失なわれゆく風景

多摩地区周辺の失われた風景。定点撮影。愚問愚答。

鶴見川源流2

2008年06月29日 | 源流探訪

<鶴見川源源流にある谷地田>

前回、源蔵さんからコメントをいただいた、鶴見川の「源源流」の流れを追ってみることにしました。最初の目的は、「源源流」の流れがどうやって「泉のひろば」の脇に出てくるのかを追ってみたいということだけだったのですが、源源流をどこまで遡れるのかついつい深入りしてしまいました。
 現地であらためて見てみますと、下の地図の地点3付近で源源流の谷は道路と同じレベルあるいは道路より高くなってしまいます。なんだか土砂で谷が埋まってしまったかのような地形です。流れがどうなってしまうのかは周辺から見て確認できません。まあ、この流れが伏流水になって地表から消えてしまわない限り、暗渠に入るしかありません。
 この疑問について、今のところ私には現地で簡単に確かめる方法が思いつきません。「何かわかればもうけもの」という程度の期待で、「野火止用水の流末探訪」のときにそこそこ役に立った簡単な水質(水温、電気伝導率、pH)を調べてみました。比較のために、周辺のいくつかの流れでも同じ水質項目を調べてみました。

調べた日 2008年6月28日
調べた地点 (最後の地図参照)

地点1 時刻 11:55 水温16.3℃ pH6.6 電気伝導率31.0 mS/m
源源流の最上流部。梅雨時のせいもあろうが、こんな高い位置からそこそこの量の水が流れ出していたのは意外だった。この地点のすぐ10mくらい上は尾根幹線沿いにある「タマホーム」の敷地との境界である。タマホームの赤い建物が林間に見えていた。

<左:上流方向。右:下流方向を>

<最上流部の湧出状況。ちょうど日が差してスポットライトがあたったような感じになる。底には水で洗われた礫が見えている。> 

地点2 時刻 11:40 水温17.8℃ pH6.7 電気伝導率6.7 mS/m
源源流の谷を下から進むと、しばらく行ってよこやまの道方向に向かってのぼりが急になる。その登り口のすこし手前にある谷戸田。田の横の水路で水質を調べた。


地点3 時刻 12:15ころ 水温19.6℃ pH7.1 電気伝導率14.2 mS/m
源源流が姿を消す問題の地点。

<左:源源流の流れは林の手前 右:ここで水を汲む>

地点4 時刻 12:25 水温19.0℃ pH7.1 電気伝導率14.2mS/m
泉の広場の上流側にあらわれる水路。地点3からつながっていると想定される地点

地点5 時刻 12:30 水温17.2℃ pH6.9 電気伝導率27.5 mS/m
泉の出口


地点6 時刻 12:45 水温19.4℃ pH7.0 電気伝導率14.7mS/m
もうひとつ別の源流の谷(南の谷?)。この地点のすぐ上流側では水が流れていなかった。

<左:上流方向 右:下流方向>

地点7 時刻 11:15 水温18.8℃ pH6.8 電気伝導率7.0mS/m 
よこやまの道の唐木田配水所の裏から泉のひろばへと向かうコースの途中の谷(前回紹介した「谷底」)。この流れは正山寺の西側の谷(野中谷戸?)に出る。前回の流れは常時流れている流れではなかったのでほんのすこし下流で測定を行う。

<左:上流方向。このときは水が流れていなかった 右:下流方向>


<この谷戸に下る坂道にホオノキの大木が2本>

その他 アサザ池出口
時刻 15:50 水温20.7℃ pH6.8 電気伝導率19.5 mS/m
アサザが咲いているかどうかを見にアサザ池に立ち寄ったのでついでに水質も調べた。
もうアサザが咲いていた。



水質データについて
●地点3と地点4でpHと電気伝導率の値が同じになり、「3と4は同じ水だ」と言いたいところですが、野火止用水の時と違って、この水は排水処理のような特殊な水ではないため、このデータだけから、これらが同じ水だとは決定的には言えません。(例えば、西の谷の水も14.7と近い値を示していますので、この辺りの水は一般的にこの位の値を示す可能性があるため)
とはいえ、地点3と地点4は違う水だとも断定されなかったことになります。
なんとも歯切れが悪ですが、このくらいしか言えません。
●他の地点のデータを見てみましょう。多摩地区周辺の湧水の電気伝導率は、およそ20~30mS/m程度を示すことが多いですので、供給源が雨水だけで、人為の影響(施肥や排水の流入など)が少ないとすれば地点1と地点5はそこそこ地中を通ってきた水だと言えます。逆に地点2と地点7はあまり地中を通っていない水ということになります。
「そこそこ地中を通ってきた」というのが、どのくらいの時間オーダーなのか、数時間なのか、数日なのか、数十日なのか、数百日なのか、あるいは特定の地層を通らねばだめなのか私にはわかりません。
●それから多摩地区周辺の湧水では、やはり十分地中を通ってきた水は水温がだいたい15~17℃くらいで、年間を通じて比較的一定な値を示します。今回の測定では地点1が16.3℃で一番低い値を示しています。もっともこの地点は冬場になると流れていない可能性があります。



地図 杉本智彦『カシミール3D図解実例集初級編』(実業の日本社)所収
   国土地理院2万5千分の1地形図「武蔵府中」より
(地点2、地点7の位置はあまり自信がありません。後日確認します。)


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4 コメント

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Unknown (源蔵)
2008-06-30 14:51:40
水無月さんこんにちは。

写真を拝見してるとやはり小道脇の水路
って西に上っていってますね。
誤解してました。
小道に沿ってるんでなく、下から見ると
左の緑の中から流れてくるのがよくわかります。
電気伝導率とか水温で地下水の種類が
わかるのですね。
こっちの分野は大いに不思議です。

そういえば大分前、小山田緑地をながれる
堂谷戸川上流の水源、といってもどういうわけか
ポンプで地下水をすいあげてる養魚場跡で
水質のお話をしてくださった方がおり
ここの水質は鶴見川の泉のとはことなり、
日光の水質に近いとか、、、まさか日光
から地下水が来るわけないとは思いますが、
興味深いお話を聞いたことがあります。


返信する
源蔵さんこんにちは (水無月)
2008-07-01 23:13:15
堂谷戸川というとアサザ池のある谷戸ですよね。
日光ですか。
私は尾瀬ヶ原の池塘の電気伝導率を調べたことはあるのですが(東京の自宅で採った雨水より小さい値でした)、日光の水質にどんな特徴があるのかは知りません。

ついでながら、
町田市のページに
「北部丘陵まちづくり基本構想(概要版)」
というpdfファイルがありました。(平成17年)
小山田・小野路周辺にもいくつか都市計画道路の線が
引かれていますね。
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失ったものの大切さは失ってからわかるもの ()
2011-04-30 00:16:20
目久尻川も綾瀬の湧き水が壊滅したのでそのうち水質が悪化するでしょうね。昔は城山公園の湧き水が滝のように川に降り注いでいたのですが・・・今思えば小川の水をそのまま飲めるなんて環境は首都圏では貴重だったと痛感させられます。特に横浜からそれほど離れてない綾瀬では
返信する
私は多摩川中流で水浴びしたことがあります (水無月)
2011-05-01 15:51:47
霧さんはじめまして
私はこどもの頃
(小学校に上がる前だっと記憶していますので
かれこれ半世紀ちかく前になってしまいます)
多摩川の関戸橋の下流で泳いだことがあります。
泳ぐと言うより水浴のような感じでした。
結構大勢の人が川辺で水浴びしていました。
本流から少し離れたところに伏流水が湧いているところがあり、
そこでスイカを冷やしたりしていました。
今では考えられないです。
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