まったく人の入れない郊外などの着陸場への着陸をする場合は、赤い色の布で砂袋を包み、着陸しようとする地域にあらかじめ上空から投下する。雪面に赤い布が揺れて見えることで、基準の表面の状況がわかり、安全に着陸したものだ。着陸は、降着エリアの広さがあれば、できるだけホバリング停止を避けて、前進しながら接地すると雪の舞いあがりを直接受けなくて安全であることも教えられた。『自然には勝てず、ただ克つのみ』という言葉は当時戒めとしていたものであった。克服するための厳しい訓練をすることのみが安全に任務をするための条件であり、引き続き過去の教訓などを活用して厳しい訓練を行い、安全に雪国での飛行を継続し、国民の生命財産を守ってほしいものである。飛行訓練を中止することは誰にでもできるが、そのような判断をした人は、厳しい条件下での任務遂行を命じてはならない。真のプロフェッショナルは、厳しさを乗り越える訓練を継続し、任務に備えるのだと思う。

強靭なヘリコプター

2012-02-04 10:16:16 | 趣味・航空機
平成3年8月に陸上自衛隊は、北部方面隊を挙げて初めての緊急医療支援訓練を行いました。当時は陸上自衛隊としても初めて実施する大規模な訓練で、札幌病院長以下約1800名の緊急医療支援団が編成され、航空機約40機、車両約1000両が参加して行われた訓練でした。写真はその際多用途ヘリコプターがレスキュー活動で訓練する模様です。演習場にかなりの速度で強行着陸し、任務も行われました。強靭で信頼性があるヘリコプターだから可能でした。この演習の成果は、のちに発生する阪神淡路大震災など多くの大規模災害で活用されました。最近では、東日本大震災で活躍し、初動の4日間で、関係機関のヘリコプターで3000人以上を救助したといわれています。孤立化した地域からの救助は、都市型・中山間地型ともにその必要性が高いと認識されています。劣悪な環境でも安心して運用可能な純国産ヘリコプターができるようで期待しています。ただ、そのためには、厳しい各種の試験を長期間にわたって実施する必要があります。純国産の場合、航空機のコンポーネントごとの安全保障条件を満たすためには、実際の飛行時間を飛ばして証明しなければできないからです。最近は、シミュレーションで行われるようですが、あくまでもバーチャルの評価であり、現実に飛行させてみるとあちこちで問題が見つかるのが通常のようです。したがって、主力機とする航空機は徹底した試験を実際に行い、評価していくのが通常です。米国が作ったUH-60も開発開始から部隊運用までに約10年を要しました。そしてその間に試験中の痛ましい事故も起こしていますが、それを乗り越えてきました。ユーロで開発したNH90も長期の実証期間を経ています。わが国は、今言われている5年程度で本当に部隊配備するのでしょうか?東日本大震災の教訓で最近特に強調されるようになった言葉があります。「虚から実へ」・・研究室レベルで論理的にはできても、現場で非常時にも安心して運用できなければ意味がない。「実」を重視する考え方です。またコストも外国から導入するよりトータル的には相当安いようですので、今後継続して価格の推移などを期待しながら見ていきたいと思います。実際に使用する現場の隊員の皆さんに、運用機数数を確保し、信頼性と強靭性を併せ持つヘリコプターになることを願っています。現在のUH-1しいリーズは、非常に高い稼働率と強靭性を持っていますが、少なくともこれを超えるとの判断で選定されていると聞きますので、注目しています。このプランは堂々と全面的に公表されると思いますが、いつ公表されるのかも気になります。少なくとも現場で実際に運用することを要求される皆さんは正確な情報を承知して試験期間・項目などを判断すべきでしょう。「実」を重視する現場の意見が最大限採用されることを願っています。

HU-1Bに感謝

2012-02-01 11:19:30 | 趣味・航空機
昭和38年に4機のHU-1Bが陸上自衛隊に初めて導入された。初めてのタービンエンジン搭載の多用途ヘリコプターであった。写真は、同年10月頃行われていた性能確認試験の中の一コマで、普通科部隊が装備していたジープを吊り上げての飛行の可能性などをチェックしている模様である。あれから50年陸上自衛隊はHU-1BからHU-1H、UH-1Jへとシリーズを導入し、普通科部隊などの空中機動力の中核として運用され、わが国の安全確保に大きな足跡を残した。また、各種の災害において、救助活動などを行ってきた。現有ヘリコプターでは最大の出動件数を誇るヘリコプターだと思う。沖縄にも配備されていた時期があり、第101飛行隊(現第15飛行隊)が初めて緊急患者空輸を行ったのもこのヘリコプターであった。長野県の北アルプスでの山岳遭難者の救助活動などにも使われている。筆者も槍ヶ岳での救助を副操縦士として務めたことがあった。3000mを超える高標高地で、2名の看護婦(現看護師)さんを救助したが、離陸重量限界であり、機長の冷静沈着な判断で見事に救助に成功したが、1名は、病院で亡くなられたと聞いた。阪神淡路大震災では、UH-1シリーズが陸上自衛隊のヘリコプターの最大期であり、約40機を連日運用した。孤立した地域からの救助や食料医薬品等の各避難所近傍ヘリポートへの搬送など多様な任務に存分に運用さえれた。東日本大震災においても、増強東北方面航空隊や各師団・旅団において存分の活動を行い、初動の4日間に救助した約10,000名の救助者の30%以上をヘリコプターが行ったといわれている。大型ヘリコプターでは着陸できない地域での救助活動は、中小型ヘリコプターに頼るところが大きい。中山間地が多い日本では、UH-1シリーズのよなサイズのヘリコプターは、とても重要である。このようにして国民の生命財産の保護に活躍してきたが、ついにその姿が消えることになった。平成24年1月31日、陸上自衛隊は、次期多用途ヘリコプターの開発機種を決定し、純国産で開発するという。5年後には立派なヘリコプターが完成すると思うが、それ以降急速にUH-1シリーズは消えてなくなることになるだろう。
改めて永い期間わが国の国民の生命財産の保護に活躍してくれたUH-1シリーズに感謝したい。次期多用途ヘリコプターが任務を開始するのは、5年後のようであるが、財政状況からすれば一度に編成全機を更新することは困難であるので、逐次減少するUH-1シリーズの欠数を当面どこまで容認するか、現在の装備数を一時延命して確保するかは重要な課題である。南西諸島では中国の影がうごめき、首都直下地震などの発生確率の見直しで、4年以内に高い確率で発生することが危惧されている。陸上自衛隊は、国の財政難に全面的かつ積極的に協力して編成定数を下げてまで対応していると聞いた。国民を守るために必要な数を努力して整備する気概は残っていると思いたいが・・。毎年防衛白書で自衛隊が装備する主要な航空機の数をチェックしているが、陸上自衛隊は中・小型ヘリコプターの減少により、加速度的に装備数が減るのではないかと懸念している。すでに50機を超える数が減少した。更に飛行時間を制限して延命しようとする愚作に出ないように願っている。
おそらくHU-1Bの装備開始から60年を過ぎてUH-1シリーズが完全に消えると思うが、国民の一人として心から「UH-1シリーズの多用途ヘリコプター」に対して、『有難う!』と感謝を述べたい。写真を提供していただいたY氏は、次期多用途ヘリコプターの決定を聞かずに先般旅立たれた。昭和38年10月頃に試験飛行を担任されていた頃の笑顔の写真が思い起こされる。天国からしっかり見守っていただけることを願っている。
また、本ブログに現場の多くの方から激励コメントを戴いたことにも深く感謝する。