スタッズ・ターケルの'03年作品「希望―行動する人々」を読みました。右傾化がますます進んでいった9・11以降のアメリカの中でも、まだ希望を失わずに生きている人々がいることを示す意図で書かれたインタビュー集です。なお、原題は「Hope Dies Last:Keeping The Faith In Difficult Times」、邦訳すると「希望は最後まで死なない:困難な時にも信念を失わない人々」とでもいった意味です。
私の読んだ翻訳本(文春文庫)では原著の半分ほどしか訳出されていなかったようですが、インタビューされている人々は、デヴィッド・ブキャナン(ホームレス相手に往診する医師、31才)、リン・シーバード(サービス業従業員国際組合組織員、23才)、フランシス・ムーア・ラッペ(食糧問題専門家、作家、年齢不詳)トム・ヘイドン(ジェーン・フォンダの元夫、元反戦活動家、民主党州議会議員、62才)、リリアナ・リネアレス(政治亡命した夫とペルーから移住したハーヴァード大学契約職員、38才)、グレッグ・ハルパーン(大学労働者の地位向上のために座り込みをした元ハーヴァード大学生、24才)、モリー・マグラス(反搾取工場学生組織で活動するウィスコンシン大学生、25才)、ボブ・ヒマウァー(学生労働運動連合で活動する元ウィスコンシン大学生、23才)、ウサマ・アルシャイビ(政治亡命した元イラク人、32才)、サム・オサキ(強制収容所体験を経た人々の中でシカゴで初めて公立高校の校長になった日系二世、77才)、ジョン・ケネス・ガルブレイス(世界的に著明な経済学者、94才)、ウォレス・ラスムーセン(たたき上げの経営者、88才)、ヴィクター・ルーサー(全米自動車労働組合設立メンバー、90才)、キャロル・トラヴィス(全米最大の労働組合の役員、父娘ニ代にわたる労働指導者、60才)、リロイ・オレンジ(知事の恩赦によって釈放された元死刑囚、50才)、ディアドル・メリマン(元アルコール依存症患者、元ホームレス、42才)、デニス・クシニッチ(民主党下院議員、五回目の挑戦で当選、56才)、ダン・バートン(幼児期に父親からの虐待を経験した元共和党下院議員、65才)、ロベルタ・リンチ(公務員の団体交渉権を得るために闘う組織の幹部、53才)、エレイン・ジョーンズ(公民権法の向上に努める弁護士、年齢不詳)、デボラ・ベイリー(フリースクール教師、年齢不詳)、アーロ・ガスリー(ウディ・ガスリーの息子、ツアー活動を通じて環境・人権問題を問いかける歌手、55才)、ピート・シガー(ハドソン川の浄化運動を先導しそれに成功した歌手、83才)、キャシー・ケリー(平和運動家、年齢不詳)の24人です。
この本で知ったことは、キング牧師暗殺、ロバート・ケネディの暗殺などがあった60年代後半に刑務所で頻発した暴動が通算500回にも及び、それはアメリカの歴史において南北戦争以来の出来事であったこと、そして経済制裁は相手国の弱者を最初に直撃すること(ちなみにイラクへの経済制裁によって死んだイラクの乳幼児は100万人を越えたそうです)でした。また、印象的だったのは「僕はシニカルであるよりは、うぶな愚か者でありたいと強く思っています。世の中をより良くできると信じて疑わないことで、馬鹿な奴と言われてもかまいません。」「(他人を手助けすることは)ただ自分が、自分だけがいい気分を味わうために自分の人生を捧げるよりは、よっぽどいいのではないでしょうか。」と語るグレッグ・ハルバーンの言葉、9・11以降のアラブ人バッシングの嵐が吹き荒れる中で、「この国は移民の国である。(中略)自らの文化、民族、そして自分自身について声高に語ることはこの国の人間の義務である」と演説した裁判官の話を引用するウサマ・アルシャイビの言葉、「私はいまだにこの国を信じています。信じられなければ、物事のいい面を見ようと努力しようと思っています。水が半分入っているコップを見たら、半分しか入っていないのではなく、半分も入っている、と考えたほうがいい。」と語るサム・オサキの言葉、「本が読めれば、けっして寂しくはならない」と言っていた母の言葉を引用するディアドル・メリマンの言葉、そして9・11のあと、「どうか報復をしないでください。亡くなった私たちの愛する者の名前で一般人を殺さないでください。」「私たちの死んだ息子はけっして暴力による報復を望まない」という声明を一部の遺族が表明していたことを明らかにするキャシー・ケリーの発言でした。特に最後に掲載されたキャシー・ケリーの「強靱なる優しさ」とも言えるその生き方には胸を熱くさせられました。「クリフォードとヴァージニア・ダーを偲んで」と題されたこの本はおそらくターケルの遺作となったのだと思います(この本が作られた時既に彼は90才を超えていました)が、年齢を全く感じさせない若々しくも瑞々しい素晴らしい本に仕上がっていると思います。文句無しにオススメです。
私の読んだ翻訳本(文春文庫)では原著の半分ほどしか訳出されていなかったようですが、インタビューされている人々は、デヴィッド・ブキャナン(ホームレス相手に往診する医師、31才)、リン・シーバード(サービス業従業員国際組合組織員、23才)、フランシス・ムーア・ラッペ(食糧問題専門家、作家、年齢不詳)トム・ヘイドン(ジェーン・フォンダの元夫、元反戦活動家、民主党州議会議員、62才)、リリアナ・リネアレス(政治亡命した夫とペルーから移住したハーヴァード大学契約職員、38才)、グレッグ・ハルパーン(大学労働者の地位向上のために座り込みをした元ハーヴァード大学生、24才)、モリー・マグラス(反搾取工場学生組織で活動するウィスコンシン大学生、25才)、ボブ・ヒマウァー(学生労働運動連合で活動する元ウィスコンシン大学生、23才)、ウサマ・アルシャイビ(政治亡命した元イラク人、32才)、サム・オサキ(強制収容所体験を経た人々の中でシカゴで初めて公立高校の校長になった日系二世、77才)、ジョン・ケネス・ガルブレイス(世界的に著明な経済学者、94才)、ウォレス・ラスムーセン(たたき上げの経営者、88才)、ヴィクター・ルーサー(全米自動車労働組合設立メンバー、90才)、キャロル・トラヴィス(全米最大の労働組合の役員、父娘ニ代にわたる労働指導者、60才)、リロイ・オレンジ(知事の恩赦によって釈放された元死刑囚、50才)、ディアドル・メリマン(元アルコール依存症患者、元ホームレス、42才)、デニス・クシニッチ(民主党下院議員、五回目の挑戦で当選、56才)、ダン・バートン(幼児期に父親からの虐待を経験した元共和党下院議員、65才)、ロベルタ・リンチ(公務員の団体交渉権を得るために闘う組織の幹部、53才)、エレイン・ジョーンズ(公民権法の向上に努める弁護士、年齢不詳)、デボラ・ベイリー(フリースクール教師、年齢不詳)、アーロ・ガスリー(ウディ・ガスリーの息子、ツアー活動を通じて環境・人権問題を問いかける歌手、55才)、ピート・シガー(ハドソン川の浄化運動を先導しそれに成功した歌手、83才)、キャシー・ケリー(平和運動家、年齢不詳)の24人です。
この本で知ったことは、キング牧師暗殺、ロバート・ケネディの暗殺などがあった60年代後半に刑務所で頻発した暴動が通算500回にも及び、それはアメリカの歴史において南北戦争以来の出来事であったこと、そして経済制裁は相手国の弱者を最初に直撃すること(ちなみにイラクへの経済制裁によって死んだイラクの乳幼児は100万人を越えたそうです)でした。また、印象的だったのは「僕はシニカルであるよりは、うぶな愚か者でありたいと強く思っています。世の中をより良くできると信じて疑わないことで、馬鹿な奴と言われてもかまいません。」「(他人を手助けすることは)ただ自分が、自分だけがいい気分を味わうために自分の人生を捧げるよりは、よっぽどいいのではないでしょうか。」と語るグレッグ・ハルバーンの言葉、9・11以降のアラブ人バッシングの嵐が吹き荒れる中で、「この国は移民の国である。(中略)自らの文化、民族、そして自分自身について声高に語ることはこの国の人間の義務である」と演説した裁判官の話を引用するウサマ・アルシャイビの言葉、「私はいまだにこの国を信じています。信じられなければ、物事のいい面を見ようと努力しようと思っています。水が半分入っているコップを見たら、半分しか入っていないのではなく、半分も入っている、と考えたほうがいい。」と語るサム・オサキの言葉、「本が読めれば、けっして寂しくはならない」と言っていた母の言葉を引用するディアドル・メリマンの言葉、そして9・11のあと、「どうか報復をしないでください。亡くなった私たちの愛する者の名前で一般人を殺さないでください。」「私たちの死んだ息子はけっして暴力による報復を望まない」という声明を一部の遺族が表明していたことを明らかにするキャシー・ケリーの発言でした。特に最後に掲載されたキャシー・ケリーの「強靱なる優しさ」とも言えるその生き方には胸を熱くさせられました。「クリフォードとヴァージニア・ダーを偲んで」と題されたこの本はおそらくターケルの遺作となったのだと思います(この本が作られた時既に彼は90才を超えていました)が、年齢を全く感じさせない若々しくも瑞々しい素晴らしい本に仕上がっていると思います。文句無しにオススメです。
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