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増村保造監督『濡れた二人』その6

2013-08-29 06:54:00 | ノンジャンル
 今週の火曜日、横浜そごうの9階にある「よこはま新都市ホール」にて行われた、中井貴惠さんの「音語り/お早よう」に母と行ってきました。松本峰明さんのピアノの伴奏に合わせて、小津監督のプロデューサーだった山内静夫さんが映画の脚本を潤色して作った1時間余りのストーリーを中井さんが朗読するというもので、一人で何役もこなさなければならないのに、映画がそのまま中井さんの頭の中に入っているようで、特に杉村春子さんと高橋トヨさんと長岡輝子さんの意地の悪い科白が本人そっくりで、楽しめました。(肝心のおならのシーンが佐田啓二のアパートでしか味わえなかったのは残念でしたが‥‥。)次回はやはり新都市ホールでの「秋日和」と円覚寺での「お早よう」だそうです。(円覚寺での朗読会は、小津監督と中井さんの父である佐田啓二さんの墓があるということで、毎年行われているそうです。)小津ファンの方だけでなく、朗読劇が好きな方にも是非お勧めしたいイベントでした。

 さて、またまたまたまた昨日の続きです。
 乱暴に障子と雨戸を閉め、手をはたくカツエ。シゲオは茂みの中で立ち上がり、胸をかきむしり、ペンダントを引きちぎると、それを地面に叩きつけます。去るシゲオ。部屋の中で足を組み、頬杖をつくマリコ。
 翌朝、スーツケースを持ちスーツ姿で一人去るマリコ。岸壁にいた清江は「来たわよ、奥さんが」と言い、マリコとシゲオは対面します。マリコがスーツケースを下ろすと「何しに来たんだよ? 帰れよ。俺はあんたみたいに遊んじゃいられないんだ。漁に出るんだよ!」。マリコは無言で微笑みます。「これまでのことはみんな嘘だ! それぐらい分かってるはずだ。いい年して本気にしたのかよ! あんただって旅先だ。暇つぶしにやったんだろ? 東京へ帰りゃ、すぐ忘れるさ! 俺結婚するなら、もっとまともな女と結婚するよ! あんたみたいにふしだらな女なんか、誰が相手にするもんか!(清江を抱き)俺来年こいつと一緒になるんだ。(清江、不敵な表情)もう3年も前から決まってるんだよ。あんたとはちょっと遊んだだけさ」。マリコ、歩み寄り「あたし、これを返しに来たのよ」とペンダントを見せます。「夕べ、来てくれたのね。嬉しかったわ。それだけでいいの」。シゲオ、清江を投げ捨て、ペンダントをマリコの掌から取り、地面に叩きつけます。「帰れよ!(マリコの両肩に手をかけ)お願いだ! 帰ってくれよ。(マリコ、無表情になる)頼むよ!(マリコの両肩を押して進みながら)あんた! 俺はあんたが好きだ。でも一生‥‥畜生!(マリコの胸に頭をつけます)う~、どうしようもないじゃないかよぉ。(マリコとともにしゃがみこみながら、面と向かい)帰ってくれよ。(マリコの肩を揺らしながら)頼む! 頼むよ!(頭下げる)」。マリコ、自分の肩からシゲオの手を放し「いいわ、帰るわ。(シゲオの肩に頭寄せ)さようなら」。マリコ、立ち去ります。うなだれるシゲオ。「馬鹿野郎!」と言って、とも綱を外し、投げ捨てるシゲオ。マリコは冷静に清江に「さようなら」と言うと、それを見送った清江は、すぐに悪戯っぽい表情を取り戻して「ふん」と鼻を鳴らし、背筋をピンとさせたまま、うなだれるシゲオを見ます。
 バス停。地面に座り込むマリコ。「おばさ~ん」とカツエの2人の子供が走って来ます。「これ、東京の旦那さんからの電報。お母ちゃんが渡して来いって」「そう、ありがと」「帰ろうよ、早く」「うん」。帰っていく子供たち。電報には「リコントドケ、オクッタ。ハン、オサレタシ」と書かれていました。「これでいいのよ」と一人ごちるマリコ。電報をバッグにしまい、「もうすぐ冬が来るわ」とマリコは言ってカバンの上に腕を置きます。彼女の姿をロングショットが捕え、映画は終わります。

 マキノの映画のように、演出と構図が完璧に行われている“ショット”の連鎖からなっている“映画”の傑作でした。ここでもたくましい女性に対して、弱い男性という図式が当てはまっていたようです。間違いなく、若尾さんの代表作の1本でしょう。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

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