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ハワード・ホークス監督『バーバリ・コースト』その2

2019-11-19 06:06:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

 傍役では(といっても端役というのではない)、エドワード・G・ロビンソンの子分の殺し屋の役で、すでに(というのも、その後、数々の西部劇やギャング映画で同じような悪役を演じつづけることになる)黒づくめのブライアン・ドンレヴィが出ているのが印象的だが、何と言っても絶品はウォルター・ブレナンで、「誰もがひと目見ただけで笑い出してしまうだろう」とホークス監督は言い、「最高の名優」とすら絶賛している。「虹を掴んだ男 サミュエル・ゴールドウィン」(A・スコット・バーグ、吉田利子訳、文藝春秋)には、こんなエピソードが綴られている。

 『バーバリ・コースト』の端役から俳優の道を踏みだし、不器用ながらやがては映画界でもっともキャリアの長い性格俳優の一人となった人物がいる。ホークスが「老いぼれ悪党」と呼ばれる飲んだくれ役を探していたところ、撮影所員の一人が「ぴったりのやつを知ってますよ」と言った。ホークスはその男、ウォルター・ブレナンに衣裳をつけて台詞を言ってみろと命じた。かかしのような俳優が入ってきたとき、ホークスは吹き出した。監督が台詞を言えるかとたずねると、ブレナンは「入れてですか、なしでですか」とたずねた。「入れてかなしかとは、何のことだね」とホークスが聞いた。「入れ歯」とブレナンが答え、これでこの役は彼のものになった。ブレナンの出番は三日で終わるはずだったが、ホークスは━━入れ歯なしの━━ブレナンを一ヵ月ほど引きとめた。ブレナンはその後9本のゴールドウィンの映画に出演している。

 ハワード・ホークス監督も、『バーバリ・コースト』のあと、『大自然の凱歌』(1936)、『ヨーク軍曹』(1941)、『脱出』(1944)、『赤い河』(1948)、『リオ・ブラボー』(1959)とウォルター・ブレナンを永遠の相棒のように使いつづけることになる。

 以上が山田宏一さんの文章です。

映画ではヒロインと一緒の船で来た正義漢あふれる男が、新しい新聞社を立ち上げ、エドワード・G・ロビンソンの暴力に支配されている町に「法と秩序」を導入しようとし、ブライアン・ドンレヴィにあっさりと殺されてしまうのだが、その遺言が町の者たちに復讐心を与え、エドワード・G・ロビンソンのいいなりの判事に対抗するため、自警団を結成し、まずブライアン・ドンレヴィを公開処刑する。山で砂金を集めて、船でニューヨークに帰ろうとしていた青年はいかさまのルーレット係のヒロインによって、一旦はすっからかんになり、せめてニューヨークへの船賃を稼ぐためと、エドワード・G・ロビンソンに雑用係として雇われる。やっと船賃が貯まった時、青年はヒロインと再び出会い、二人は恋に落ちる。「ヒロインが男といた」という目撃証言がエドワード・G・ロビンソンにもたらされ、「絶対に嘘はつくなと言ったはずだ」とヒロインに対し激怒するエドワード・G・ロビンソン。彼はヒロインを部屋に監禁し、自警団に対抗するため手下を集めるが、軍資金が足りないことを知る。それは先程、ニューヨークに帰る青年のためにヒロインがいかさまルーレットでわざと負け、数万ドルの穴を開けたからだったことがここで明らかとなる。エドワード・G・ロビンソンは青年を追うために出かけるが、青年は2階の窓からヒロインの部屋に侵入し、二人で逃げることにする。霧の中、船をめざして小舟をこぐジョエル・マックリーと、追ってくるに違いないエドワード・G・ロビンソンの存在に怯えるヒロイン。やがてジョエル・マックリーの小舟はエドワード・G・ロビンソンたちに見つかり、ジョエル・マックリーは銃で撃たれる。とどめを刺そうとするエドワード・G・ロビンソンに、ヒロインは「これからは彼を愛したようにあなたを愛するので、この人の命だけは助けてほしい」と懇願し、その願いはかなえられる。船に乗船したジョエル・マックリーは幸い命に別状はないと分かり、ヒロインはエドワード・G・ロビンソンとともに船を降りる。しかしエドワード・G・ロビンソンはいつまでも泣いているヒロインに、「そんなに泣く女は嫌いだ。他の男のおさがりを自分はもらいたくはない」と言い放ち、先に進もうとするが、自警団の人々に既に囲まれていたのだった。エドワード・G・ロビンソンは堂々と歩いていき、自警団に飲み込まれていく様子が示され、映画は終わる。
 あくまで「法と秩序」に基づいた町づくりを目指す新聞社の社長は、脚本を書いたベン・ヘクトとチャールズ・マッカーサーの二人が元新聞記者であったことと無縁ではないような気もしますし、遺作で『大空港』の見事な音楽を作ったアルフレッド・ニューマンがここでも素晴らしい音楽を奏でてくれています。映画ファンなら必見の映画です。

 →サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

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