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アンドリュー・ラウ&アラン・マック監督『インファナル・アフェア 無間序曲』その4

2017-08-10 15:50:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 「時間」「1997」の字幕。「書類番号IO 3142 ウォン・チーシン警部の殺人教唆事件。第11回内部調査審問を行う。警部補には指導力が必要。ラウ警官、君が昇進にふさわしい理由を簡潔に述べたまえ」「1995年4月に提出されたこのビデオの映像によれば、君が殺人教唆をした疑いがある」ウォン「認めます」「もう1997年だ。7月1日までに昇進が認められない場合は?」ルク「中国語で“王が変われば体制も変わる”と言います。心機一転頑張る覚悟です」「もう一度聞く。もしこれらの証拠がすべて無効と言ったら、やり直したいか?」ウォン「でも私は法を犯した人間です」「返還後、警官の士気はどうなる?」ルク「中国人は情にもろく、法の支えを必要としています。でも私は自分の精神力を信じます」ウォン「温情には感謝します。でも自分に自信が持てません」「ここで諦めたら、ルクに対し申し訳が立たんだろ? 戦いはまだ終わってない。我々はこの件の決着を望んでいる。ンガイ家に香港を牛耳らせてはならん。これはインターポールの資料だ。読んでから決めろ」。
 サム「タイで葬式を出した。数ヵ月前。女房の葬式だ。僧を招いて三日三晩お経を唱えてもらった。俺は三日間一滴の涙もこぼさなかった。でも埋葬の日、棺を客間に残し、葬儀屋は出て行った。腹が立ち、そいつらを殴ろうとしたとき、僧が言った。“タイの風習なんだ。死者には少しの間付き添ってやらねば。そうすれば安らかに眠れる”。俺は僧に聞いた。“棺の中にいない。それでも安らかに眠れるのか?”と。僧は俺の胸に手を置き、“大丈夫だ。奥さんはここにいる”。ちょうどここをタイ人の銃弾が貫いたんだ。俺は自分に言った。“もう引き返せない”」ウォン「香港に戻ってハウの罪を証言するのは危険だ」「あんたは男前だな。信用してる。そう言ってくれてうれしい。これからは?」「全力を尽くす。それが俺の仕事だ」「すべて解決したら警察を辞めろ」。サム、去りながら笑う。「あんた、変わったな」。妻子に近づくサム。
 ヤクを吸引するヤン。「安物を混ぜたな」と手下に暴力を働く。「ヤン、ほどほどに。下の者が怖がるぞ」「ボスの命令だ。不満なら病院にでも行け」。
 ハウ「彼らはお前より年上だ。学ぶことも多い。サンスクは数年で引退だ。今、問題を起こしたくない。返還後の議会への立候補者を集め、今夜パーティを開く。私が当選すればンガイ家は表社会に出られる」。
 パーティ。ハウ、皆に囲まれて人気者。男「チャン主任は黒社会が何よりもお嫌いです」。ウォンら、乗り込む。「ンガイさんの弁護士です。パーティなのでお話は後ほど」ウォン「いや、そうはいかん。1995年、複数の殺人事件に関与した容疑で逮捕する。同行を。発言はすべて記録され、証拠になりうる」。
 ハウ「殺人罪は成立しないだろう。だが組織のトップとして責任は免れない」手下「政党から“返還パーティ”への出席は辞退しろと」「立候補は?」「取り消されたよ」「北京の友人に相談してみようか?」「無駄だ。警察は“死人”まで味方にしている。死んだと思われたサムが検察側の証人に立つ。勝ち目はない」「ンガイ家がこんな事態になるとは」「何とかしろ」「どうしろと? 政府を脅すのか? 落ち着け。皆同じ船に乗ってる」「私は違う。弁護士だ。一緒にするな。“沈む船”に乗る気はない」。弁護士、去る。ハウに電話。「サムの妻子がタイにいる。お前に任せる。姐さん、母さんを連れて兄さんたちとしばらくハワイに」「大丈夫なの?」「もちろん。力になれず済まない」「何を言うの? 家族じゃない」「母さんを頼む」。
 サム「たとえ俺が証言したところで、ハウは数年食らうだけ。彼が俺を殺せば終身刑にできるがな」ウォンとサム、笑う。「感謝している。あんたのおかげで香港に帰れた」「仕事がある。話はまた。何か必要なら彼らに言え。お前の護衛役だ」。
 サム「調子はどうだ?」レン「CIB(情報課)に転属になった。来月警部補に昇進だ」「マリーは空港でお前に電話したか?」「サム兄貴、元気を出して」「ウォンが何か必要ならお前に言えって。力を貸すか?」。(また明日へ続きます……)

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アンドリュー・ラウ&アラン・マック監督『インファナル・アフェア 無間序曲』その3

2017-08-09 12:04:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 ヤン、ウォン、ルクとバスに乗ってる。ウォン「来週の水曜、ハウ自身が取引に立ち会う。14日だ。父クワンの命日。4人を殺すだろう」「なぜサムだけ殺されない?」ルク「サムも殺す気だ。数日尾行した。状況報告しろ。一緒に食事でもして」。(中略)
 サム「仕事でタイに行ってくる」マリー「あなたも殺される」「まさか」「ともかく空港で待ってて」。車で空港に急行し、走るマリー。
 ウォン「当面何もできない。様子を見よう」マリー「今夜ハウを殺す」「焦るな。冷静になれ」「4年前あなたが私にクワンを殺させた」「だから?」「もう引き返せない。ハウは全員始末するつもり」。
 警察。「今夜の作戦は極秘だ。3班編成だ。A班は待機。B犯も待機。C班は尾行だ。ハウが何者かと会う」。
 車で移動するハウ。同じくヤンら私服刑事たち。
 ハウ、車を停める。現れた2人の外国人と鞄を交換。そこへパトカーが急行。ハウらは刑事らに取り囲まれる。
 ルク「ハウ、弁護士が来るまで黙秘か?」「君たちの協力には感謝している」「どういうことか分からん」。
マリー、タイのサムに「すぐにタイから戻って。私がクワンを殺したの」。表情が固まるサム。
鞄の中からビデオテープを取り出すハウ。「デッキはどこかな?」。
殺される4人。
サムはタイで歓迎してくれた男とその一味を射殺。
ハウのビデオテープを再生すると、ウォンとマリーが、自分たちがクワンを殺したと話しているところが撮影されている。ハウ「4年前の今日、父は死んだ」(中略)ルクの部下「外国人2人は私立探偵でした」ハウ「あの二人には父を殺した犯人の捜査を依頼していた。まさか警察が法を犯し、父のようなよき市民を殺すとは。ルク警視、写っているのは警官だろ?」
警察で盗聴していたヤン、車で急行。
マリー、自宅を出ようとしたところを入ってきた男に首絞められる。
ハウ「そいつを逮捕するかどうかは、あんたが決めろ」。
ヤン、男を撃退し、マリーを助ける。
ハウ、去る。ルク「実に面白かった。カメラ写りがいいな」。ルクも去る。
バウの前に3人が土下座。ハウ「4年前にサムの女に金をもらったのか?」「ボス、チャンスをください」。ハウ、手下に拳銃を渡し、その場で3人を射殺させる。「4年前奴らはチャンスをフイにした。お前はチャンスをいかせるか?(拳銃を渡した手下に)お前はうちに7年いる。デカだな。我々は黒社会だ。邪魔者は殺(け)す。私を恨むな」。ハウ、手下を射殺。「ウォンに父は殺されたんだ」。殺された刑事の盗聴器を手にするハウ。遺体を燃やすハウの手下たち。
ハウ、バイクの男に銃撃され、危うく難を逃れる。
レン「サムから連絡があった。しばらくタイに潜み、帰りを待てとのことだ」「あなたの家族は?」「全員移住した」。
サムの手下「追っ手はまいた。早く逃げよう」サムの向かいの男「あんたは逃げられんぞ」「分かってる。女房が危ない。助けてくれ」「なぜ俺が?」「ボスを始末してやった。地位を狙ってただろ? それにお前を親友だと思って」。サムは拳銃を向いの男に差し出す。サムの手下「信じちゃ駄目だ」と拳銃を抑え込む。サム「下がれ」「ダメだ」「下がってろ!」。向いの男「許せ、サム」。銃声。
自宅のウォン、電話に出ない。
ウォン宅を訪れたルクにウォン「逮捕に来たのか? ハウを殺すつもりなら、話すことない」「上層部の連中はお前に理解を示してる」「殺しをそそのかしたのに?」「黒社会をつぶすため、やむを得なかった。内部調査委員会も軽い処分になるだろう。俺と戻ろう」「カードで決めよう」。ルク、エースを引く。ウォン「俺がいては皆の迷惑になる」。ルク、全部ダイヤのキングのトランプを見せ、「初めて組んでイカサマ師を逮捕した時のカードだ。長年お前の意見に従ってきた。今回は俺の意見に従ってくれ。お前は兄弟分だ。放っておけない。ロ・ガイは潜入捜査官だ。数日連絡がない。ヤンからも」。ウォンはしぶしぶ自分の車のキーをルクに渡す。ルクが車のエンジンをかけると、爆発が起こる。「誰か、誰か手を貸せ!」と泣き叫ぶウォン。やがてひざまずき、仰向けに倒れる。
マリー、レンに「なぜ嘘をついたの? サムに何かが? 夫を救わなくては。タイに行く」「行かないで」「あんたは警官の道を生きる」「行かせたくない。長年サムといて分かるだろ。多分今頃死んでる」「お黙り! 何のマネなの?」「行くな」「よくお聞き。私は女のボスよ。2度と現れないで」。(中略)
ヤン「女は今夜空港に行きます」「お前は?」。電話を切るヤン。
タクシーを降りるマリー。ヤンは向いに車をつけて、マリーの携帯に電話する。見つめ合う二人。やがて一台の車がやって来て、マリーを撃ち、逃走する。「私がクワンを殺したの。男のためなら何でもやる」。マリーの遺体。(また明日へ続きます……)

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アンドリュー・ラウ&アラン・マック監督『インファナル・アフェア 無間序曲』その2

2017-08-08 15:39:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 ルク「抗争を起こさせるな。死人が出る」ウォン「それが何だ。誰が指揮を取るかカードで決めよう」。ウォンはキング、ルクはエースを引く。
 ハウ「取り次ぐなといったろ」「やあハウ。コッワはマカオでカジノを開くらしい。政府に話はつけてあるんだそうだ。一緒に組むか?」「親父さんが死んで興味も失せた。マカオでお楽しみだったらしいな。カムディの女房と一緒に」。
 「マカオのカジノはハウと組むことにした」。
 「サムの動きは? コッワが上納金を払った? ハウは10分でコッワを落とした。なかなかのやり手だ。ハウが麻薬を入手したらしい」。
 夜の街。ウォン「何だ。マフィアが道路封鎖か?」。
 ハウからの電話「コッワがカネを払っても話し合う気はない」「私もだ」「ハクワイに代われ」「俺もカムディと同じだ」「最近皆仲がよさそうだな。一緒に密輸した麻薬を何者かに奪われ大損をしたとか。お前の倉庫で見つかったぞ。カムディに返そうか?」。顔がこわばるハクワイ。
 「俺たちのうち、コッワとハクワイが上納金を払った。サム、あんたもだろう?」「俺は払わない訳にはいかん。じゃあまた。ハウにカネを払ってこい」。
 ウォンに部下「ハウは食事に行きました」。
 ウォン「ハウ、夜中に食事か?」「父は長年ここで夜食を食べていた。それをまねただけだ」「4人を抑え込んだのは見事だった。今後も頼む。シャンパンで祝おう。クワンが死んだから」。いきり立つハウ側。ハウ「お前の死も祝うか?」サム「よせ、警察と争う気か? 御両人、ンガイ家は喪に服してるんだ。勘弁してくれ」。ウォン、去る。ハウ「父は賭博を開いてた。道端の安い賭場だ。だがついに尖沙咀で一番の大物になった。“世に出た者はいずれ消え去る”。それが今日になるとは。永遠に忘れない」。乾杯する一堂。(中略)
 警察学校。「27149。警察の中に犯罪者がいてはいかん。母の姓を名乗ってるな。ハウとは異母兄弟だろ? 隠してたのは校則違反だ。退学処分とする。去る前にある男と会ってくれ」。
 ウォン「警官になりたいのか?」レン「まだなれますか?」「理由次第だ」「善人でありたいのです」。
 ウォン「私に協力するのなら警官にしてやろう。兄と連絡できるか?」「やります」。
 刑務所に入れられる警察学校の学生たち。レンは同房の男にからかわれ、半殺しにする。(中略)
 夜の刑務所。レンに殴られた男が声を上げて泣いている。レン「キョン、どうした? 痛むのか?」「今日親父が死んだ。数時間でもいいから葬式に出たいと言ったが、看守に拒まれた」「泣くな」。泣き止まないキョン。
 「時間」「1995」の字幕。警察。ルク「気は確かか? ヤンを送り込む? ハウの異母兄弟だぞ」ウォン「だから?」「ヤンのファイルを」「機密書類のファイルは持ち出せない」「兄弟分だと思ってたのに」「兄弟分なら黙認してくれ」。ルク、バタンとドアを閉めて出て行く。
 荒れる男。「ゆっくり話し合え」「子供を堕ろしたんだぞ」「また作ればいい」女「付き合って4年。保釈申請も数十回。食事していても急に出入りでどこかに。子供をそんなふうにしたくない」。迎えの男がやって来る。
 ハウ「緊張してるのか?」レン「別に」「見どころがある。家に戻って手伝わないか? 日曜日は娘の誕生日だ。祝いに来てくれ。口をきくのも嫌か?」「別に」。
 レンにサム「もう警視か。将来総監も夢じゃないな。“専業警官”になれ」「冗談なのよ。笑ったら?」「2年間情報をくれたおかげだ。これまでは下っ端で雑魚を捕まえてきたが、そろそろ大物を捕まえろ。俺か、それともこの美人か? これからハウに会う。仕事だ」。サム、去る。レン「サムは姐さんに優しい」「人が好過ぎるの。あれから4年。ボスになれたのに。全部ハウに渡すなんて。いずれ“仇”を討つはず。4年間夜も眠れない」「心配しないで、マリー。俺が守る」。
 ハウ邸にてシャボン玉で遊ぶ子供たち。
 ハウ「不動産屋に算定してもらったら1億6千万だと。すごい数だ。最近の香港は異常だ。父がここを買った時は928万ドルだった。中国復帰も近い。移住しようと思う。母とも相談したが、ンガイ家の商売は全て軌道に乗った。君たちのおかげだ。商売を譲るつもりだ。さあ食事をしよう」。見つめ合う4人。
 サム「本当に移住を? 街が混乱する」ハウ「“手に入れるのはたやすく、手放すのは難しい”。これからはコカインが中心だ。あの4人はダメだ。南米産を少量扱うので手いっぱいだ。タイ側と話はついてる。すべてお前に譲る。ボスとして街を牛耳れ。タイで準備してきてくれ」「4人を片付けるのか?」。
 家族写真を撮るンガイ一族と4人の家族。(中略)(また明日へ続きます……)

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アンドリュー・ラウ&アラン・マック監督『インファナル・アフェア 無間序曲』その1

2017-08-07 11:08:00 | ノンジャンル
 WOWOWシネマで、アンドリュー・ラウ&アラン・マック監督、アラン・マック共同脚本、アンドリュー・ラウ製作の’03年作品『インファナル・アフェア 無間序曲』を見ました。
 「“阿鼻”という時間、空間、量の際限もなく苦しみ受け続ける地獄である。時の流れもない」の字幕。
 「初めての逮捕を覚えてる」。「1991」の字幕。「1980年12月12日のこと、先輩とパトロール中にニューワールドセンターで事件が発生し、急行した。現場はギャング同士の激しい抗争で十数人が倒れていた。辺り一面血の海。腕も転がっていた。先輩が『銃を抜け』と。新人の私は命令に従おうとした。でも銃を抜くより早く先輩が地面に倒れた。若い男に鉄パイプで腹を突き刺され、血が噴き出していた。私は無我夢中で、そいつの体に弾を6発ブチ込んだ。そいつは死なず、数年服役した。2年前見かけたよ、といい身なりで数人と酒を飲んでいた。尖沙咀(チムサアチョイ)のボス、クワンの手下どもと。善人が死に悪党が平然と生き延びるとは……。先輩の顔はもう思い出せない。今も後悔している。奴の頭に弾をブチ込むべきだった」。
警察署の取調室。ウォン刑事「世の中うまくいかん。そう思わんか? サム」。カップ麺をすするサム。「尖沙咀へは?」「2年前来た」「なぜ今まで逮捕しなかったと?」「俺が男前だから」「かもしれん。お前は信用できそうだ。お前が尖沙咀のボスになれば私も楽だ」「冗談はよせ」「あんたは6発撃っても悪党を殺せない善人だ」「からかうな。善人でも何でもない。クワンのお陰で今の俺がある。クワンを裏切りボスの座についたら、俺は人間のクズだぜ」「そういうと思った。ンガイ家に尽くす理由は義理だけか?」「師匠に言われた。『因果応報。物事には“時機”がある』。俺とあんたもこの先どうなるか。仕事に戻る」「もう。まだいいだろ?」「手下が待ってる」「全部持ってけ」「あんたにやる」「いいから行け。おい、裏口から出るか?」「デカと会うのは法に触れない。正面から堂々と出るさ」。サム、去る。(中略)
夜の繁華街。サングラス姿の若者、クワンを射殺。
ラウ「じゃあ、マリー」マリー「サムがあなたを警察に潜入させたいって。好きに決めて」「やります」「断ると思ってたのに。しばらく屯(トゥンムン)に隠れて。警察学校の新学期まで。お金は節約するのよ」「その時計はサムから?」「余計なことよ。今夜やったことはサムには秘密よ。帰りなさい。今夜は忙しい」。
キョン、柱に縛りあげられ、顔は血で汚れている。「街で生きるってことはやるかやられるかだ。“今夜は血を見る”って占いに出てた。大陸の連中に頼まれたんだ。キョン、ベンツはあるか?って。あるよと俺は答えた。だから車を物色しに来た。うまくいってりゃ今頃は大陸女とシケ込んでいた。そうだろ? タバコは?」ラウ「吸わない」マリー、タバコを出す。ラウ「もういい。車は無事だし」「そうだよ。勘弁してくれ。お前、堅気なんだろ? 面倒は起こしたくないはずだ。俺をこんなに殴って裁判官は俺とお前とどっちを信じる? 尖沙咀に行ったら気をつけな。俺が誰だか知ってるか? サムの子分だ。“バカのキョン”だ。お前を見かけたら痛い目に会わす」。ウォン刑事やって来る。キョン「刑事さん、救急車を」「バカ言うな。相手は今年の警察学校の主席だぞ」。(中略)
「ロ・ガイ、父クワンが死んだ。子供全員に知らせてくれ」。
4人が会食している。「ハクワイ、テレビを消せ。飯を食おう」「ンガイ・クワン殺害のニュースを見たい」「チン、お前の仕業だろう?」「そうだったら、言いふらしてるよ。コッワとカムディは?」「俺は仕事でマカオにいた。クワンの子供たちは俺を疑うだろうが、長男は医者、長女は嫁ぎ、三男はブラブラしてる。跡を継ぐのは次男のハウだろう」。
「護衛が離れていました」ハウ「いつも父さんが言っていた。“世に出た者はいずれ消え去る”と。疑わしいのおはコッワ、チン、ハクワイ、カムディの4人だ。母さんは眠っている。誰か棺に入れる葉巻を買ってきてくれ」。
警察署。「B犯は徳誠(タクシン)街、交差点で待機。C班は料理店のビルのオースティンロード側を監視。このビルには出口が2つある。徳誠街と~」。
ウォン「大事件だ」ルク「俺に連絡を随時入れろ」「ルク、全員に入れた。クワンの子分どもに動きがあるはずだ」。
「今日は14日。ンガイ家に上納金を払う日だ。言いにくいことだから、一番年下の俺が言う。もうンガイ家に払う義務はない」。乾杯する4人。(中略)
そこへサムがやって来る。「にぎやかだな。クーデターか。俺も入れてくれ」「メシを食いに来たなら歓迎するが、それ以外なら断る」。
ウォン「面倒が起きそうだ。4人が決着をつけるまで待とう」。(明日へ続きます……) 

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ポール・オースター『内面からの報告書』

2017-08-06 11:43:00 | ノンジャンル
 ポール・オースターの’13年作品『内面からの報告書』を読みました。
 冒頭の部分を引用させていただくと、
「はじめは、何もかもが生きていた。どんな小さなものにも脈打つ心臓があって、雲にさえ名前がついていた。ハサミは歩けたし、電話機とティーポットはいとこ同士、目と眼鏡は兄弟だった。時計の文字盤は人の顔であり、ボウルの中のエンドウ豆一粒一粒が違う性格を有し、君の両親の自動車前面に嵌(は)まったグリルは歯がたくさんあってニタニタ笑う口だった。ペンはどれも飛行船だった。コインは空飛ぶ円盤。木の枝は腕。石は考えることができたし、神はあらゆるところにいた。(中略)

 君のもっとも初期の思考。小さな男の子として、どのように自分の中に棲んだか、その残滓(ざんし)。思い出せるのはその一部でしかない。孤立した断片、つかのまの認識の閃きが、ランダムに、予期せず湧き上がってくる------大人の日々のいま・ここにある何かの匂い、何かに触った感触、光が何かに降り注ぐさまに刺激されて。少なくとも自分では思い出せるつもり、覚えている気でいるが、もしかしたら全然、思い出しているのではないのかもしれない。もしかしたら、いまやほとんど失われた遠い時間に自分が考えたと思うことをあとになって思い出したのを思い出しているだけかもしれない。

 2012年2月3日、君が最新作を書きはじめた次の日からきっかり一年後。すでに書き終えた冬の日誌。自分の体について書く。自分の肉体が経験したいろんな災難や快楽を列挙する。それはいい。だが、思い出せることを元に、子供のころの“心の中”を探索するとなれば、間違いなくもっと困難な作業だろう。ひょっとしたら不可能だろうか。それでも君は、やってみたい気持ちに駆られる。自分がたぐい稀な、例外的な考察対象だと思うからでなく、まさしくそう思わないから、自分自身を単に一人の人間、誰でもありうる人間と思うからこそ。

 記憶が全面的に偽りではないことを証してくれる唯一の証拠。それは、自分がいまも時おり、昔の考え方に舞い戻るという事実だ。いろんなことの名残りが、とっくに六十代に突入してもなお残っている。幼いころの万物有命観(アニミズム)は、心から完全に駆逐されてはいない。毎年夏になれば、芝生に仰向けに寝転がって漂う雲を見上げ、それらが顔に、鳥や獣に、州や国や架空の王国に変わるのを眺める。車のグリルを見ればいまだに歯のことを考えるし、コルク栓抜きはいまでも踊るバレリーナだ。外見はすっかり変わっても、君はまだかつての君なのだ------たとえもう同じ人物ではなくても。(後略)」

 また、訳者の柴田元幸さんによる「訳者あとがき」からも一部引用させていただくと、
「人は現在の自分からのみ成り立っているものではない。たとえば現在36歳のあなたは、36歳のあなたの下に27歳のあなたもいれば、その下には22歳、17歳、14歳、11歳、9歳……のあなたが、ひとつの地表の下にいくつもの違った地層が重なりあっている。36歳のあなたは、あくまで地表であるにすぎない。(中略)
 この本は、そのような発想に基づいて、地表の下に埋もれている過去の自分の地層を明るみに出そうとする試みである(中略)。
 最初の章「内面からの報告書」では、『冬の日誌』と同じく時間の流れに沿って、ただし12歳までの時期に限定して、「君」の精神に何が起きていたか、さまざまなエピソードを連ねて綴っていく。(中略)
 周りからずれている人間、というテーマは、「脳天に二発」(Two Blows to the Head)と題された、子どものころ観た二本の映画について詳しく語るというまったく違ったアプローチを採る次の章に持ち越される。どんどん小さくなっていく男を描いた『縮みゆく人間』と、脱獄囚として不当にも追われる男を描いた『仮面の帝国』(中略)。一方はSF、一方は社会派の、表面的にはまったく異なった二作だが、主人公が周囲からずれていて孤立しているという点では共通している。そしてこの二本の映画を観ている「君」は、明らかにこれらずれた人間に“なっている”。彼等の苦しみを「君」は生きている。(中略)
 「タイムカプセル」と題された三つめの章は、だいぶ趣を異にしている。章の大半が、のちに最初の妻となったリディア・デイヴィスに宛てて若いころ書いた手紙の抜粋と、それに関するコメントから成っているのである。著者たる現在のオースターは、このかつての自分について我々読み手に情報を提供するというより、むしろ数々の手紙を解読しながら、かつての自分という他者を我々とともに“発見”しているように思える。(中略)
 最終章「アルバム」は、一種のコーダというか、それまでの三章で綴られてきた文章を視覚的に補足する写真や図版が並べられている。」(後略)

 本書も文句無しの傑作です。私は最初図書館から借りたのですが、常にそばに置いておきたい本だと思ったので、すぐに購入しました。本好きな方に心からお勧めです。

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