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宮崎誉子『派遣ちゃん』

2009-05-27 17:57:00 | ノンジャンル
 宮崎誉子さんの'09年作品「派遣ちゃん」を読みました。二編の中編と「おわりに」と題されたあとがきからなっています。
 「青瓢箪」は、大学卒業後就職せず、労働をテーマにした小説家になると言って部屋に閉じこもっている27才の兄を持つみゆきが、新たな派遣先としてパソコンの出荷前点検の仕事につきます。派遣仲間や様々な人と会話しながら、研修の毎日を過ごしますが、兄の肩を持つ母と兄の身勝手さについにキレたみゆきは家出をし、それをきっかけに兄は小説家になることをあきらめ、一日だけのバイトに付き合ってくれとみゆきに言います。倉庫のバイトに兄を連れて行くと、兄は仕事の途中で逃亡し、みゆきが家に帰って兄の部屋を探すと、やはり小説など書いていないのでした。そして兄はその後悪びれずに帰宅し、みゆきはそんな兄を羨ましく思うのでした。
 「欠落」は、19才の僕・鳩山太一は高い時給に惹かれて宅配のコールセンターに応募し、高い競争率を勝ち抜いて派遣として研修を受け始めます。周りの女性のおもちゃにされ、社員の女性に話し掛けられ、唯一ホッとするのは学生時代の知り合いで今は引きこもっているヤクマルの家に遊びに行く時です。前のコンビニでのバイトで一緒だった美雪さんは今はテレオペをしていますが、その時の店長と不倫していて、店長に離婚しろと迫っています。娘がかわいくて離婚したくない店長は、僕の目の前で美雪さんに刺され、僕はその場から逃げ出し、ヤクマルの家に行きます。そして話しているうちに、生きる勇気を取り戻してくるのでした。
 どちらの中編とも会話が圧倒的に面白く、またその合間にある、心情を説明する一文も秀逸で、1日もかからず一気に読んでしまいました。また「欠落」のラストの会話には、何か鬼気迫る凄みを感じ、単に面白いだけではなく、人間の本質をも描ききる力を持った文章だとも思いました。現役の小説家の中では、宮崎さんの作品の面白さは一番だと思います。次回作、今から期待です! なお小説の詳細に関しては、私のサイト(http://ceres.dti.ne.jp/~m-goto)→「Favorite Novels」→「宮崎誉子」のところにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。

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