朝日新聞の特集記事で苅部直さんが推薦していた、藤野可織さんの'13年作品『おはなしして子ちゃん』を読みました。10の短篇からなる本です。
『おはなしして子ちゃん』 私たちは小学生の時、小川さんの持ち物をよく隠して虐めていたが、小川さんは翌日には何もなかったように新しい持ち物を持ってきた。私は小川さんが理科室にある猿のホルマリン漬けを本気で怖がっていることを知っていたので、新たな虐めとしてそれを利用した。小川さんの縦笛をその瓶とすぐうしろの瓶のあいだにねじ込み、小川さんには猿が縦笛を持っていったのを見たと言ったのだ。小川さんが理科室に入ると、私は鍵をかけ、何事もなかったように教室に戻った。小川さんはその夜の11時に発見された。見つかった時、ホルマリン漬けの猿と向き合っておとなしくしていたそうだ。小川さんは一週間学校を休んだ後、登校してくると、私たちに「犯人はあなたたちと分かっている」と言い、「猿がさみしくてたまらないので、なんでもいいからお話をしてってせがんだので、いっぱい話をしてあげた」と言った。数時間後、私が1人で理科室に忍び込むと、小川さんが鍵をかけ、「猿の“おはなしして子ちゃん”の言う通りになった」と言って、去っていった。すると女の子の声で、ホルマリン漬けの猿が「おはなしをして」としきりに私にせがみ出し、私は頭に浮かぶありとあらゆる話をしていくと、猿はお話のおかげで元気になったと行って瓶から出てきて、故郷に帰るためにお前を食べて空腹を癒すと言った。私は思わず猿を抱きしめると、猿は風化して自ら崩れていった。それ以来、毎年、差出人不明の葉書が届くようになり、裏面にはよだれや果物の汁らしき染みと歯形がついているのだった。
『ピエタとトランジ』 転校生のトランジは私が彼氏の部屋に行くために電車の中でスカートを着替えていると、「どうせすぐ脱ぐのに、なんでわざわざ着替えるの」と声をかけてきて、私の彼氏のことを全て言い当てた。「私の近くにいるとみんなろくな目に遭わない」とトランジは言い、その直後に私は彼氏の死体を見つけ、その後も通称ピエタこと私とトランジの周りでは人が次々に死に始め、生き残った生徒は登校拒否をするようになり、学校は臨時休校するまでになった。私が食べていたアイスが、私の膝に頭を預けていたトランジに垂れると、トランジは「死ねよ」と毒づき、私も「おまえが死ねよ」と幸せな気持ちで言い返すのだった。
『アイデンティティ』 猿の上半身と鮭の下半身を縫い付け乾かして、人魚のミイラとして売られるはずだったのが、腕の悪い職人のために縫い付けた部分が見えた状態で乾いてしまった“人魚”が、箱に収められて1人きりになり、やっと自分が人魚である気がしてきたのに、箱を開けられて、また自分のアイデンティティを失い、結局、博物館で、「人魚のミイラ(猿と鮭の死骸を縫い合わせてつくったもの)19世紀・日本」というキャプションをつけられ展示されるようになるという話。
『今日の心霊』 自分でシャッターを押すと、必ず鮮明な心霊が写るが、自分にはその心霊が見えないというmicapon17を、我々がSNSで保護し、彼女に自分のブログに載せる写真を撮らせ続けているという話。
『美人は気合い』 滅びいく人類から胚盤胞を託され、生命体を求めて宇宙を漂う宇宙船であるわたしは、人工知能が壊れ、過去の時空座標も現在の時空座標もわからなくなっているが、胎盤胞を様々な形に変えて、「美しい、あなたは美人だ」と話しかけ続けるという話。
『エイプリル・フール』 1日に1つだけ嘘をつかないと死んでしまうと医者に宣告されたエイプリル・フールの人生と、彼女が46歳になった時、彼女と知り合い、彼女の恋人となった女性の私についての話。
『逃げろ!』 何者かに追われていると感じて、全速力で走り、通り魔殺人を行なう私が、ある日、やはり通り魔だった私の彼女に殺される話。
『ホームパーティはこれから』 今まで素晴らしい人生を歩んできた私が、ヘッドハンティングされた夫の会社の知人を今日自宅に招くため、料理に腕を振るい、丹念に掃除をし、化粧もきちんとして夫のいい妻として彼らを迎えようと準備している。しかし、まだ料理が終わらず、シンクには汚れた食器が山となり、ジャージ姿で化粧もしていない時、知人らは現れ、私には目もくれず、食堂に行って勝手に食事を始めてしまう。(明日へ続きます‥‥)
→「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
『おはなしして子ちゃん』 私たちは小学生の時、小川さんの持ち物をよく隠して虐めていたが、小川さんは翌日には何もなかったように新しい持ち物を持ってきた。私は小川さんが理科室にある猿のホルマリン漬けを本気で怖がっていることを知っていたので、新たな虐めとしてそれを利用した。小川さんの縦笛をその瓶とすぐうしろの瓶のあいだにねじ込み、小川さんには猿が縦笛を持っていったのを見たと言ったのだ。小川さんが理科室に入ると、私は鍵をかけ、何事もなかったように教室に戻った。小川さんはその夜の11時に発見された。見つかった時、ホルマリン漬けの猿と向き合っておとなしくしていたそうだ。小川さんは一週間学校を休んだ後、登校してくると、私たちに「犯人はあなたたちと分かっている」と言い、「猿がさみしくてたまらないので、なんでもいいからお話をしてってせがんだので、いっぱい話をしてあげた」と言った。数時間後、私が1人で理科室に忍び込むと、小川さんが鍵をかけ、「猿の“おはなしして子ちゃん”の言う通りになった」と言って、去っていった。すると女の子の声で、ホルマリン漬けの猿が「おはなしをして」としきりに私にせがみ出し、私は頭に浮かぶありとあらゆる話をしていくと、猿はお話のおかげで元気になったと行って瓶から出てきて、故郷に帰るためにお前を食べて空腹を癒すと言った。私は思わず猿を抱きしめると、猿は風化して自ら崩れていった。それ以来、毎年、差出人不明の葉書が届くようになり、裏面にはよだれや果物の汁らしき染みと歯形がついているのだった。
『ピエタとトランジ』 転校生のトランジは私が彼氏の部屋に行くために電車の中でスカートを着替えていると、「どうせすぐ脱ぐのに、なんでわざわざ着替えるの」と声をかけてきて、私の彼氏のことを全て言い当てた。「私の近くにいるとみんなろくな目に遭わない」とトランジは言い、その直後に私は彼氏の死体を見つけ、その後も通称ピエタこと私とトランジの周りでは人が次々に死に始め、生き残った生徒は登校拒否をするようになり、学校は臨時休校するまでになった。私が食べていたアイスが、私の膝に頭を預けていたトランジに垂れると、トランジは「死ねよ」と毒づき、私も「おまえが死ねよ」と幸せな気持ちで言い返すのだった。
『アイデンティティ』 猿の上半身と鮭の下半身を縫い付け乾かして、人魚のミイラとして売られるはずだったのが、腕の悪い職人のために縫い付けた部分が見えた状態で乾いてしまった“人魚”が、箱に収められて1人きりになり、やっと自分が人魚である気がしてきたのに、箱を開けられて、また自分のアイデンティティを失い、結局、博物館で、「人魚のミイラ(猿と鮭の死骸を縫い合わせてつくったもの)19世紀・日本」というキャプションをつけられ展示されるようになるという話。
『今日の心霊』 自分でシャッターを押すと、必ず鮮明な心霊が写るが、自分にはその心霊が見えないというmicapon17を、我々がSNSで保護し、彼女に自分のブログに載せる写真を撮らせ続けているという話。
『美人は気合い』 滅びいく人類から胚盤胞を託され、生命体を求めて宇宙を漂う宇宙船であるわたしは、人工知能が壊れ、過去の時空座標も現在の時空座標もわからなくなっているが、胎盤胞を様々な形に変えて、「美しい、あなたは美人だ」と話しかけ続けるという話。
『エイプリル・フール』 1日に1つだけ嘘をつかないと死んでしまうと医者に宣告されたエイプリル・フールの人生と、彼女が46歳になった時、彼女と知り合い、彼女の恋人となった女性の私についての話。
『逃げろ!』 何者かに追われていると感じて、全速力で走り、通り魔殺人を行なう私が、ある日、やはり通り魔だった私の彼女に殺される話。
『ホームパーティはこれから』 今まで素晴らしい人生を歩んできた私が、ヘッドハンティングされた夫の会社の知人を今日自宅に招くため、料理に腕を振るい、丹念に掃除をし、化粧もきちんとして夫のいい妻として彼らを迎えようと準備している。しかし、まだ料理が終わらず、シンクには汚れた食器が山となり、ジャージ姿で化粧もしていない時、知人らは現れ、私には目もくれず、食堂に行って勝手に食事を始めてしまう。(明日へ続きます‥‥)
→「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
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