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リチャード・フライシャー監督『ソイレント・グリーン』&ボリス・バルネット監督『トルブナヤ通りの家』

2019-11-16 06:22:00 | ノンジャンル
 先日、NHK・BSプレミアムで、リチャード・フライシャー監督の1973年作品『ソイレント・グリーン』を観ました。
 写真でアメリカの歴史を描く冒頭。(見事な編集です。)“2022年 ニューヨーク市 人口4千万人”の字幕。ソーン刑事(チャールトン・ヘストン)は殺人を犯したサイモンソンの行方を追って捜査をしますが、やがてサイモンソンがソイレント社の取締役で、既に何者かによって暗殺されたことを知ります。相棒のソル(エドワード・G・ロビンソン)はソイレント社のホームに行き、自ら薬を飲み、ベッドに寝ると、目の前には美しい自然の映像が次々と映し出され、それを見ながら亡くなります。ソイレント社の廃棄物処理場に侵入したソーンは、市民の間で人気の食糧ソイレント・グリーンが人の遺体から作られていることを知ります。それを知ったソイレント社に雇われた暗殺者(チャック・コナーズ)はソーンを殺しにきますが、ソーンはそれを撃退するも、腹に一発を受け、重傷となります。担架に乗せられながら、「ソイレント・グリーンは人間から作っている」と叫ぶソーン。彼の血にまみれた手のアップで映画は終わります。
 他にもジョセフ・コットンが出演していて、リチャード・H・クラインによる撮影はとても美しく、魅力的でした。編集もてきぱきとしていて、全編で1時間40分を切る長さで、よくまとまった映画だったと思います。

 また11月13日の夜、国立フィルムアーカイブで、柳下美恵さんの即興伴奏付きで、ボリス・バルネット監督の1928年作品『トルブナヤ通りの家』も観ました。
 田舎からやって来た娘が家政婦になるのですが、主人の夫婦は彼女が家政婦の組合に入るのなら首だと言います。娘は健気に働きますが、主人夫婦の人使いの荒さに疲れ果てます。そこへ訪ねてきた家政婦の組合員が、彼女にも組合員になるように勧め、字が書けない娘の代わりに組合員申込み書を書いてあげ、今晩行なわれる演劇にも誘います。娘は椅子に座ったまま居眠りしていたところに主人が帰ってきて、彼女が手にしていた組合のチラシを見ると激昂し、今晩は一晩中家の留守を預かるようにと命じます。娘はそれでも主人の目をかいくぐって演劇を観に行きますが、そこで革命家が暗殺される場面になると、本当に革命家が射殺されたと思いこみ、舞台に上がると、暗殺者を棒で叩きのめし、樽の上に載って人々を扇動し始めます。それを見て拍手喝采をする労働者たち。そして労働組合の市議選の候補には何と、その娘が選ばれることになります。それを喜び、彼女の帰宅を歓迎しようと、アパートの階段の掃除を始める隣近所の友人たち。彼らはご馳走を作って娘を待っていたのですが、先に帰って来た男主人はそれを見て激怒し、皆を部屋から追い出します。帰って来た娘は、男主人に叩かれ、「すぐに出ていけ!」と言われます。町を放浪する娘。やがて以前に娘に組合員になることを勧めた先輩組合員が路上で娘を発見し、折しも市議選の投票をするために長い列をなしている労働者たちの中に入れてくれます。
最初のうちは先輩組合員の胸に顔をうずめ、泣きじゃくっていた娘でしたが、やがて旗を持ち、歌(柳下さんはここで『インターナショナル』を弾いていました)を歌い、元気いっぱいに行進を始めます。そして選挙の結果、娘は市会議員に選ばれます。まだそれを知らない先輩組合員は娘に組合の事務の仕事を紹介し、男主人は警察に連れていかれ、娘が今まで働いた分の超過勤務分と有給休暇分の費用を娘に支払うことを命じられ、男主人がそれを嫌がると、今度は娘を殴ったことから暴行罪で起訴されるだろうと検察官に言われ、そこで唐突に映画は終わるのでした。
 セルゲイ・コズロフスキーが作ったアパートの階段の装置がよくできていて、また猫やアヒルなどの動物がさかんに出て来て、楽しめました。まだまだ粗削りのある「映画」だと思いましたが、娘が首になり、組合員の女の胸に顔をうずめて泣くシーンや、男主人&女主人の醜い表情のアップ、冒頭の消灯していくアパートの夜の様子を撮ったロングショット、そしてそれに続く街が朝を迎える印象的なショットなど、見どころは満載でした。ボリス・バルネットの最良の作品ではないと思いますが、わざわざ東京まで出て見に行った価値は十分にあったと思います。(ちなみにチラシでは「1920年代のソ連のコメディ映画を代表する1作」と紹介されていましたが、私はコメディ映画というよりも、やはり一種の「革命映画」だと強く思いました。)ボリス・バルネットの名前をまだ知らなかった方は是非覚えておいてほしいと思います。

 →サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

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