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ポール・オースター『空腹の技法』

2010-04-18 12:25:00 | ノンジャンル
 ポール・オースターの'92年作品『空腹の技法』を読みました。オースターの書いたエッセイ、序文、彼が受けたインタビューなどが収められた本です。
 オースターがまだ無名だった'70年代に、文学とはおよそ無関係なフランス語の本を英訳して生計を立てるかたわら、依頼原稿ではなく、そのときそのときに自分が惹かれていた作家や作品についてじっくり書いた文章(具体的には、ベケット、ツェラン、カフカ、ウンガレッティ、ジャベスといった二十世紀文学の巨人たちや、ジョン・アシュベリー、ローラ・ライディングなどの現代アメリカ詩人を論じたもの)が掲載されている一方、やはりこの時期に、ジャック・デュパン、アンドレ・デュプーシュといった現代フランス詩人の作品を英訳したり、出版社の依頼で二十世紀フランス詩の対訳本アンソロジーの編纂を進めていたことから、そうした翻訳書・編書のために書いたいくつかの序文を中心に、現代アメリカ画家の展覧会へ寄せた文章なども加えられていて、'70年代の活動を経て小説家となった現在に至るまでの半生を語った4つのインタビューも掲載されています。(以上は、訳者の柴田元幸さんによるあとがきを元に書かせていただきました。)
 面白かったのは、(環境への違和感、周囲の人間への違和感から)すべての作家、すべての創造者はある種の追放状態を生きていて、書物こそがもっとも自分を見出しやすい場になっているだけでなく、それが自分にとっての真理を見出す場になっていると語るエドモン・ジャベスの言葉、オースターが小説を書く時、常に頭の中で最上位を占めているのは物語であり、エレガントな描写、気を惹くディテール、等々のいわゆる「名文」も、書こうとしている物語に関連していなければ、消えてもらうしかなく、物語に対するわずかな邪魔も、脱線も退屈を生み、読者は退屈を最も忌み嫌うのだという、やはりオースターによる言明(私もまったくその通りだと思いました)、はたまた自分自身が読みたい本を書くのだというオースターの宣言、偶然は現実の一部だというオースターの指摘などでした。また、エドモン・ジャベスの「問いの書」、ジョルジュ・ペレックの「人生 使用法」は是非読んでみたいと思いました。
 オースターファンのみならず、人生に迷っている方にもオススメです。なおもっと詳しい内容に関しては、私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)の「Favorite Novels」の「ポール・オースター」の場所にアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。

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