まあ、ぼくは多少なりとも楽器を弾くことから、出た音でその人の人柄が分かることがあったりします。
面白いもので、良い音を出す人が良い人だとは限らないんですよね。
そもそも良い音楽を演奏するためにはある意味マジメに練習を積み、美に対する感性が豊かで、苦しみもがきながら自分の中味をさらけ出さねばならない部分があったりします。だから苦労に耐えた良い人が良い音楽を奏でられる、って思いがちだったりしたんですが、それはそうではない、と思い知らされたことがありました。
何年か前のことです。仲の良かった歌い手のNさんの伴奏をしている時、Nさんの馴染みらしい男性A氏(ぼくと同世代くらいかな)が楽器(サックス)を持って店にやってきました。そして飛び入りのような形でステージに上がってきたのです。
飛び入り自体は大歓迎なのですが、彼の音を聴いた瞬間ぼくはイヤになってしまいました。
Nさんの歌声よりも大きな音で吹きまくるんです。しかもソロ部分だけでなく、歌っている間中も延々と。
A氏の音色ですか? これが素晴らしくキレイなのです。艶やかでパワーもあって。それにムチャクチャ上手い!
でも歌が入っている時は歌が主役なのです。主役を引き立ててうまくノセてあげるのがわれわれバックの務め。それがいくらキレイな音でも歌の邪魔をするようでは音楽的とは言えません。自分だけが目立てばよいようなプレイ、これは勘弁してください、ってことですよ。
セットのあと、聞くともなしに聞いていると、A氏は大学時代、サックスの勉強をするためにヨーロッパに留学していたそうです。
ふーむ、それでたしかに楽器を「吹くこと」は上手いわけだ。。。でも楽器を吹くのが上手いからといってそれが必ず良い音楽にはならないのだ、という見本もまた目の前で見せ付けられたわけです。
まあ、たしかにいい音楽を奏でる人が良い人とは限りませんよね(そう思いたいですけど)。よく考えるとこれは、野球の上手い人がすべて良い人ではないように、また勉強がよくできる人が皆良い人ではないのと同じです。ただ、楽器の練習にはマジメに取り組んだということが言えるだけであって、それが即良い音楽とは結びつかない場合が往々にしてあります。野球でもなんでもそれは言えると思うけれど、自分がうまいからといって自分だけが目立つプレーをしていてはチームは勝つことはできませんよね。
ぼくはA氏と初対面だったのですが、彼はぼくのことが気になるらしく、お店のスタッフにいろいろ尋ねてたみたいです。どうもA氏はNさんのことが気に入ってたみたいで、ぼくとNさんの間柄も気になったようです。あとで少し話もしたんですが、「自分がこの地方のジャズ界を変えてやる!」とすごいハナイキ。でもですね、自分のプレイしか見えない、歌い手を気持ち良く歌わせられないような人間が「この地方のジャズ界」とやらを変えられるワケがないと思うんです。(ちなみにぼくの心の師匠は『なあMINAGI、関西で一番とか、西日本で一番なんてちっちゃいこと言うてたらあかんで。相手は世界やぞ、世界!』と言っていましたので「この地方のジャズ界」みたいな小さいことを最もらしく言うA氏にいい加減ウンザリしました)
おまけに「ヘタですみませ~ん」って言うんです、ヤツは。ぼくは「いいえ」としか答えません。すると間を置いてまた「ヘタですみませんね」ぼく「いや、大丈夫です」、これが何度か繰り返される。。。「いや、すごく上手いですよ」と言って欲しいのが見え見えだったので、、つい「頑張ってればいつか上手くなれますよ」と返事をしてしまいました(^^;)。たぶんプライド傷ついただろうな~
じゃあ良い音楽を奏でられるのはどんな奴なんだ? 今まで見てきた中で言えるのは、マジメだけではマジメな面白みのない音しか出ない、ってことです。聴衆の心に音を響かせることのできる人は、どこかヤンチャで遊び心のある人ではないでしょうか。まず自分が楽しまないとお客さんを楽しませることはできないですからね。逆に言うと、良い音を出すためには良い人でなくてもいい、とも言えますよね。でも、プレーヤーが「楽しみながら演奏する」裏には努力と苦しみもあるのです。音楽に対しては真摯な姿勢で臨まなければならないってことでしょうか。
今日はちょっとネガな話題でしたけれど、「良い音楽をする者は必ずしも良い人ではない」ことが言いたかったんです。かの孔子大先生も「立派なことを言う人は必ずしも立派な人ではない」という意味のことを仰っておられます~。それと同じことだったんですね~(^^)
人気blogランキングへ←クリックして下さいね
すごく上手いのはよく分かるんですけど、自分が吹きたいだけ吹ければ良い、みたいな考え方はちょっと引きますね~ あとの言動にもゲンナリでした。
演奏に人間性が現れるというのはある意味A氏もそうなのだと思います。ただ、あれだけ良い音を出せながら、なぜに周りを見ようとしない演奏なのか不思議だったわけです。
いろんなプレーヤーを見てきて、そういう例(音は良いのに人間として?な例)って時々見かけるんです。で、ある時京都のぼくのベースの師匠に「音楽性と人間性って関係あるんですか」と聞いたら、あっさり「関係ないやろね」と言われてしまいました(^^;)。
結局「良い音を出す人が良い人とは限らない」というところに落ち着いたわけです。もちろん良い音を出す良い人も少なからずいると思いますが、相関関係はないのかもな、と思ってます。しかしあるレベル以上の人は自分に厳しく、音楽を通じて自分磨きをされているんだと思います。きっとフジ子ヘミングさんなんかもそんなタイプで、「良い音を出す良い人」なんではないでしょうか。
「悪い音を出す人が悪人とは限らない」たしかにそうも言えますよね(^^)。
上手くてきれいな音を聞かせたいのなら、出るところを間違えましたね。私に曲名を言われてもわかりませんが、せめてサックスが主旋律をガシガシ行く曲で演るべきでした。
ピアノでも楽譜通りにぴたりと寸分の狂いもなく弾くことのできる人は上手いといわれるだろうし、たぶんきれいな音も出せるでしょう。
でも、1音、2音違ってもたとえばフジ子・ヘミングさんの演奏は、魂を揺さぶられます。
それは、他でもない彼女の人間性が演奏に現れているからでしょう。
『良い音を出す人が良い人だとは限らない』
そして「悪い音を出す人が悪い人とは…」え?それって私?それとも…?
(長文・駄文、失礼しました。)
もしA氏がリーダーなら自己責任で何をやってもいいんですけれど。。。単なる自己PRなら勘弁して欲しいですね。
>Nさんや、お客さんの反応はいかがでしたか?
Nさんはオトナの女性なので顔や態度には出しませんでしたが、後日話したら「あれにはマイった」とニガ笑いしてました。当夜のお客さんは引いてましたね~
>お互いの音を聴き合い、響かせ合って、音を作り上げるのが音楽の楽しさなんじゃないかな?
あ、それ同感です。そして気持ちのこもった音をお客さんに届けなければならないんですよね。人間性が悪くともそれができれば文句はないのですが・・・(^^;)
>小・中とコーラス部でピアノ伴奏をしてました。
>伴奏は、気持ち良く歌えるように、目立たず隠れず、歌に寄り添う、みたいな感じかな。(本当は歌いたくてたまらなかったんですけどね。)
バンドや生音をバックに歌うのってとても楽しいんですよね! 目立てるし(笑) いっつも後ろで弾いているから、たまに前に出ると気持ちいいです~(^^)
伴奏は、そうですよね、歌い手が気持ちよく歌えるように音を出してあげるのが吉、ですよね。歌伴は歌伴でまたムズカシイもんです~
>音楽に限らず、何をやっても優秀な人で、どの世界に行ってもそういう人だったのでは
なんかねー、聞いてみると、A氏はかなりの坊ちゃん育ちらしいんですよ。社会的にもまれてないみたい。
そうそう、物事すべてが自分中心になってるんだと思います。
>ひたすら弾きまくるギタリスト
(大笑)いますねー。でも彼の場合、主役が「俺様」だから、オーケストラはバックに徹しないとダメだし、ヴォーカルも「俺様」が気に入るように歌わないとダメなんです、きっと。彼の場合、それでいいのだ!(^^)
A氏は自分をアピールしたかったんでしょうが、歌を食ってしまったらまさに本末転倒ですよね。
>音楽ではもう一人の自分がいて見下ろしてるくらいがいいのでは。
ぼくもそう思います。いつも心がけているのが100%アツくならないことなんです。自分の気持ちを冷静50%、熱さ50&くらいに持っていって、客観的に音を聴こうと気をつけてます~(^^)
>上手さをひけらかす「だけ」なら
これでは聴き手側には音は届かないと思います。テクニックにはハートという裏づけがあって初めて生きるものだと思うんですよ。
>技術はあった方が良いに決まってますが、「音楽」がわかってないと~
これはジェイさんの仰る通りだと思います。
ミュージシャンって基本的には目立ちたがりが多いですけど、みんながみんなそうだと音楽にならないですよね。
でも音楽は素晴らしくても人としてどうなの?という例、わりとあるんですよ~
>彼に対する対応も大人の対応
ぼくも意地がワルいところがあるんですよ~ホホホ♪
いや~、人間性と音楽性はやはり別物だと思いますよ~ ただし人間性は悪くても、良い音を出す人は音楽には真剣に取り組んでるんだと思います。でも人間性も音楽性も立派な方も多くおられるのも事実ですよね(^^)。
>でも楽器を奏でるにはやっぱり良い音を出したいのは確か!
そうそう、それは絶対そうですよね。
長男君がAnneさんとギターを? それは楽しそう~ 長い夏休みを生かして何か一曲でもモノにできると良いですね(^^)
お母さんとギター・デュオなんてステキじゃないですか~
>他のメンバーの音がよく聴こえてきますよね
自分の音だけでなく、ステージから出る音をトータルに聴いて、自分の持ち場でそれに色をつけてゆく、って感じでしょうか。ヨーロッパにまで留学したのに、そのへんをシビアにとらえていないA氏は何を勉強してきたのかな。
>他のひとの音をきかなきゃダメでしょう。
そうなんですよね。「地方のジャズ界」どころか誰にも良い影響を与えることはできないでしょう。あんなに上手いのにもったいない・・・。
英語ができるのと国際的感覚を身につけるのとは別次元の話ですよね。
楽器ができることと、それが音楽として成立するかどうかもまたある意味別次元だと思うんです。
>音楽は~本来は表現の一手段
受け手に感動を与える手段として文字を使うか、絵を使うか、または音を使うか、なんですよね。
>逆に技術が未熟でも、聞き手の心を揺さぶる音楽もあります。やっぱり、うまいヘタを超えた「生きざま」とかが出るのだと思います。
これは仰る通りだと思います。音楽には「上手くて良い」「上手くて悪い」「ヘタだけど良い」「ヘタで悪い」の4種類があると思うんです。でも「上手くて良い」人が良い人であるとは限りませんよね。そのあたりが面白いな、と思うんですよ。
時として「なんであんなヤツが・・・」と思うような(もちろん悪い意味で)人が素晴らしい音を出しています。そういう人って人間的にはどうか、と思う場合があるんですが、音楽には真摯に取り組んでいるんでしょうね。だから良い音が出せるんだと思います。
>人の間をつなぐコミュニケーション手段を目的と履き違えてはいけませんね。
ステージでの音はお客さんに届けるものですからね。それが自己陶酔にしかなってないならミドリガメさんの仰るように手段と目的を履き違えてるんだと思います。
お互いの音を聴き合い、響かせ合って、音を作り上げるのが音楽の楽しさなんじゃないかな?上手くてもKYなのは困りますね。
小・中とコーラス部でピアノ伴奏をしてました。みんなの歌が主役だから、伴奏は、気持ち良く歌えるように、目立たず隠れず、歌に寄り添う、みたいな感じかな。(本当は歌いたくてたまらなかったんですけどね。)
アンジェラ・アキばりの伴奏だと歌いにくいかも、と思います(笑)
たぶん、自分しか見えていないのでしょうね。
そういえば、ヴォーカルを無視して、オーケストラと共演しても無視して、ひたすら弾きまくるギタリストもいますよね(汗)
歌の邪魔をするとは本末転倒です。
自分が好きな人なんでしょうね。
私も自分好きですが音楽ではもう一人の自分がいて見下ろしてるくらいがいいのでは。
特に歌のバックは難しいですが、主役を生かせない演奏はいけてません。
いくら上手くても、上手さをひけらかす「だけ」なら、教則本を作った方が良いです。
表現の方法として、技術はあった方が良いに決まってますが、「音楽」がわかってないと宝の持ち腐れですよね。
MINAGIさんの彼に対する対応も大人の対応だったと思います。(* ̄m ̄)
でも楽器を奏でるにはやっぱり良い音を出したいのは確か!
今日からアリゾナは夏休みに入りましたが
長男が私と一緒にギターを弾きたいらしいです
全然練習してなかった。。。(笑)
たしかにそうですそうです。いい人だったらいい音楽を奏でられるってワケでもないですね。
それに、経験を積むと他のメンバーの音がよく聴こえてきますよね?これがはじめから聴こえてくる人ってすごい才能があり人ですね~。
A氏はもっと他のひとの音をきかなきゃダメでしょう。それじゃ地方のジャズ界も変えられない・・・きっと。
木を見て森を見ず、みたいな感じ。
英語の勉強がしたいと思ったとしましょう。
英語は得意。だけど、得意な英語で何をするか、の段になってつまづく人もいることでしょう。
英語は表現するための道具。
きっと音楽もそう。
音楽はその表現技術が複雑で幅広いため、表現技法に興味が集中しがちですけど、本来は表現の一手段なのですよね。
逆に技術が未熟でも、聞き手の心を揺さぶる音楽もあります。
やっぱり、うまいヘタを超えた「生きざま」とかが出るのだと思います。
>自分のプレイしか見えない、歌い手を気持ち良く歌わせられないような人間が「この地方のジャズ界」とやらを変えられるワケがないと思うんです。
そうそう、そうですよね。
でもこれが、忘れがちなんだよな。。。
人の間と書いて「人間」
(あら、金八先生みたいですが。。。^^;)
人の間をつなぐコミュニケーション手段を目的と履き違えてはいけませんね。