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斎藤美奈子さんのコラムその124&前川喜平さんのコラムその85

2022-10-05 06:25:53 | 日記
 恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、同じく日曜日に掲載されている前川喜平さんのコラム。

 まず9月25日に掲載された「図書館の自由を侵すな」と題された前川さんのコラムを全文転載させていただくと、
「本紙22日夕刊によれば、文科省は8月に各都道府県教育委員会などに事務連絡を出し、公立図書館や学校図書館で拉致問題に関する図書を充実するように求めていたという。この事務連絡はさらに、テーマ展示などで児童生徒や住民が手にとりやすい環境を整備することも求めていた。
こういうことを文部行政がやってはいけない。日本図書館協会の「図書館の自由に関する宣言」は、図書館が資料収集と資料提供の自由を有することをはっきり謳(うた)っている。文科省の事務連絡はこの図書館の自由を侵すものであり、教育基本法16条が禁じる教育への「不当な支配」にも当たると考えられる。
 僕は初め、この事務連絡は政治の圧力によって発出させられたのかと思ったのだが、どうもそうではないようだ。特定失踪者家族会という団体が内閣官房の拉致問題対策本部局に要請し、同事務局が文科省と協議した結果発出されたということらしい。そうだとするとなおさら心配になる。文科省の図書館行政担当者たちは、この事務連絡を出すことが「図書館の自由」延(ひ)いては国民の「知る自由」を侵すことになるということに気づかなかったのだろうか。文部行政は人間の精神的自由を最大限に尊重しつつ行わなければならない。文科省の後輩諸氏には、そのことを肝に銘じてほしいのである。」

 また10月2日に掲載された「ユウエンナルスメラミクニ」と題する前川喜平さんのコラム。
「安倍氏の国葬で自衛隊の音楽隊が演奏した曲の名を見て戦慄(せんりつ)を覚えた。
 黙祷(もくとう)の際に演奏された曲は「國(くに)の鎮(しず)め」。明治時代に作られた軍歌で、その歌詞はこうだ。「國の鎮めの御社(みやしろ)と斎(いつ)き祀(まつ)らふ神霊(かむみたま)今日の祭りの賑(にぎわ)ひを天翔けりても御覧(みそなわ)せ治まる御世を護(まも)りませ」。御社とは靖国神社や護国神社のこと。神霊とは戦死者の霊のこと。これは明かに国家神道の歌だ。国の機関が行う行事でこのような曲を演奏することは憲法20条3項の政教分離原則に違反している。
 天皇の使いの拝礼の際に演奏された曲は「悠遠なる皇御國(すめらみくに)」。これも戦前に作られた曲かと思いきや、作曲者は自衛隊の音楽隊員で、初演されたのは2019年だという。悠遠とはアマテラスオオミカミに始まる皇統の古さを表す言葉だ。皇御國とはアマテラスがその孫であるニニギノミコトに与えた神勅により代々の天皇が治める国のことだ。この曲名は戦前の國體(こくたい)思想そのものではないか。僕はわざと國という旧字を使って今は通用しない観念だということを示しているのだが、この曲の作者は逆に國體を復活させたいと思ってこの字を使ったのではないか? この曲名は天皇を主権の存する国民の総意に基づく象徴とする日本国憲法に反している。せめて曲名を「平和な日本国」にでも変えてほしい。」

 そして、10月5日に掲載された「闘う女性作家」と題する斎藤さんのコラム。
「1961年、住井すゑが『橋のない川』の第一部を刊行したのは59歳のときである。31年かけて第七部(92年刊)まで刊行されるも、97年、作者の死去で未完のまま終わった。
 『橋のない川』は部落差別を告発した小説として知られる。誠太郎&孝二兄弟の少年・青年時代を描いた物語は波乱に富み、今読んでも新鮮。60年以上読み継がれてきたロングセラーだ。
 水平社宣言から、今年で百年。日本近代文学館(東京都目黒区)では、すゑの業績をたどった特別展「生誕120年 住井すゑ、95年の軌跡」が開かれている。
 1902(明治35)年、奈良県に生まれたすゑは少女雑誌の投稿者として鳴らし、小学校教師を経て17歳で上京。講談社の編集担当に採用された。ところが翌年、女性のみ日給という差別待遇に抗議して退社してしまうのである。
 その後は、同棲(どうせい)相手で後に結婚した作家の犬田卬(しげる)が病身だったこともあり、四人の子を育てながら童話を書きまくって生計を支えた。『橋のない川』に着手したのは夫を看取(みと)った後である。
 若い頃は無産階級の女性解放運動に参加し、晩年は自宅敷地内の集会所で読者と対話を続ける。絶大な人気を誇る一方、論争の火種も提供。闘う作家だったのだと再認識した次第。特別展は11月26日まで。お見逃しなく。」

 どれも一読に値する文章だと思います。


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