佐世保便り

2008年7月に佐世保に移住。
海あり山あり基地あり。そしてダム問題あり。
感動や素朴な疑問など誰かに伝えたくて…

8月の詩

2010-08-02 | 佐世保・長崎

長崎新聞に「マンスリーポエム」というコーナーがある。

毎月初め、その月に相応しい、しかも長崎にゆかりのある詩人の詩を紹介する欄である。

今月、つまり「8月の歌」は、大村市在住の詩人、馬場敦子さんの『海の墓』が掲載されていた。

 

私には、詩の題名と内容がピッタシこなくて、なんとなく違和感があるけれど、

でも「8月の詩」というテーマにはバッチリ!

 

日本中が、そして長崎は特に、命について考える「8月」だが、

このような「とろとろとおだやかな」視点も 私は好き・・

 

 

          海の墓

 

     海を見下ろす小さな寺の

     肩先には小さな墓地

     その通路のわきのほんの片すみに

     小さな小さな墓がある

     文字はとうに消えうせ

     水浅黄の苔にくるまれて

     まどろむ猫の背のようにまろやかに

 

     祖母にあたるひとが

     墓参りのついでにちょいと寄って

     拝んでいきよったと義父は言う

     誰の墓か知りゃせんとばってが

     ばあちゃんに聞いても答えんとやもんばのう

 

     笑いながら語る義父も、義母も

     寺参り墓参りのついでに

     ひょいとここへ寄っては線香をあげるのだった

     指先でうっすらと文字の溝をたどってみても

     もう確かめられない

     すでにそんな必要もないほど

     ほっこりと充足した石の墓

 

     しかたんなかさのう

     縁のあったもんかもしれんたい

 

     手慣れたはやさで花と水をかえ

     身内のようなぞんざいさで手を合わせる

     私の会ったこともない死んだばあちゃんの

     まるい背がかさなる

     家族のだれもいわれを知らぬ

     小さな出会いのかたみのような

     石の墓もついでにうけつぐ

 

     眼下に広がる内海は

     夏のつよい光を反射して

     どこまでも とろとろとおだやかだ

 

 

コメント
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